第29話『四次元能力』
──カースト国から出たあとの山道にて
カースト国を出る際、僕はスラム街にいくつか綺麗な水を汲める井戸を作った。これで少しは楽になってくれるといいけど。
次の国か村に行くには山を越えないといけないらしい。今度は山の周囲を歩くような山道のうえ、あまり木々が生えておらず岩山のようで直射日光が直に当たって暑い。僕は能力で常に氷の粉末を周囲に出してみんなが少しでも涼しくなるよう努めている。
僕らのパーティーは僕以外小さい女の子だから熱中症には特に気をつけないと…。いつもより休みを多く取ろう。と言ってもそんなに道は広くなく絶壁のすぐ隣を歩いているので厳しいな。
だけどしばらく歩いていると優しそうな男の商人の馬車が来たので荷台に乗せてもらった。どうにも、もう取引し終わった後で荷物がないので善意で乗せてもらった。
ちょうど時間があるので話したいこと聞きたいことを喋ろうと思う。
「リリス、あの包帯は『未来予知の魔眼』を持ってたんだけど、他にどんな魔眼があるか知ってる?」
「ふむ。なら1個ずつ説明してやろう。2人も聞いておけ。」
「はーい!」
「わ、わかりました」
───「魔眼」
一部の魔族が持つ外付けの魔法器官…いや、今では能力と言われているのか?いくつか種類が存在する。魔力を通じて発動すると瞳に魔法陣が出現しそれぞれの魔眼に応じた魔法が発動する。
───「未来予知の魔眼」
数秒先の未来が見える。自分はその未来を変えることができる。例えば相手の攻撃を受ける未来が見えたら事前に回避し、攻撃を受ける未来を変えることができる。逆に避けられる未来を攻撃を当てる未来に変えることもできる。ただし、それは魔眼所持者の行動及び実力に依存し、行動しない、もしくは実力が無ければ意味の成さないものとなる。
「つまりプレイヤースキル必須なのか」
「貴様は変なことを言うな」
「前にムジが自分の能力について話してくれた時に『俺の能力はPS必須なんだ』ってカッコつけて言ってた」
───「必中の魔眼」
魔眼発動中あらゆる攻撃が対象に当たる。絶対に外したくないムステリオンなどが使えるとこの魔眼は便利だな。これも魔眼保持者依存で相手に有効な攻撃手段を持ってないと意味が無い。
「つまり火力がないとダメなんだね」
「まあ、そういうことだ」
───「反射の魔眼」
魔眼発動中あらゆる攻撃を相手にそのまま返す。この際発動していれば自分は無傷だ。ただし視界内の攻撃のみだ。視界内に人物が入っていたら攻撃主に限らず反射の対象にできる。かなり強い魔眼だ。
「人権魔眼だね」
「貴様はさっきから何を言っている」
───「鑑定の魔眼」
魔眼発動中に見た対象の情報が分かる。物だと材料や作られた時期、価値なども分かる。生き物の場合は種族、能力、身長、体重や会話の中の真実と嘘までも見抜ける汎用性の高い魔眼だ。
「これも人権魔眼だ」
「ああそうだな」
───「模倣の魔眼」
魔眼発動中に見た攻撃や技を模倣することができる。それだけだが強力な魔眼だ。
「頑張らなくてもできるのずるい!!」
「良かった、アマテラス起きてた」
「レ、レイシさんはこの魔眼が無くてもコピーできますもんね!」
「才能に負けないように頑張るね」
「いいことだ」
───「透過の魔眼」
魔眼発動中、物質を透視することができる。また自身を透過させて攻撃を回避することもできる。正直、前者は鑑定の魔眼の下位互換だが後者が強力だ。
「あー、追加効果の方が強いやつね」
「ふふ、理解が早くて助かるぞ」
「えっちだね!!」
「ほ、他にも応用できそうですね」
───「眺望の魔眼」
魔眼発動中遠くまで見ることができる。また視界外の遥か遠くの場所も見ることができ、戦場などでは戦場を上から眺めるように見ることも出来る。
「千里眼だね」
「そうだな。瞬間移動の能力を持つ魔族が持つと本当に厄介だぞ。さすがにいないと思うが。」
───「破滅の魔眼」
魔眼発動中、視認した対象を消滅させることが可能。ただし、効果範囲は自身の瞳から半径約1mもないほどだ。持っていても大して役に立たん魔眼だ。
「え、名前かっこいいのにハズレ枠なの?でもこれこそ瞬間移動の能力者が持ったら怖いね。そんな奇跡さすがにないと思うけど」
「ものは使いようだよ!!」
「り、りんごの皮剥くのに便利かもです」
「ふふ、それはいいアイデアだ。以上が魔眼の説明だな。2000年前の情報だが基本変わっていないと思う。何せ瞳に現れるのは歴史から消された魔法陣だからな。」
「その魔法が歴史から消されたってなんのことなの?」
「ああ、それか──」
───グォォォォォォォ!!
「ヒイィィィ」
動物の雄叫びと商人の悲鳴が聞こえた。見ると前方に二息歩行の凶暴そうな毛が紫色のクマがいた。魔物だな。周りを見ると緑色の木々が生え、下り坂の途中にいる。いつの間にか下山の途中まで来てたのか。道も馬車に乗る前の山道より拾い。僕は馬車を降りようと振り返ったとき、
「わ、私がやります」
ヒナちゃんが両手を腕の前で握り立っていた。ここはヒナちゃんに任せてみよう。いや任せてみたい。
「気をつけてね」
「だ、大丈夫です」
──その直後、
ドンッ!
後方で強烈な打撃音が聞こえ振り返る。見ると、クマは土手っ腹に巨大な穴が開き後ろに倒れるとこだった。
「へ、へぇ?」
商人は状況を整理できてないようだ。そりゃそうだ。僕もリリスもアマテラスもできていない。
「こ、これでいいですか?」
ヒナちゃんだけがこの状況を理解し声を出す。
「あ、あありがとうございますっ」
商人がこちらを向き頭を下げているがその表情からはまだ混乱していることが伝わる。
「なんなんだ今のは」
「アマテラスなにも見えなかった…」
「やっぱり2回目でもわかんないや」
「わ、私の能力…説明しましょうか?」
僕たちはその言葉を待っていたかのように、
「ぜひ!お願い!!」
「頼む」
「うん!!」
するとヒナちゃんは一度深呼吸をして、
「私の能力は発動すると時間が止まったようになるんです。でもその中を動けるんじゃなくて私とその周りを色んな角度から見れるようになるんです。」
三人称視点って感じかな?
「そ、それで倒したい敵をパンチすると簡単に穴が空くんです。自分が絵本の中の人物だとして目の前に敵が現れるとします。絵本の中で能力を使うと読み手になって絵本の敵がいる所に穴を空けて、能力を解いて絵本の中に戻ると敵に穴が開いてるって感じです。」
「ふむ。言葉通り次元を超越した能力だな。」
「すごーい!!」
「防御無視どころか豆腐になるのやばいね」
「だから貴様は何を言っている。今日の貴様変だぞ。」
「すみません」
「わ、私にもまだあんまりよく分かってないんです」
たしかに包帯が恐れるだけの能力だ。でもなんであいつヒナちゃんの能力知ってたんだ?
「ねぇヒナちゃん、その能力初めて使ったのいつ?」
「え、えーっと…幼い頃にお姉ちゃんと国の城壁の外の森に遊びに行った時です。それでその時、私たちの前に魔族が現れてお姉ちゃんが襲われそうになったんですけど、それが嫌で『やめて』って叫んだら時間が止まったみたいに見えて能力が発動してたんです。それで魔族を倒して私たちはすぐに帰りました。いや、倒せてなかったかも……今思い出してみたらその人、あの包帯の人だったかも!!」
はっとした表情のヒナちゃん。包帯はそれで過去に1度任務失敗したんだろうな。それで今回もう一度来たんだろう。
「あははは!包帯、過去にヒナちゃんにやられてたんだ。たぶんそれで1回任務失敗してるんだ!おもしろ。」
「ふふ、それはシュールで面白いな」
「あはは!!あの僕の村襲ってくるような人が小さな女の子一人に任務失敗して帰るのは面白いね!」
「わ、私たちは怖かったんですからね!!」
「ごめんごめん」
でも面白いな。その後どんな表情で帰ったんだろう。
「あのー、盛り上がってる所申し訳ありませんが、次の村着いたんですけどー」
商人さんが言ってくれる。今いる道は特に何も無いが村の奥には森が見える。自然豊かな村なんだろう。きっと。
僕らはお礼を言って馬車を降りた。お金も払おうとしたが、クマから守ってもらったから大丈夫と言われた。優しい人だ。
「あ、ギルドがある」
「久しぶりに依頼を受けるのか?」
「たのしみー!!」
「わ、私は何も分かりませんが…楽しみです」
「それもあるけどまずは、ヒナちゃんの冒険者試験からかな」




