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第32話『常時発動』

──村の付近のダンジョン内にて


 昨日リオさんに宿まで3人を運ぶのを手伝ってもらった。感謝だ。今日は、リオさんと僕らのパーティーでAランクダンジョンに来た。この周辺はダンジョンがそこそこあるらしい。

 今僕らはみんなAランクだからそこそこ楽に攻略出来ると思う。リオさんは弓使いで後衛だからまさかの僕以外4人後衛だ。とんでもない偏りだ。

 お、このダンジョン初敵だ。これは赤い…鬼か。珍しいな。今までのダンジョンにいなかった。これがAランクダンジョン。相手は1人か。


──ズン、ズン


 金棒を肩に乗せてゆっくりこちらに向かってくる。体長3mくらい。1階層にしては強そうだな。


「これならバフをかけてもらえれば僕一人でもいける。アマテラス、バフを!」


 …ん?いつもならすぐにバフをかけてくれるんだけど、アマテラス?僕は後ろを振り向いた。すると、


「暗いよー!!怖いよー!!」 


 ミミックに食べられてる。そんなとこにミミックいたんだ。初敵ミミックだったんだ。ダンジョン入って、そうそうになにしてるんだ。


「アマテラスは頼んだ!!」


 鬼がすぐ近くまで迫ってきている。アマテラスは他の3人に任せよう。


──グォォォォォ!!

 

 赤鬼があのを振り下ろしてくる。さすがにモロに食らうのは危険だな。僕は横に跳んで避け、


──ズバン


 刀で金棒を持っている腕を斬り落とした。


「ギャアアア!!」


 まじか。鬼の叫びとともに衝撃波が起き、後ろに飛ばされる。僕は上手く着地し、様子を見る。他には特に無さそうだ。けど、今の声でダンジョン内の他の魔物もこちらにガサガサと向かってくる音が聞こえてくる。アマテラスは何とかミミックから出られたようだ。ここの階層は直線だ。あまりこういうことは成長に繋がらないからやりたくないけど、


「魔力砲」


──ドォォォォォォォォ


 一掃した。他にこのダンジョンに入ってる人はいないからできたけど、いたら少々めんどくさかったな。


「レイシすごいな」


 リオさんが驚いている。


「魔力をぶつけただけですよ」


「それがすごいんだよ、アタシにはできない」


「私もこんな魔力の浪費できないな。貴様はすごいぞ」


 リリスのは嫌味というか冗談だな。


「どうも」


 その後順調にダンジョン攻略をしていった。

 その間、リオは思っていた。レイシ、アタシたちは手助け程度でほとんど何もしてない。アンタは単独でダンジョン攻略できるんじゃないか?いや、余裕でできるはずだ。本当にすごいな、と。

 

 かなりのハイペースで10階層に着いた。


「10階層だね。もうフロアボスか。」


「いや、ダンジョンボスだよ。高難易度のダンジョンの特徴で極端に階層が少ないことがあるんだ。ただ、その分他の階層が多い同ランクのダンジョンのボスより強いよ。」


 リオさんが教えてくれる。ほかのみんなも初めて知ったみたいだ…と思ったらヒナちゃんは頷いている。さすがだ。


「そうなんですね。ありがとうございます。気を引き締めて行こう。あと、最初は試したいことがあるから何もしないでもらえるとありがたい。」


「了解だ」


「了解!!」


「りょ、了解です」


「わかった」


──ギィィィィィ


 ボス部屋の扉が開く。真っ暗な部屋に部屋の両サイドにある大量のろうそくが手前から奥に向かってボ、ボ、ボ、ボと点く。これがAランクダンジョンのボス。そしてボスが姿を現す。


「コウモリだ!!」


 コウモリと言ってもとんでもなく巨大だ。五大元素竜並の大きさだな。そこらの建物より大きい。しかも、異様なのが逆さではなくフロアの地面に足をつけ居座っていたことだ。



──キィィィィィィ


 ぐっ、あまりの音に僕は両手で耳を塞ぐ。叫ぶ挙動を見せたと思ったら、超音波か!!しかも衝撃波も込められている。だが、後衛のみんなはリリスの防御魔法で守られている。よし、超音波が終わった。僕は棒立ちになり、コウモリに向かって─


「来いよ」   


 にやけ面で言う。そうするとコウモリは怒りだし、


──バサーー


 翼を広げ、天井付近の高さまで上り、


ヒューーー


 急降下してきた。突進か。僕は目を瞑りイメージする。能力の常時発動にこのイメージを乗せろ。この時がずっと楽しみだった。やっと使える。おそらく今の僕の表情は目を瞑ったままにやけてるんだろうな。


「レイシ!!」


「レイシさん!!」


「レイシ!!」


 リリス以外の心配の声が聞こえる。けど、



──ドーーーン


 僕に巨大なコウモリがぶつかった。だが──


「ふふ」


「無傷…?」


 リリスの笑い声とリオさんのこぼれた驚きの声が聞こえる。ぶつかったコウモリの方がダメージを受けている。


──キィィィィィィ!!


 また超音波を発するがもう僕には効かない。


 恐怖で両手で目を抑えていたアマテラスとヒナがレイシを見る。


「え!!すご!!」


「ど、どうやったんですか?」


──バサバサ


 コウモリは警戒しまた高い位置に上る。


「魔王軍の幹部の言葉を何度も考えたんだ。そして1つの結論にたどり着いた。あの包帯は変化の能力を常時発動していた。なのに変化していなかったんだよね。それは『変化しない』というイメージをしながら能力を発動してたんじゃないかって」


「それでは変化の能力ではないじゃないか」


 リオさんから真っ当な指摘を受ける。


「生物は常に変化し続ける。変化しないっていうのもまた変化なんじゃないですか?能力は解釈次第ですからね。僕にも魔族の考えは分かりません。けど僕の能力ならもっと簡単にできると思ったんです。僕は『攻撃を受けない』イメージをして能力を発動した。僕はイメージしたことが出来る能力ですから。」


 これを常時発動すれば僕はもっと強くなれる。


「分からない。でもレイシ、アンタがすごいことはわかったよ」


「ふふ、いいぞ、もっと強くなれ」


「レイシはすごいんだから!!」


「わ、私も頑張ります!」


「あと、もうひとつ能力を発動したんだ。あのコウモリを見てて。」


 そう言ってコウモリの方を見る。



──ドスン


 その巨躯は地に堕ちた。


「毒の付与もしてみたんだ」


「アンタってやつは…」


 リオさんが感動したような1発食らったような表情で言ってくる。そして僕は右拳をあげ、


「行くぞー!!ボコボコにしろー!!」


 コウモリの方へみんなとともに走っていった。




──昨日とは違う料理店にて


「いやー、ほとんどアンタの力なのに報酬山分けって、良いヤツだねー」


 料理を食べながらリオさんが言う。


「いえ、みんなも頑張ってくれたし、僕がいろいろ試したかったからみんなが遠慮してくれたんです。」


「アンタは…いやアンタたちは最高のパーティーだよ。」


「はい!最高のパーティーです!!」


 僕は笑顔で堂々と答える。ここでリオさんをパーティーに誘うのは無粋だな。そもそも目的が違うだろうし、『そもそもアタシは後衛だから』と断られるだろう。


「また一緒にダンジョン攻略しましょう」


「ああ、そうだね。楽しみにしてるよ。」


「ふふ、貴様のコウモリ戦の姿面白かったぞ。あれだけの巨体が貴様に当たって貴様はビクとも動かないんだからな。シュールだったぞ。」


「はは、僕もちょっと思ってた。まあ成功して良かったよ。初めて試したんだ。」


「初めてをダンジョンボスで試すとは…いや、逆に精神的に追い詰められた方が確率で言えば高かったのか。まったく、貴様は見てて飽きないな。」


「ありがとう。でもリリスには少し申し訳ないかな…今日全然戦えなかったでしょ?」


「かまわん。酒が飲めるからな。」


「レイシ!ミミックって本当にいるんだね!!」


「あの時はびっくりしたよ。でも今度から『暗いよー!!怖いよー!!』以外のセリフだと助かるなー。」


「うーん、考えとく!!」


「捕まらないようにしてくれたら1番いいんだけどね」


「それは無理!!」


 アマテラスはいつ見ても元気でこっちまで元気にしてくれる。


「ヒナちゃん今日はありがとね。鬼に囲まれた時にたくさん倒してくれて助かったよ。」


「ぜ、全然大丈夫です。それくらいしかできないので…」


「ううん。ヒナちゃんが助けてくれなかったらコウモリぐらいボコボコにされてたよ。」


「あはは、コウモリさんちょっとかわいそうなくらいでしたね」


「でも楽しかったからOKだよ」


「そうですね」


 その後ちびっ子3人は酔いつぶれたからまたリオさんに手伝ってもらった。



──宿の外にて


「いやー、ここまでしてもらってありがとうございます」


「全然いいんだよ。本当に可愛い子たちだ。」


「そうなんです」


 しばらく向き合ったまま沈黙が流れた。


「アタシ、金が必要なんだ」


「なにかあるんですか?」


「ああ。年の離れた弟が病気でね。ずっと寝たきりで。治すのに莫大なお金が必要なんだ。」


「それなら僕がクロノスくんに──」


「1度頼んだことがあるんだ、あの子には。けど先天性の病気は治せないらしい。能力や後天性なら治せるらしいけど。」


 クロノスくんでもできないことはあるんだな。生まれた時からならどう戻したって不可能なのか。


「クロノスくんに頼るほどってことは他の能力者でもダメだったんですね」


「そうだ…ただ今日アンタの能力を見て、もしかしたらって思ったんだ…アンタが魔境を目指していることは知ってる。アタシの村はその途中にあるんだ…寄ってくれないか?」


「たとえ逆方向だとしても、可能性があるなら助けに行きます。リオさんは友達ですから。」


「本っ当にアンタってヤツは…。ありがとう。」


「明日にでも向かいましょう」


「ああ。ありがとう。」


「それじゃあまた明日会いましょう」


「ああ、また明日」


 そう言って手を振って別れた。僕だってアリスとリリス両方が助かる可能性があるならなんだってする。


───必ずリオさんの弟を助けよう。


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