色欲
お昼です
女エルフが首を引っ込め、大鎌は俺の前髪を掠め取っていった。黛から逃れた存在はこの女エルフが初めてかもしれない。
色のない瞳をした黛が次の裁きを繰り出そうと身体を捻っている。
「まぁ、待て」
「無理」
女エルフは俺の背後に隠れて楽しげに笑っている。大したタマだ。
「こいつは反応を見て楽しんでいるだけだ」
「それは大変。急いで刈らないと」
「こいつは加護持ちだ。何かに使えるかもしれん」
「死体の話?」
まだ刈る気か。なかなか構えを解かない。
「そんな趣味はないな。とにかく一度大鎌を仕舞え」
「……」
「……」
根負けした黛がようやく大鎌をマジックポーチにしまった。女エルフがやっと背中から剥がれ、表に出て来る。
周囲を見渡すと、全てのリリパットが死神様の怒りに慄き、その身を地面に投げ出している。
"見てみろ。お陰でひと騒動だ"
"カカカッ!随分と愛い死神様じゃの!ついつい揶揄ってしもうた。許せ"
"二度とするなよ。これ以上前髪が短くなるのは勘弁だ"
"わかっておる。もうせん"
そう言って女エルフは髪をかき上げ、首の刻印が露わになった。
"ところでお前の加護はなんだ?"
"おっと、紹介が遅れたの。ワシは色欲の神様の加護を待つエルフ、ルベリートじゃ"
やはり色欲。見た目の通りだ。
"こちらの世界でも色欲の神様の加護は性欲が強くなるだけか?"
"そんなわけなかろう!そっちの世界では随分と神様がケチったのう。ワシは淫夢を操る能力を授かっとる"
ルベリートは得意気だ。
"それはどんなものだ?"
"ワシが念じれば、対象は直ちに淫らな夢の世界に落ちる。内容もワシの思うがままだ"
"相手は人間だけか?"
"ある程度の知能がある生き物なら大丈夫じゃ。ゴブリンやオークなんかは一度淫夢に落ちたら外から起こさん限り、衰弱死しても帰ってこんぞ"
"面白い"
"そうじゃろう!そこで、さっきのお返しにそこのカリカリしとる死神様にオンシとの淫らな夢を贈ってやろう!"
そう言ってルベリートは黛に向かって指を鳴らした。
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