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おもてなし

また遅くなってしまった。

"突然の訪問を受け入れてくれて感謝する"


"いえいえ。何もない村ですけど、どうぞゆっくりしていって下さい"


俺達を出迎えたリリパット族の村長は随分と若い女に見えた。そもそも子供にしか見えないとしても、やはり若い。無理に大人を演じているような印象だ。


"なんとお呼びすればよいでしょう?"


"根岸だ"


"ネギシさん。変わったお名前ですね。お召し物も変わってますけど"


"異世界からの旅人と言えば伝わるか?"


"まぁ!異世界から!それはお疲れでしょう?今晩は是非村に泊まって行ってくださいね。ささやかながらおもてなしさせて頂きます!早速準備しないと"


そう言って村長はお付きの者を連れて村の奥へ行ってしまった。やけに静かなグランピーを見ると、眉間に深い皺を寄せて村長の後ろ姿を睨んでいる


"どうした?"


"…なんでもないですじゃ"


"まあいい。想像より随分と大きな村だ。案内頼む"


"了解ですじゃ!まずは商店を案内しましょう!"


グランピーは何かを振り切るように歩き始めた。



######



"ברוך הבא לכפר!"


村長の合図とともに宴が始まった。村の中央広場で大きな焚火を囲み、何重にも車座になったリリパット族がはしゃぎ始める。


給仕が大皿をもって忙しく駆け回り、早くも酔っ払いが歌い始めた。


"随分と陽気なんだな。リリパット族は"


"ええ。いくつになっても子供みたいな人ばかりなんですよ。さあ、ネギシさんも召し上がって下さい!"


そう言って村長は村の名物だという果実酒を俺に勧める。甘ったるくて香りの強い酒だ。それほど美味いものでもないが、隣のグランピーはグビグビと飲んでいる。酌をしているリリパット族の女の胸元をツマミに。


"それは異世界の魔道具ですか?"


"ああ。これは思い出を記録する魔道具だ"


村長は三脚に設置したビデオカメラを興味深く見つめている。


"素敵な魔道具"


"異世界に興味があるのか?"


"ええ、もちろん。自分達の知らない世界に惹かれるのは自然なことです"


"なるほど。だがその割には、森の奥に引っ込んで暮らしているんだな。リリパット族は"


表情が急に抜け落ち、村長は立ち上がった。それを合図にする様に、隣のグランピーが痙攣を始める。


口の中が痺れ、それに抵抗するように身体が熱くなる。俺の様子を見て、リリパット族の女がサッと身を引いていく。


なかなか面白い。


蜘蛛の子を散らすように人がいなくなり、少し間を置いて武装したリリパット族の男達が俺達を囲んだ。ちょうど正面には門番をしていた男が見える。随分と緊張しているようだ。


「כתוב!」


村長の合図でいくつもの刃が迫る。


「黛」


「待ちくたびれた」


姿を現した黛がくるりとワンピースを靡かせ、いくつもの首が宙を舞った。

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