第41話『堕落VS無限、最強VS偽神』
忘れがち設定振り返り
天使(神子)は魔力と反対の力、聖力も持っている。
出てきた主な天使
へカティア:クロノスと同じ勇者パーティーの1人。幼い時期から魔術を扱え、天才と言われていた。
アリス:レイシと同じ孤児院の女の子。不明なことが多い。彼女にとってレイシは王子様であり、レイシにとっても彼女はお姫様である。
ソロネ:クロノスの執事。勇者パーティーのアレスとへカティアの系譜。瞬間移動の能力を持つ。凄まじい聖力を持っている反面、魔力量は非常に少ない。
───雨の中闘技場に向かうレイシ
右の手のひらを見る。綺麗になってる。アリスがいつの間にか天使の浄化の力で綺麗にしてくれたんだろう。ん?なんだ。もう闘技場に着いたのか。僕は闘技場に入った。すると、満身創痍の国王ビストが万物を殺す能力を持つハデスに顔を触れられている瞬間だった。
「はい、終わり」
国王が力無く地面に倒れた。
───ドロッ
バッと五大堕落者が一気にこちらに向く。
「なんだ、戻ってきたのか。…顔つきが変わったな。お前も俺らの仲間になる気になったのか?」
ハデスが余裕を取り戻しこちらに言い放つ。
「いや、君たちを止めに来た。この国からは出させない。」
「はっ、多少元気を取り戻したところでお前に何ができる?」
続いてアザトースが、
「仲間を自らの手で殺しかけてついには無辜の民を大量虐殺した君が今更正義ぶるの?」
「考えが変わったんだ。…今までは自分の正義を振りかざそうと思ってた。でも、僕にはそんなたいそうなことはできないんだ。」
僕は彼らに笑顔を向けた。
「諦めたのか?じゃあなんでここにいるんだ?」
今度はラーフが僕に訊く。
「大切な人にもう一度会って気づかせてくれたんだ。僕は大切な人を救いたい。大切な人達を守りたい。そのために戦うんだ。」
「ほう。私たちに立ち向かうのか?」
シヴァが腕を組んで僕に問う。
「うん。君たちが生きてると困るんだ。」
そう言った途端ラーフが、
「いいぜ!お前のこと鬱陶しかったんだ!ぶっ殺して殺るよ!!」
楽しさと凄まじい殺意の籠った気配を感じた直後僕に雷撃が落ちる。
──ドゴーーーン
「どうだ?生きてっか?」
土煙が無くなりラーフは驚いた表情を見せた。僕が無傷だからだろう。僕は笑顔で優しい声色で彼に言葉を掛ける。
「君が1番弱いね」
「てめぇ!!」
「待て!ラーフ」
ハデスがラーフの前に腕を伸ばしなんとか止めた。
「なんだよリーダー」
「落ち着け、まずは削る。アザト。」
ハデスがアザトースに合図を出すと、
「僕もそれがいいと思ってた」
───グルルル!!
支配された国民が一斉に獣化し、四足歩行になり僕に向かってくる。僕は右手を地面につけ、
「ごめんね、少し動けなくする。」
───氷凍世界
パキンと支配された全員が全身凍り動けなくなる。アンテノールはシヴァが破壊の力を使って喰らわなかっただろうな。冷気が闘技場を満たし、視界が悪くなる。
「ちっ、ダメか。それに視界も悪い。」
ハデスが不満を漏らす。そして、僕は冷気の中から姿を現し、刀を振り上げる。僕はこの冷気を使って魔力探知を行い、全員の位置を把握していた。
「私を最初に狙ったか」
──ズバンッ
シヴァはこちらに両手を向けたがそれが裏目に出て両手が宙を舞う。
「てめぇ!!」
ラーフがこちらにいち早く近づき僕の懐に入った。だが─
──バキバキバキ
僕は宙に舞ったシヴァの右手首を握り、その手のひらをラーフの顔面につけ破壊した。ラーフの首から上が落ちる。
──ズバンッ
仰け反っていたシヴァの首も斬り飛ばした。
この一連の動作がわずか2秒のうちに行われる。
「な!?」
「は!?」
アザトースとハデスが驚きの声を上げる。だがその時既に僕はハデスの懐に入り体勢を低くし、刀を後ろに引き構えていた。
「く、そがぁ!!」
ハデスが僕の頭を両手で掴もうとするが、それも虚しく、
──ズバンッ
ハデスは上半身と下半身が泣き別れになっていた。ドタッとふたつになった体が地面に倒れる。
「ひっ」
アザトースが怯えた声を上げる。
───ガッ
僕は両腕でアザトースの首を絞め上げた。アザトースの足が地を離れる。
「く、がはっ、おい、ユグ!!お前もなんとかしろよ」
僕は横目でユグドラシルの方を見たが少し口角を上げてこちらを見ているだけだった。
──グググググ
さらに強い力でアザトースの首を絞める。
「カヒュ…たす…けて…」
「ダメだよ。君が僕を使ってリリスにしたことだよ。人にされて嫌なことはしちゃダメなんだよ。」
「ごめ…ん…なさい…」
アザトースのフードが脱げ、泣き顔がはっきりと見える。
「許さないよ」
僕はさらに強い力で首を絞めた。
───グギ
軽いような鈍いような音が混じった音がした後アザトースの体は脱力し、死んだ。
──びちゃびちゃびちゃびちゃ
アザトースの体から液体がこぼれ落ちてきた。僕はすぐに両手を離し、アザトースは水音を立てて地面に落ちた。
僕はユグドラシルの方を無表情で見た。ユグドラシルは笑顔でこちらを見ている。
「これが数多の平行世界を見てきて辿り着いた最善の世界だよ」
「これが最善なの?」
「うん。そうだよ。この後"あの人"が来て僕たちを生き返らせてくれるから。」
「あの人?」
僕がそう訊いたあと、ユグドラシルは自分の胸に手を当てて、
───ドンッ
ユグドラシルの胸に大きな穴が空き地面に倒れた。
なんだ。あの人って。ああ、そういうことか。
後方に気配がする。ハデスが倒れた方向だ。
「急に死んだと思ったらなんだいこれは?」
僕は振り返る。するとそこには左腕の無い長髪の女がいた。髪は無数のヘビで形作られ、背中には鷲の翼が生え、黒い布を羽織っていた。
「君がアルコン?」
僕はその女に訊く。するとムッとした顔をして、
「アタイが訊いてるんだから答えなさいよ」
はぁー。僕はため息を1つついて、
───バッ
女の側に近づき斬りかかる。
──スカッ
空振った。速い。女は後ろに歩いて避けた。歩くにしては速すぎるがそれくらい楽な動作で避けたのだ。瞬間移動は使っていなかった。素の速度であれだけの速さ。強い。
「ハァー、アンタ急に何よ。もういいわ。アンタがこいつらを殺ったんでしょ。石化しなさい。」
女の目が赤く光った。魔眼ではなさそうだ。女は不思議な顔をしてこちらを見る。
「効かないわね。…ただの魔力だけで防いだっていうの…!?そんなの許さないわよ」
──スッ
女が目の前に高速移動し、拳を握り、
──ドゴッ
僕の腹を殴った。だが僕は無傷だ。
「何よアンタ!!なんで効かないの!?それがアンタの能力!?」
すると女は再び下がり、右手をなにか乗せているようなポーズをとった。
「本気で行くわ。能力も使う。左手も使うわ。」
すると女の右手の上に左腕が出現した。その左腕はその女とは異なる人の腕のように見える。やっぱりこの女は悪魔を名乗るアルコンだな。あの腕はハデスの幼なじみのメアリーの腕に変化したものか。
「私の能力について知ってそうな顔ね。1度変えたものを戻すことも可能なの。こうして──」
───パシッ
するとその腕を他の小さな手が握り女から奪った。
「完璧なタイミングだね〜」
その腕を持っていたのは、
「クロノスくん!!」
嬉しい。こんなところでも会えるなんて。
「私もいますよ」
「ソロネさん!!」
「ふふ、相変わらずですね、他の子がいないのは気になりますが今は話す時間が無いので後にしましょう」
ソロネさんもクロノスくんの後ろにいた。
「よいしょ、っと」
クロノスくんの握った腕から体が生え、金髪の長髪の少女になった。これがメアリーか。
「よし、ちゃんと本人の腕になってるね〜。うんうん。いい感じ。ソロネ、この子をよろしく〜。」
クロノスくんがソロネさんに女の子を預けた。そして、クロノスくんは状況が理解出来ていない女の方を見る。
「なんでお前がここにいる!!クロノス!!」
「レイシくんは僕の友達だよ〜?友達を助けるのは当たり前のことじゃーん」
「クロノスくん…!!」
「えへへ、あとここでレイシくんを失うわけにもいかないし、自称悪魔を野放しにするわけにもいかないんだ」
「自称?」
口に出してしまった。
「うん。あの姿はそこの自称くんの能力『対価の改身』の能力なんだよね。それを契約のように使って悪魔気取りして自分の体も変えたの。でも思い込みが激しすぎて自身の体だけじゃなくて他人の体も作れるようになったんだよね〜。狂気だよ〜。まぁそれでその女の子を生き返らせれたんだけどね〜。」
うん、情報量が多いな。とりあえずこの女は人間で語呂のいい名前の能力を使って自分の姿を変えたと。それで悪魔ぶってたら本当に他人の体も作れるようになったと。イカれてるな。
「アタイは悪魔だよ!!そしてアタイはこの世の生命を贄として神になるのさ!アタイが悪に制裁を下すんだよ!!」
クロノスくんは両手のひらを上に向け、わけ分かんねというポーズをして僕の方を見てきた。僕はあははと苦笑いを返した。
「君が必要悪になりたいのは知ってるよ〜。前の国王会議でそこの五大堕落者の話題の時に君が操っているだろうと推測されてたからね〜。必要悪ってのがあったら僕の望む世界は作れないんだよね〜。」
「その減らず口を今から閉ざしてやるよ」
すると凍らされた国民が消え去り、自称くんの身体が胴体だけになり巨大化し、腕が4本となり、頭の上には真っ黒な輪っかが浮いている。
「これが今からアンタらを裁く神の姿だよ!!」
「えぇー、輪っかはいいけど、髪の毛ヘビだし、翼も神っぽくなーい、服も布切れじゃーん、あと短足すぎて足ないじゃん」
クロノスくんが普通に不満を言ってる。すると自称くんがムキーと言い、
「ぶっ殺してやるわ!!」
自称くんが4本の腕を振り上げ全てをクロノスくんに振り下ろす。
「クロノスくん!!」
僕は心配でクロノスくんに向かって叫ぶ。だけどクロノスくんは体の向きを変えず、左手をこちらに向け、近づくな、問題ないと示す。
───ドゴーン!!ドゴーン!!ドゴーン!!
凄まじい重みの腕の連打がクロノスくんを攻撃する。だが、クロノスくんはその場を動かず無傷でその場に居続ける。なんだか分からないけどすごい。さすがクロノスくんだ。
「なんで皆アタイの攻撃を喰らってピンピンしてんのよ!!」
「よく見てよ〜わざと動いてないのに〜。喰らってないよ〜?」
クロノスくんが残念そうな声を出す。本当だ。当たってない。クロノスくんに当たる直前で攻撃がピタッと止まっている。
「せっかく最強キャラが能力見せてるんだよ〜?ほれほれ〜」
「それがアンタの能力!?アンタの能力は時間を巻き戻すことと未来予知、時間を止めること…まさか、止めてるの!?」
「いいね〜ほぼ正解。実際は能力の常時発動を使って常に自分の周りの時間を巻き戻し続けてるんだよね〜こうすることで自分の時間を巻き戻すのと同時にできるから使うキャパが少なくて済むんだよね〜。」
とんでもない能力だな、ほんとに。でも─
「そんなことして魔力無くならないの?」
僕は訊く。そんなに強い能力を常時発動なんていくら魔力量の多いクロノスくんでも1日も持たないでしょ。
「レイシくーん、そのために止めるんじゃなくて巻き戻してるんだよ〜?巻き戻すことで魔力を使った瞬間体だけ使う前に戻るの〜ちなみに」
「ぐおぉぉ!!」
自称くんが何かを纏ってクロノスくんに攻撃する。すると、
──バチュッ
クロノスくんの左手が無くなった。いや無くなってない!!
「攻撃を受けても体は攻撃を受ける前に戻るんだよ〜」
「最強だ」
「そだよ〜」
「なんなのよ!!なにをしてもダメじゃない!!それなら─」
目の前からクロノスくんが消えた。
「転移で逃げるつもりだよね?させないよ〜」
クロノスくんは自称くんの肩に触れていた。瞬間移動?いや時間を止めて移動したのか。
「なんで能力が発動しないのよ!!」
焦る自称くんにクロノスくんが、
「発動はしてるよ〜。発動した瞬間発動前に戻してるんだよ〜」
「ずるいわよ!!」
「えーその言い方は酷いよ〜」
「クロノスくん!!そんなに近づいて大丈夫?」
するとクロノスくんはそのセリフを待っていたかのように口角を上げて、
「大丈夫〜、僕最強だから〜」
「やめてー!!クロノスくん!!アウト!!」
「あはは〜ごめんね〜これずっとやりたかったんだ〜」
「ふざけんじゃないわよ!!ぶっ殺してやるわ!!」
自称くんはまた何かを纏い、クロノスくんを睨みつける。だけどクロノスくんは笑みを浮かべ、
「ちなみにね、巻き戻しじゃなくて早送りも出来るんだよ〜?」
すると自称くんが叫びだした。
「ぎゃあああああ!!」
「あはは〜」
自称くんがどんどんシワシワになって枯れ萎んでいく。早送り怖いな。
「レイシくん!!止め刺して!!」
──はっ!急に頼まれてハッとした。いいとこ譲ってくれるんだ。
「任せて!!」
──バッ
僕は高く飛び自称くんの顔の前で赤いオーラを纏った刀を振り上げた。
「お前は悪魔なんかじゃない!!本物の悪魔はリリスだけだ!!」
「や、やめてー!!」
───終焉の裁き
──ドーーーーン
自称くんを赤い光の柱が包む。そして消滅した。赤い柱を中心に空に快晴が広がっていった。




