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第38話『煽動』

依頼書のシヴァの見た目の情報を書いてませんでした。ごめんなさい。

───ビスト王国


「ここがビスト王国だよ…早くシヴァに治してもらわないと」


 腹に穴が空いた男アザトースがそう言う。僕の体はこの男を担いで、というかおんぶして運んでいる。支配からは相変わらず逃れられない。

 このビスト王国は防壁も無く部族的な家が多いため国と言うより超巨大な村って感じだ。しかし、中心に向かうにつれ、コンクリの建物が増えている。そして中心にあるのは大きな王宮だ。かなり歪な国だ。そして、いるのはみんな獣人だ。人に動物の耳や尾が生えている。


 僕はしばらく移動し、国の中心あたりにある廃墟のような場所に入った。中は綺麗でソファなどの家具もあったり、台所、風呂なども存在したりと生活感が溢れていた。


「シ、シヴァ…治してくれ…死んじゃう…」


 アザトースは僕の背中から虫の息で金髪長髪の筋骨隆々の男に懇願する。


「帰ってきたのかアザト。む?その男凄まじい魔力だな。その男なら戦力になるな。よくやった。仲間集めはお前しかできないからな。お前にばかり負担をかけてしまってすまないな。」


「それは大丈夫だから、早く治してー」


 僕の体は操作されおぶっている男をおろす。


「なんだその傷は!?」


 シヴァは驚きアザトースに駆け寄る。


「すまないな。やはり1人は戦闘要員でついて行けば良かったな。」


 シヴァは左手をアザトースの腹にかざし、傷を癒しながら謝る。本気で心配している顔だ。こんなに仲間を大切に思う輩がなんで殺しなんかするんだ。


「さあね、まぁもう100人は殺したから後戻りはできないんだよ」


 考えが読まれてるんだった。アザトースはしゃがみ込んだまま、僕を見上げて言った。


「なんだ、完全に支配できてないのか?」


「そうなんだよね、まぁこれだけの戦力を持ちそうな人を体の支配だけでもできてるんだから十分でしょ」


「それもそうか…だが支配を逃れる術を持っている、もしくは持つ可能性があるからなにかあったら始末しなければならないぞ」


 正直全く思いつかないんだよね。支配される経験なんて初めてだし。


「それは大丈夫そうだよ、この人なんの策も考えてなさそう」


「そうか、それならしばらくは大丈夫そうだな」


 シヴァは用心深そうだ。


「おいおい、俺も混ぜてくれよー」


「食料買ってきたよ」


 後方から声が聞こえ、1人の紫髪で顔に大きな傷がある男がシヴァに肩を組んだ。


「ラーフ、ユグ、帰ってきたか。アザトが腹に穴を開けて帰ってきてな。今治療が終わったところだ。」


「大丈夫か?アザト」


「大丈夫?」


 ラーフと虹色の髪で細身のユグドラシルが心配する。


「ああ、大丈夫だよ。それより戦力を捕まえてきたよ。」


 全員立ち上がり僕の方を見る。するとラーフが僕に近づいて、


「おいおい、お前がアザトに怪我させたのか?俺らの仲間が死んじまったらどうすんだよ」


 ラーフが僕を上から睨みつける。

──は?僕は自分の仲間をそいつの能力で殺しかけたんだぞ。こっちのセリフだ。ふざけるなよ。

 僕は全員を睨みつける。


───ドロッ


 僕の発する魔力が強大になった。直後全員が驚愕する。


「うわ!なんだこいつの魔力!!」


「完全に支配しきれてないからあんまり刺激しないでね」


「そ、そうか。すまねぇ。だが、仲間を傷つけられたんだ。キレてもしょうがないだろ。」


「それはありがたいけどその情はいつか自らの足をすくうよ?」


「2人とも落ち着け。ユグは立ったまま寝てしまったぞ。」


「あ、本当だ」


「だな」


 そしてアザトースとラーフの2人は笑い合っていた。僕はただただその光景を眺めていた。


──ガチャ


「ただいま」  


 生気のない黒髪黒目の男が帰ってきたようだ。この男がハデスか。


「おかえり」


 ほかの4人が一度に迎え入れる。


「リーダー、戦力になりそうな人捕まえてきたよ。1人だけど、すごく強いと思う。」


「そうか。この顔、Aランク冒険者のレイシだな。冒険者試験でAランク最強のファルコンを倒し、クロノス王国の武闘大会で優勝した男だ。」


 詳しいなこの人。他のメンバーはさすがだという眼差しを向けている。


「よくやったよアザト。無駄に人数が多いより強者1人の方が動きやすいからな。」


「ありがとうリーダー」


 アザトースは嬉しそうな顔だ。僕はハデスに向かって


「君過去に何かあったの?」


 刹那、全員に驚愕と緊張と殺意が順番に走った。


「お前なんで話せんだ」  


 一番に口を開いたのはラーフだった。


「知らないの?人間は話せるんだよ?」


 僕はラーフを逆撫でする。


「お前…!!」


「やめてラーフ。刺激しないで。体の制御は僕にあるから。刺激すると動けるようになるかも。それが彼の狙いだと思う。」


 アザトースが饒舌に止める。考えが読まれるのは厄介だな。殺すならまず、君からだね。


「へぇ、僕を脅かそうとしたって無駄だよ。君が話せるようになったのは魔力を解放した時だろう?おそらく極度に感情が高まったために支配が緩くなったんだね。」


 じゃあ僕を支配した時に緩まなかった理由と辻褄が合わないよ。


「あの時は君が絶望していたからだろうね。さっきのは怒り…それか殺意かな?そういう類を君に抱かせたのが僕らのミスだね。」

 

 それじゃあ肉体を刺激すると動けるようになるって考えたのはなぜかな?


「それは君もわかっているんだろう?精神の支配は完全に逃れた。もう君から僕に考えを送って来ないと君の考えは分からない。そして次は肉体の番だって。」


「ふはは」


 僕はつい笑ってしまった。ほかの4人はこのやり取り、いや、アザトースが1人で喋るのを見て唖然としていた。だが、


「アザト。褒めた直後で悪いがこの男は想像以上に危険だ。俺が触れて殺す。」

 

 ハデスが両手に着けた黒い手袋のうちの右手のものを外しながら僕の方に歩いてくる。

 僕は笑顔で


「もし君の能力で僕を殺しきれずに支配の効果だけ殺しちゃったらどうするのかな?リーダーの責任だよ?」


「…確実に殺しきる」


 ハデスは僕の方に手を伸ばし始めた。


「へぇ、命以外も殺せるんだ」


「くっ」


 僕の方に伸びてきた手がぴたりと止まった。

 つまり能力の威力や物体の速度を殺したりと色んな使い道があるんだな。万物を殺す能力と言われるわけだ。ハデスが手を引っ込める。


「何が目的だ」


 ハデスが訊いてくる。だが、


「リーダーそいつに構う必要ねぇよ。俺がやる。」


 ラーフは距離をとった状態で僕の方に手をかざす。


「ふーん、君は天候の能力の一部を取り出して即座に射出できるんだね」


「そうだよ、見りゃわかるだろ」


「でもさ、それが出来ても僕の魔力の壁が見えてる?少しは頭使おうよ?」


「てめぇ!!」


「やめて!!ラーフ」


 アザトースが叫ぶがもう遅い。


───バチバチバチ


 僕の方にラーフの手から放出された雷撃が向かってくる。しかし、


───バチン


「リ、リーダー!?」


 ハデスが僕の前に出て右手で雷を打ち消した。


「なかなか面白い能力だね」


「ラーフお前にはいつも感情的になるなと言っているだろう。これで俺とお前の能力がぼぼ完全にバレたんだ。」 


 ハデスが注意する。僕にとっては最高のこの人たちにとっては最悪の空気が流れる。


「お前、楽には死なんぞ?」


 シヴァが僕に言うが、


「ビビって何も出来なかった君に言われてもねぇ、あはは」

 

 シヴァは沈黙した。怒りを抑えてるのか言い返せないか知らないけどまあいい。僕はこいつらを内側から壊すことにした。


「ユグドラシルくんは仲間が殺されてる時も寝てそうだね。本当は君たちのこと仲間とも思ってないんじゃない?」


 寝てるユグドラシルには届かないがこれでいい。他の全員が聞けば多少なりとも精神に効くだろう。


僕はこの人たちを許せない気持ちでいっぱいだ。なんだろう。なにかが嫌なんだ。でもそんなことはどうでもいい。



───僕は僕の正義を振りかざす。



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