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第30話『ひとり』

──レイシたちが村のギルドに着いた頃、付近のダンジョン内のある階層にて冒険者パーティーがいた。


 3人の男性と1人の女性が向き合っていた。


「おいおい、お前らが口喧嘩してるからオークに囲まれちまったじゃねぇか」


 背の高い冒険者の男が言う。


「はぁ!?お前だって反対してたじゃねぇか!!」


 そのリーダーらしきイカつい顔の男が怒鳴る。


「そりゃダンジョン攻略で得た報酬の半分を寄越せって言うんだからな、怒るのも仕方ない」


 寡黙な雰囲気を漂わせる男が言う。


「アンタたちこそDランクのくせにBランクのダンジョンに入りたがってたからAランクのアタシが一時的にパーティーに入って同行してあげてたんじゃない。戦闘もアンタたち3人より私ひとりの方が貢献してたわよ。」


 弓を持った青髪のショートヘアの女性が強気に言う。


「そりゃ普通報酬は山分けだろ!なんで半分もお前なんかに渡さなきゃいけねぇんだよ!それならDランクダンジョンと変わんねぇじゃねぇか。」


 リーダーはオークに囲まれてもなお口喧嘩を続ける。


「報酬面ではそうかもしれないわね。でも、Dランクダンジョンでは自分たちの格上に挑む経験はできないわ。自分より格上の相手に挑戦することでより早く人は成長する。確かにアンタたちはこのダンジョン内で成長していた。アタシはアンタたちに貴重な戦闘経験を与えているのよ。…最後にもう一度言うわ。アタシに報酬の半分を渡すと約束しなさい。」


「おいリーダー嘘でもいいから言っとけ」


 背の高い男が小声で促すが─


「断る!!お前みたいな金にがめつい女は嫌いなんだよ!!」


「そう。ならここでお別れね。さようなら。」


 そう言うと女は弓矢を構え─


───ドヒューーーン


 ダッダッダ


 魔力が込められた矢が囲まれたオークたちの一点に穴を開け、女は走っていった。

 すぐにその穴はオークで塞がる。


「くっそ!!あのアマァ!!」

 

「おい、たたか───なっ!?体が痺れて動かん。あの女の毒か…」


「だから俺は最初からDランクダンジョンでいいと言ったんだ。金にがめついのは俺らだったな。」




───村の冒険者ギルドにて


 僕らはギルドに入ってみた。いきなりヒナちゃんに冒険者試験を受けさせるなんてことはしない。どのくらいの頻度で行っているかを知るためだ。


「こんにちは!ようこそ!モリノ村ギルドへ!!」


 明るいボブヘアの女性が迎えてくれた。


「こんにちは。冒険者のレイシです。ここのギル──」


「えぇー!!レイシさんなんですか!!王都のギルドからのお知らせで知ってます!!最年少でAランク冒険者になったあのレイシさんですよね!!その上Bランク、Aランクの最強冒険者を倒した上で合格したんでよね!!」


 受付に両手をつき身を乗り出して話しかけてくる。にぎやかな人だ。こういう子を見るとアリスのことを思い出す。


「お、おい今レイシって聞こえなかったか?」


「ああ、確かに聞こえた」


 ギルド内がざわつきだした。このパターンは─


「うおぉぉぉぉ!!」


 騒がしくなった。うん。もういつもの事まである。ギルドに入るとだいたい騒がしくなるんだ。


「あ、あの、大会見てました!握手してください!!」


 冒険者の女の子に握手を求められた。そしてどんどん僕らに人が寄ってきた。


「お、俺も握手してくれ!!」


「レイシさんがいるってことは…リリスさんとアマテラスさんもいるぞ!!」


「リリスさん、おれぇ、大会見てたっすよ!!Sランク冒険者を倒す人初めて見たっす!!ぜひ握手を!!」


「断る」


 あはは、リリスらしい返事だ。


「アマテラスさんはどうして大会に出なかったんですか!!俺あなたが戦う所見たかったです!!」


「えへへ、僕は戦い好きじゃないんだよね…」


「でも応援してる姿可愛かったです!!」


「あ、ありがとう」


 アマテラスが困ってる。


「レイシさん!あの子は誰なんですか!新しい仲間ですか!!」


「そうだよ。めちゃくちゃ強いんだよ。」


「なにランクですか??」


「それについてをこれから聞こうと思ってね」


 そしてしばらく冒険者たちの対応をした。


「ごめんなさい!私が大声出したせいで」


 受付のお姉さんに謝られた。


「まったくだ」


「まあまあリリス。こういうのも慣れたもんじゃん?」


「僕も疲れちゃった」


「わ、私はみなさんほどではありませんが…いろいろ聞かれました…でも…そんなに悪い気分じゃないです」


「あの、聞きたいんですけど、このギルドで冒険者試験って受けられますか?」


「はい!Bランク試験でしたら毎日行っております!!Aランク試験ですが、うちのギルドはAランク冒険者を雇ってないので一年に一回しか行ってないんです」


「分かりました。ありがとうございます。」


 ヒナちゃんにはBランク試験を受けてもらおう。Aランク試験はどうしようか。ヒナちゃんは強い。けど体術で戦えるわけではない。かと言ってヒナちゃんだけBランクだと自分一人だけBランクだって気にしちゃうかも。僕は顎に手を当て考えていると─


「Aランク試験だったらアタシが相手するよ」


 誰だ。僕は声のした方を見ると、青髪ショートで胸の谷間も腹が見える服装の女性冒険者が立っていた。背中には矢の入った筒と弓を携えている。


「君は─」


「あなたはAランク冒険者のリオさん!!あなたが試験をしてくださるのならありがたいです!!」


 受付がまた身を乗り出している。僕と同じAランク冒険者か。確かにありがたい話だけど死なないかな。ヒナちゃんの能力強すぎるからなぁ。


「ぜ、ぜひお願いします」


 ヒナちゃんがぺこりとお辞儀した。それなら─


「僕からもお願いします」


「いいって。アタシがあんたたちと関わりたいから話しかけただけだからさ」


 かっこいい女性だ。姉御肌って感じだ。

 その後僕らは雑談をしてリオさんと別れたあと食事をして今は宿屋で過ごしている。


「ヒナちゃん、冒険者の勉強しよっか」


「は、はい」


 僕は机の椅子にヒナちゃんに座ってもらって冒険者試験の筆記試験に向けて勉強を始めた。村の本屋で買った「冒険者の基礎知識」を広げて教えようとしたけど、


「ここには乗ってないけどオークって実は─」


「人数が多い方を狙うんですよね!」


「すごい。よく知ってるね。」


「じ、実はお家でたくさん本を読んでた時期があって」


「さすがヒナちゃん、偉いね」


──なでなで


 僕はヒナちゃんの小さな頭を撫でる。


「えへへ」


 守りたい笑顔だ。


「おい、イチャつくな」


「僕も撫でて!!」


 ベッドに座ったリリスに怒られ、アマテラスはぴょんっとベッドを降りて僕の傍に近づいてきたので撫でた。


「わ、私、明日試験受けていいですか?」


 確かにこの調子ならいけるな。リオさんを何日も待たせるわけにもいかないから明日試験を受けて貰おう。


「いいよ。ヒナちゃんがしたいようにしよう。あ、けど試験官を死なせないように気をつけてね。」


「あ、当たり前ですよ!」


───次の日、ギルド


 ヒナちゃんは筆記試験に余裕で合格した。続いてBランク試験、相手はもちろんBランク冒険者だ。王都と違い小さな闘技場で一応周りに観客席がある。その小さな観客席は全て埋まっている。みんなが見たいらしい。このパーティーの、ヒナちゃんの戦いを。だが──


「開始!!」


ドゴーーーン


 開始した途端試験官は壁にぶつかっていた。誰も認識出来ない。体術の必要すら感じさせない。五大魔導兵器グラディウス すらも一撃で屠れる可能性もある。そんな能力だ。


「勝者ヒナ・アイオーン!!Bランク試験合格!!」


「・・・」


 会場に沈黙が続く。ヒナちゃんは嬉しそうな顔でこっちを向いてくる。


「ふむ。相手が可哀想に思えるほどだな。」


「すごいよ!!ヒナ!!」


「おめでとう!!ヒナちゃん!!」

 

「えへへ、ありがとうございます」


 会場のほとんどが理解できてない中、僕らは祝う。そしてもうひとつの声が聞こえる。


「次はアタシが相手するよ」



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