それはどうかな
ルジェルーノの攻撃を防いだドンキホーテは、目の前の敵を見据えると、ため息をつきながら言った。
「当初の作戦とは大分違っちまったな」
闘気による防御障壁を貼りながらドンキホーテはそう言った。
「無理もない、相手のエイダを探知する能力が強すぎたんじゃ」
当初のエイダ側の作戦はこうである。唯一、エイダの部屋にいて、ルジェルーノの聞いた相手を発狂させる叫び声の影響を受けなかった妖精、メームの指示に従いエイダを安全な場所まで逃した後、マリデ、ドンキホーテ、アレン先生の3人で敵の対処にあたると言う作戦だった。
ドンキホーテは陽動とし、誰か1人か2人を引き剥がす役を担い、マリデもまた同じ役割であった。
2人が敵に対処している間にアレン先生と妖精メームがエイダを安全な場所に流すと言う手筈だったのだが。
アレン先生の言う通り、相手側のエイダを探し出す能力が強すぎたあまり計画が狂ってしまった。
「私はこのまま戦うよ…良いよね先生?ドンキホーテ?メームも怯えてどこか行っちゃったし」
エイダはどうやら逃げるつもりはないらしい。
「エイダ、しかし…」
ドンキホーテはエイダが先ほどまで心に傷を負ったことを知っている。故に更なる傷を負わないか心配だった。
「私も、できることはしたい!逃げて先生達に任せきりは嫌なの!」
「ヘヘッ、敵を目の前におしゃべりとは良い度胸だぜ!」
ジャンが大鎌を振り上げ、切りかかってくる。ドンキホーテは咄嗟に反応して盾大鎌を防ぐと、そのままジャンの腹を蹴り上げた
蹴りを入れられたジャンは、吹き飛ばされながらも笑いながら体勢を立て直し、再び地面を蹴ってドンキホーテの元に突進してくる。
「ちっ!しつこいぜ!ジャンとやら!」
「ヘヘッ、そりゃどうも!」
大鎌の刃と剣がぶつかり合うと、衝撃波が生まれ草と花が揺れた。ドンキホーテはとにかくジャンを一刻も早く倒し、戦況を有利にしなければならなかった。
しかしそう簡単に事が進むわけもなく、ジャンとドンキホーテの戦いは拮抗していた。
「ドンキホーテ!」
エイダの声がする。
「心配すんなエイダ!アレン先生とお前はあのクラゲの化け物を頼む。」
ドンキホーテは鎌を弾きつつそう言った。
「エイダわしらの相手はあの分霊じゃ!また防御魔法を張ってくれるか?!」
「わかった!アレン先生!」
そしてクラゲの化け物ことルジェルーノは、再び演奏を開始した。音が衝撃波となってエイダ達を襲う。
エイダは魔法障壁によりアレン先生と自分を守りドンキホーテもまた闘気の障壁により自分を守った。
だがこの衝撃波の中1人、動けるものがいた。
ジャンだ、あの男のみこの衝撃波の影響を受けることなく、動けている。衝撃波は、ジャンを避けるようにしてエイダ達の元に到達しているのだ。
「クッソ!」
ドンキホーテは思わず悪態をつく、こちらは音の衝撃波を防ぐために一度、足を止めなければいけないと言うのに、ジャンは違う。衝撃波が自らジャンを避けてくれているので自由に動くことが可能なのだ。
ドンキホーテが足止めを食らっている隙にジャンはエイダ達の元へ向かう。その凶刃をエイダに喰らわせるために。
「させねえよ!」
ドンキホーテはテレポートの魔法を使い。ジャンの前に立ちふさがる。
(思った通りだ、どうやらジャンの周りには衝撃波が来ていない)
それを察するとドンキホーテは闘気の障壁を解いた。
そうジャンの周りは衝撃波が避けて通るため、僅かな空間ではあるが、衝撃波の届いていない空白の空間が出来上がっていた。
そこにドンキホーテは飛び込んだのである。
(この空間を利用すれば…!)
ジャンと同じ条件で戦える、そう思ったドンキホーテは剣を構えてジャンに飛びかかる。腕や足を中心的に狙うドンキホーテの剣技をジャンは、受け流しながら喋り始める。
「この衝撃波のねぇ空間を見つけるとはさすがだなぁ四肢狩り!たがよこの剣技はもう見きったんだぜ!」
ジャンの鎌の一閃がドンキホーテの胴体に向かう。
ドンキホーテは身をとっさに翻し躱す。だが危うく衝撃波がない空白の空間の外に出そうになってしまう。
「クッ!」
ドンキホーテは体をその空間から出さないように細心の注意を払い体勢を元に戻し再び、ジャンの元に向かって矢の如く突撃し、斬りかかる。
再び衝撃波の台風の目の中で剣戟が鳴り響く。剣と鎌がぶつかり合い、すさまじい音が2人の鼓膜を、揺らした。
ドンキホーテの剣の一閃がジャンの腕に向かう、しかしジャンの鎌の柄によって防がれる。
ジャンは剣の一撃を防いだ後そのまま、鎌による攻撃をドンキホーテに浴びせた。だがその一撃は盾により防がれる。このような攻防が何回も続いたのち、次第にドンキホーテの方が押されていった。
当然である、この空白の空間はジャン中心に広がっており、ジャンが動けばこの空白の空間も動くようにできている。
つまり戦いの場は完全にジャンの動き次第で変化していくのだ、それにドンキホーテそれに意識を割き合わせなければならない。
そしてその意識を割く一瞬の隙につけこまれ、ドンキホーテは追い詰められていったのだった。
ジャンは言う。
「諦めな、四肢狩りこの状況なら俺の方が強い。ここで倒させてもらうぜ」
だがドンキホーテはほくそ笑んだ。
「そいつはどうかな?」
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