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異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜  作者: 青山喜太


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化け物の歌

「ルジェルーノ、歌いなさい!」


 カミルの指示により邪神ルジェルーノは叫び続ける。叫びの音は、一方向に収束され放射される。放射された先には、標的であるアレンとエイダがいた。

 ルジェルーノの叫びが、エイダ達に直撃する。しかし傷ひとつ付いていない、魔女アレンによる魔法障壁のせいで何一つダメージが通っていないのだ。


「あの猫…!」


 カミルは苛立ちを隠せない、そんなカミルにアンは、落ち着かせる。


「カミル冷静になって、大丈夫よ、あなたの攻撃で間違いなく相手は消耗しているわ」

「そう、そうよね、リーダー、ありがとう少し頭を冷やすわ」


 そうだ何も焦ることはない、着実に削っていけば良いのだ。そう考えたカミルはさらにルジェルーノに歌わせる。

 だが、エイダ達はいつまでもやられっぱなしというわけではないようだ。魔女アレンが人の姿に変身する。



「反撃開始じゃ!」


 そうアレン先生が人の姿へ変身しながら言うと、すぐ様、呪文の詠唱へと取り掛かる。唱えるのは捕縛の魔法、と言っても動きを封じるためのものではない。

 狙うはルジェルーノの口だ。


「行け光の鎖よ」


 光り輝く鎖が、ルジェルーノの口に向かって放たれる。まるで水中の水蛇のような動きで、光り輝く鎖はルジェルーノの口に向かい、絡みつき、口を塞いだ。


「これであの、騒がしい歌声も聞こえんの?」

「あの猫!やってくれるわね!」


 カミルは一瞬で塞がれたルジェルーノの口を見て忌々しそうにそう言う。

 だがそれでも、カミルにとってそれは小さな問題でしかなかった。


「リーダー、魔力をちょうだい一気に決めるわ」

「わかった頼りにしてるよカミル」


 アンはカミルに手をかざす、すると紫色の光がアンの手のひらから放出され、カミルに吸い込まれていく。


「先生、なんだか…嫌な感じがする」

「エイダもそう感じるか?わしもじゃ」


 そう言いながらアレン先生の手元には巨大な火球が出現していた。


「エイダ、下がっておれ」


 エイダは頷きアレン先生の影に隠れる。


「敵の前で堂々と魔力の補給とはの!舐めすぎじゃ!」


 アレン先生の、火球が放たれる。カミルとアンに向かって。

 だがその火球が直撃するまでの刹那、ルジェルーノに変化が現れる。

 ルジェルーノの下半身のクラゲの傘の部分に、長方形の輝きがいくつも浮かび上がった。その長方形の輝き達は傘からさらに実体として、空中に飛び出した。

 まるで鍵盤のように並んだそれはルジェルーノの手前にまで上がってくる。ルジェルーノはその光り輝く鍵盤を認識すると、マリデに壊された腕を直し、そっと鍵盤に指を置いた。

 音がなる、オルガンピアノ似ているが、ただ似ているだけ、どの楽器にも属さないような音色が響き渡る。

 その音色は瞬く間にルジェルーノの前方へと広がった。


「なに!?」


 アレン先生は目の前で起こったことが理解できないでいた。火球がなにもない空間で爆発したのだ。


「どう言うことじゃ?」

「アレン先生!みてクラゲのお化けが!」


 言われてアレン先生も気づくいつのまにかクラゲの化け物こと、ルジェルーノの手前には光り輝く鍵盤のようなものが現れていた。


「さあ、弾いてルジェルーノ」


 カミルの指示によりルジェルーノは、光の鍵盤を狂ったように叩き、演奏を始めた。音の一つ一つが、衝撃となってアレン先生達を襲う。


「くっ!」

「アレン先生!」


 エイダは無意識に魔法障壁を展開し、アレン先生を守る。


「エイダ、すまん!」

「良いの!今度は私が先生を守る番だから!」


 しかしあの演奏は、おそらく自分達が倒れるまで止まることはないだろう。そう感じたアレン先生は、エイダに頼み込む。


「エイダ!持ちこたえられるか!?」

「もちろん!」


 ならばと、アレン先生は必殺の呪文を唱える。ありとあらゆる魔法の中でも一番威力が高い、デルタ・レイだ。


「うっ…!」


 エイダがうめき声をあげる、ルジェルーノの演奏は全く終わる気配がない。続けざまに襲いくる衝撃波に次第にエイダの魔法障壁はヒビが入りつつあった。


「このままじゃ…!」


 エイダに一瞬ではあるが諦めの感情が心の中に混じり始める。だがここで諦めれば、自分の背後にいるアレン先生を守ることができなくなってしまう。

 エイダは、自分の心を奮い立たせ、再び魔法障壁に魔力を注ぐ、ヒビ割れたところが修復され再び、防御の障壁として利用できるまでに回復した。

 その時だ突如として、衝撃波の波のような攻撃が凪いだ。どういうことだろうか、エイダはなにかがおかしいと考える、しかしその思考の時間が命取りであった。


「エイダ!!」


 アレン先生の叫び声に、エイダはハッと気がつく。なにか上空からなにかが降ってくる。人だ。その人物は大鎌を背負っている。

 大鎌を背負ったその人物は大鎌を振り抜きエイダの障壁を切り裂いた。


「…!しまった!」


 エイダの障壁は粉々に砕けた。これでエイダ達を守る盾はなくなった。ルジェルーノは再び演奏を再開させる。

 すさまじい音の衝撃は、不思議なことに大鎌の人物を避けてエイダ達に一直線に向かってくる。


(魔法障壁を再構築…!ダメ間に合わない!)


 エイダの心の中が絶望一色に塗りつぶされた時だ。目の前が青一色に染まる。よく見るとそれは、見慣れたマントだった。


「すまねぇ、ジャンを抑えきれなかった」


 マントの持ち主は自分を中心に魔法障壁に似た、エネルギーの壁を作り出し、ルジェルーノの音の衝撃波を防いだ。


「ドンキホーテ!」


 エイダの心に希望が灯った。

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