第42話『事後処理』
───自称くんを倒した数十分後
「ん、うーん」
「目覚めた?はい!これ君の女!」
「国王様言い方が悪いです」
目が覚めたハデスにクロノスくんがメアリーさんを差し出し、ソロネさんが注意する。ちなみにソロネさんは戦いの時メアリーさんを膝枕しながら寝ていた。天使の力で雨や濡れた地面の影響は受けなかったみたいだ。
クロノスくんは闘技場にいたみんなを生き返らせたのだ。
ハデスはメアリーの姿を見て抱きつきイチャつき始めた。それを見た他のアンテノールも感動している。
「おい、貴様、私に言うことは無いのか?」
目の前にリリスの顔が現れる。パタパタと飛びながら頬を膨らませている姿が可愛らしい。
「ごめん!!本当に…本当に…!!」
僕は全力で頭を下げた。リリスはここまで謝られると思ってなかったらしく、
「お、おい、顔を上げろ…挨拶代わりの冗談だ…それにそこまで気にしてない」
「それでも本当にごめん」
「そうだな、じゃあ今日はお前の金でご馳走しろ…夜は隣で寝てもらう」
「それで許して貰えるならもちろん」
「えぇーいいなぁ!!僕も一緒に寝るー!!」
「わ、私も」
みんな揃ったようだ。
「そうだな、今日は大きなベッドがある宿舎を予約しろ、もちろん貴様の金でな」
「わかった、まかせて」
普段お金をほとんど使わないから良かった。
「ねぇねぇー国王が負けてるじゃーん」
クロノスくんが目覚めたビスト国王を煽っている。
「ん?クロノスちゃんか」
クロノスちゃん!?あの姉御肌って感じのビスト国王がそんなこと言うんだ。
「せっかくファルコンよりも強い身体強化できるのに、君は戦い方が単純だからね〜、ファルコンなら勝ってたよ〜?」
「それはそうだが、助けられてしまったな、すまない」
負けたからかビスト国王はしゅんとしている。
「貸し1つだよ〜?」
「今日はご馳走しよう。ぜひ王宮に来てくれ。」
「いいねぇ〜、それじゃ僕の友達も呼んでいい?」
「ああ、何人でもいいぞ」
「レイシくーん!!」
クロノスくんに呼ばれて僕らは近寄った。
「この人達だよ〜」
ビスト国王が僕を睨む。
「こいつは私の国民を大勢殺したやつじゃないか…」
「レイシは操られてただけだもん!!」
「そうです!!」
「弱いのが悪いだろうこの国のルール的に」
みんなが庇ってくれる。リリスの言葉にビスト国王は耳をピクっとさせた。
「それはそうだ弱いのが悪いな、すまない。クロノスの友ならば歓迎せねばな」
目を瞑り笑いながら言う。かっこいいなこの人。
「レイシくんと揉めたら僕も敵に回るからね〜?」
クロノスくんが釘を刺す。
「ははは、クロノスちゃんが敵に回るのは悲しくなるな、なぁレイシ、お前も武闘大会に出ないか?」
「レイシくんは僕の国の武闘大会で優勝したんだよ〜?ここの国じゃレイシくんは楽しめないよ〜」
「僕はその日やることがあるので」
「ん?まだいつ行うかも言ってないぞ?」
「武闘大会の日にあるので」
「よく分からんがそれは残念だ、ならこの後私と手合わせしてくれないか?やはり少しでもわだかまりがあると気になってしょうがないのが戦士なんだ」
「僕も同感です。思いっきり戦いましょう」
これは戦士以外もそうなのだろうな。僕もスッキリしたい。そして、ビスト国王は立ち上がり思いっきり息を吸い、
「武闘大会は!!3日後に延期する!!」
会場中に声が響き渡り、
「うおぉぉぉぉぉ!!」
戦士たちが応えるように大声を出す。
「私は準備運動をしておくよ」
そう言ってビスト国王は柔軟を始めた。
「ん?あれ?アタイは生きてるのかい?」
自称くんが目を覚ました。クロノスくんは優しいから自称くんも助けたのだ。自称くんは能力で変わった身体も戻り緑色のサラサラとした綺麗な長髪の巨乳の綺麗なお姉さんになっていた。
「おはよ〜自称くん」
クロノスくんが手を振って言う。
「アンタ、アタイのこと生かして良かったのかい?それにアタイの名前はアルコンだよ」
「アルコンね〜りょうかーい。僕は君が生きてようが死んでようがどうでもいいけど、せっかくなら生きてた方がいいよね〜。」
「へぇーそうかい。アタイをどうするつもりだい?負けたから大人しく従うわよ」
「別に罰を与えるつもりはないよ〜。僕からしたら君はただの正義感が強い女の子だからね〜。」
「そ、そう…女の子…ね」
アルコンは頬を赤くしている。別にクロノスくんは異性として見てるとかそういう意味で言ったわけじゃないと思うけど。
「罰ではないけど君にぴったりの仕事があるんだ。僕の国の孤児院で働いてみない?君子供好きそうだし、正しいことするのが好きだしいいと思うんだ〜」
「アンタは孤児院を見に来たりするのかい?」
「うーん、あんま行かなーい、意外と僕忙しいんだよね〜」
「じゃあ断るわ!!」
「そっか〜、残念」
クロノスくんが残念がっていると、
「それ俺らにやらせてくれないか?」
ハデスが言う。アンテノールとメアリー全員揃っている。
「ん〜?急だね」
「俺ら孤児院出身なんだ。知識はあるぜ。それに、俺らは討伐依頼が出るほど世間で警戒されてる。まともな職になんてつけねぇ。それなら命を救ってくれたあなたの下に着きてぇんだ。よろしく頼む。」
ハデス、そして他の5人も頭を下げる。
「私からもお願いします」
メアリーさんも声に出す。
「頭上げてよ〜。全然いいよ〜孤児院は常に人手不足だからね〜」
「ありがとう、感謝する」
そんな感じでアンテノール+メアリーさんは王都の孤児院で働くことになった。
「これが最善の世界だよ」
ユグドラシルが僕の傍に来て笑顔でそれだけ言って去っていった。
「本当にそう思うよ」
僕は誰にも聞こえない声で呟いた。
「アタイは王宮で働きたいんだけど!!」
綺麗なお姉さん、アルコンがクロノスくんの腕を掴んで揺らしながら言う。
「うーん、まぁ、王宮はそんなに人を雇ってないし、まぁ…」
クロノスくんは渋っている。まぁ気持ちは分かる。
「アタイじゃ、ダメかい?」
今度は地面にしゃがみこみ、上目遣いで目をうるうるさせてお願いしている。
「あー!!もう!!いいよ!!」
クロノスくんがやけになって了承した。珍しいな。
「やったー!!」
──ベシ
クロノスくんに抱きつこうとしたアルコンをソロネさんがはたいた。
「国王様に失礼です。やめてください。離れてください。泥棒猫が。」
え、最後私情入ってなかった?
「助かったよ〜ソロネ〜」
クロノスくんがソロネさんの腕に抱きついている。
「ふふん」
ソロネさんが自信満々の顔でアルコンを見下している。
「ムキー!!」
アルコンは前傾姿勢で両手を握り感情剥き出しにしている。これから王宮が騒がしくなりそうだな。
「これから私ビストとクロノス王国の武闘大会優勝者との試合を始める。闘技場にいる者は観客席に移動してくれ」
ビスト国王によるアナウンスがかかる。僕も腕を伸ばしたり準備運動を始める。
「レイシくん頑張って〜」
「頑張ってください」
クロノスくんとソロネさんはそう言って2階席に瞬間移動した。
「え、アタイは!?」
アルコンは驚いているけどアンタは執事じゃないんだから一緒にいると変でしょ。
「おい、行くぞ自称悪魔」
「え、やだーー」
ハデスくんに掴まれて連れてかれた。
「貴様、負けるなよ」
「レイシなら勝てるよ!!」
「応援してます」
みんなも応援してくれている。
「絶対勝つよ」
ビスト国王には全力を出してもらってから勝とう。
そして僕らは闘技場の真ん中に並ぶ。ビスト国王と目が合った。
「ビスト国王と戦えるのって珍しいんですか?」
「ビストでいいよ。そうだな、基本優勝者とぐらいしか戦わんな。まぁ武闘大会に出てたらレイシが優勝するらしいからな。いつもと変わらんよ。」
「あはは、全力で行きますよ」
「ああ、私も全力でいく」
審判が僕らの間に手を伸ばす。
「準備はいいですか?」
「ああ」
「はい」
「国王ビスト対クロノス最終兵器による模擬試合───」
え、クロノスくん変な名前で登録しないでよ。
──ダッ
僕は後ろに跳び距離をとる。
「開始!!」
───僕とビストの試合が始まった。




