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第36話『五大堕落者』

───村の門の前にて


 新たな村に着いた。ギルドがある。


「ギルドがあるね。久しぶりに討伐依頼でも受けてみる?」


「かまわん」


「うん!」


「わ、私も賛成です。私は初めてなので…」


「じゃあ行こっか!」


 僕らはギルドに向かった。掲示板の討伐依頼を見てみる。


──は?


「討伐ランクSSランク!?」


 思わず声に出してしまった。ギルド内が一瞬静かになり視線が一斉に集まる。


「す、すみません」


 恥ずかしい。顔が熱くなるのを感じる。しかもSSランクは5枚もある。


「そうか、貴様は知らんのか」


「リリスは知ってるの?」


「ああ。武闘大会最終日の王宮の食事前にな。貴様はクロノスに滅多打ちにされ、寝ていたがな。」


「あの時か」


「ねぇねぇ、ヒナは知ってるの??」


 アマテラスが特に驚いた反応をしていないヒナちゃんに訊く。


「は、はい。私の国でも知られています」


「この5人は皆同じ組織だ。」


 リリスが説明を始める。


───五大堕落者(アンテノール)

 五大元素竜、五大魔導兵器(グラディウス)に匹敵する5人の人間の組織だ。


「まぁ、今となっては五大元素竜こそ堕落し、グラディウスの方が戦力は高いだろうがな。そしてアンテノールは今のグラディウスと同等、もしくはそれ以上の戦力を持っている可能性がある。」


 あの包帯がいるグラディウス以上の戦力をたった5人で…


「そんなに強いんだ」


「ああ。依頼書にも載っている通り、顔と能力は割れている。わかっていてなお、捕まえることが出来ないんだ。ここの隣国に潜んでいるらしいからな。ちょうどいいタイミングだな。」


「魔境を挟んで南西に魔王軍、南東にアンテノールってどうなってるんだ。それにアンテノールの目的ってなんなんだ。」


「目的は世界征服らしいぞ。子供じみているが可能性は十分あるのが厄介なところだな。各メンバーについても説明してやろう…と言っても依頼書に記されている通りだがな。」


「うん、お願い」


───1人目はアザトース。支配の能力を持っている。確認された情報によると、見ただけで対象を支配可能。支配可能人数の上限は無い。


「こいつはかなり厄介だな。こいつ一人でも理論上では魔王軍を越える戦力の保持が可能だ。」


「恐ろしいね」


 見た目の情報は男性。というか五大堕落者全員男だ。水色のショートヘアでフードを被った比較的低身長で細身の男。


「なんかクールそうだね!」


「こ、怖いです」


「遭遇したら真っ先に目を潰すべきだな」


 リリスは物騒なことを言うが実際そうしないとまずい程の能力だ。


───2人目はユグドラシル。平行世界を司る能力を持っている。おそらく顔を変えることも可能。そして一切の攻撃が当たらないようだ。 


「顔が変えられるなら参考にならないな。そして情報が少なすぎる。」


「そうだね。これだけ情報が少ないと遭遇して逃げきれた人が少ないのかもしれないね。」


「急に怖いこと言わないでよ!!」


「た、戦いたくないですね」


───3人目はラーフ。天災を齎す能力を持っている。天候の変化や大洪水、地震の発生が可能。単独で一国を滅ぼせる能力だ。


「こいつは近づければ勝てるな」


「それが難しい能力だけどね」


 紫色の短髪で顔には大きな切り傷、体型は筋肉質。


「悪人面だ!」


「こ、怖い人ばっかりです」


───4人目はシヴァ。破壊と創造の能力を持っている。右手で触れたものを破壊、左手からはあらゆる物質の創造が可能。生き物を創造したという情報は無い。ただし、回復が可能。


「命自体は創れないが、それに準ずるものは創れる。それに加え、破壊の能力を持っている。厄介だな。」


「対処が難しいね」


「なんかレイシに似た能力だね!」


「アマテラスさん、みんなそれは言わないようにしてたんですよ」


 うん。よく分からないけどちょっと悲しくなった。


───5人目はリーダー格の男、ハデスだ。死に導く能力を持っている。手のひらで触れた万物を殺すことが可能。


「単純ゆえに強力だな。遭遇したらすぐに手を切り落とすぞ。」


「そ、そうだねー、あはは」


 いや、どっちが怖いのか分からなくなってきたな。

 黒髪黒目で整った顔立ちらしい。


「見た目がレイシに似てるね!」


「た、確かに目に光が差してないところとか少し似てます」


 ヒナちゃん!?さっきは気遣ってくれたのにそこは共感するんだ。


「さすがにこの人たちの討伐依頼は受けたくないね。隣の国にいるそうだし。Aランクあたりの討伐依頼うけよっか。」


「ふむ、貴様の中ではAランクは簡単な依頼に入ってそうだな」


「まぁ、前にたまたまSランク討伐依頼クリアしちゃったしね」


「ふふ、それもそうだな」


「あの時のレイシかっこよかったよ!」


「わ、私も見たかったです」


 僕らはAランク討伐依頼を受けた。いつものごとく受付の人に自己紹介したらギルド内が騒がしくなった。

 討伐対象は巨大熊の魔物。爪での攻撃に注意だそうだ。場所は付近の森、僕らは今その森にいる。


「いないなー」


 アマテラスが呟いた。いや、まだ5分も経ってないけどね。


「え、枝が服に沢山当たって服が破けそうです」


 ヒナちゃんはニットベストの生地のせいで余計大変そうだ。


「脱げばいいでは無いか」


 リリスがノンデリなことを言う。


「ぬ、脱いだら可愛くないです…それに汗でシャツが透けてるので…」


「ふむ、別に気にすることでは無いだろう、森の中だし」


「むー!」


「や、やめろ、ふふ、くすぐるな、ふ、ふふ」


 ヒナちゃんがリリスの羽をくすぐっている。


───グォォォォォォ


 獣の声!


──ダッ


 僕は咆哮の方へ走り出した。3人も僕に続いて走ってくる。


 いた!二足歩行の熊の姿が見えた。凶暴な見た目に動物とは異なる魔力の発し方、討伐対象だ!

 熊の前に剣をも構えた冒険者がいる。魔力量からしてCランク以外か?後ろに薬草の入った籠が見える。なるほど他の依頼中に遭遇したのか。あの人が戦うには危険すぎる。助けないと!


──魔力砲!


ズオォォォ


──グォォ!!


 片手で魔力砲を止めた。この魔物想定以上に強い。熊がこちらに注意を向けた。


「背中を見せずに逃げて!!」


 僕は冒険者に向かって叫ぶ。冒険者はゆっくり後ずさりしながら薬草の入った籠を背負い逃げた。


──ガアァァァ!!


 熊が四足歩行になり、走ってこちらに向かってくる。僕は腰に作った刀を握り、


───魔力斬


─ザッザッザッ


 ほとんど無傷だ。…あの毛だ!魔力を分散させている。


「拘束魔法」


ギイィン


「な、拘束魔法を弾いたのか」


 リリスも驚いている。熊が僕らに近づき右手を振り上げた。



「みんな下がって!」


─ダッ


──ドオォォォン


 熊の右手が地面を叩きつけた。地面がえぐれる。とてつもない攻撃力だ。 


──今だ!


─ザン


 振り下げた右腕を斬り落とした。魔力以外は弾かないのか。


ガアァァァァァ!!

 

 熊が周りの木に止まっていた鳥が飛び立つほどの巨大な咆哮をあげる。そして次の瞬間右腕が生えていた。面白い。僕は熊の目の前まで近づき、睨み合う。さすがに大きいな。二足歩行の状態だと4メートルくらいあるな。


「レイシさん!?」


 ヒナちゃんが驚いている。熊がもう一度右腕を振り上げる。僕は右腕を引き、連撃付与…!


──ダダダダダダ


 熊の腹を連打した。だが熊は怯まない。右腕を振り下ろす。


「拘束魔法」


ガチャン


 熊の四肢が拘束され、動けなくなる。


グアァァ!!


「さっきは油断していただけだ、出力を少し上げれば余裕だ」


 リリスは底知れない。アマテラスのバフが僕にかかったのを感じる。


「見ててね、ヒナちゃん」


 そう言って僕は空中へ跳び上がる。熊よりも高く高く跳ぶ。そして刀を振り上げ、込められるだけ魔力を込め、急降下と共に振り下ろす。


───最大出力 魔力斬


──ドォォォォォォン!!


 太い魔力の柱ができ、森中に轟音が響き渡る。


「か、かっこいい」


 ヒナちゃんが尊敬の眼差しで見ている。


──サァァ


 刀が手の中で塵となる。刀の耐久を犠牲に出力を上げて斬る。熊は真っ二つにした。死体は魔物だから残らないが毛皮がドロップした。この毛で装備を作れば強力なものが作れそうだ。


「へへ、すごいでしょ」


「僕のバフもあったからね!」


「私が動きを止めていたのもな」


「みんなかっこいいです!」


 ギルドに戻りドロップ品を証拠にして報酬を貰った。ドロップした毛は鍛冶屋にでも持っていこうかな。


 その後鍛冶屋に毛を持っていき、みんなの装備を作って貰うことにした。すごいことに明日にはできるそうだ。そして夜ご飯を食べて宿に行き、一日を終えた。


───装備が楽しみだ。





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