逃走
飛空挺に2人の男と1匹の猫が降り立った、片方の男を見てエイダは目を見開く、そしてなにか納得したように目を閉じこう呟いた。
「そうか君はそうなったのか…」
「ようグレン卿…どうやらピンピンしてるところを見ると、誘拐の線は完全になくなったみたいだな。」
ドンキホーテが忌々しげに皮肉を込めて言葉を発する
「ほう、まだ私の潔白を信じていた純粋なものがいるとは驚きだ」
攻撃しようとするアルとアイラを片手で静止させながらグレン卿も皮肉を返す。「ヘッ」とドンキホーテは皮肉に苛立つことなく冷静にグレン卿を見据える。
マリデはそんなドンキホーテを横目にグレン卿に対し喋りかけた。
「グレン卿、大人しく投降してください。できればここで殺し合いはしたくない」
「投降か…残念だが投降はできない、ここまで入念に準備をしてきたのだ、諦めることはできない」
「そうですかならば、僕達とここでやり合うしかありませんね。」
「騎士として正々堂々と勝負だぜグレン卿」
ドンキホーテの言葉を皮切りに両陣営互いに身構える。一方アレン先生はこっそりとエイダの肩に乗りこう耳打ちをした。
「エイダ…」
「アレン先生!」
「目を瞑るのじゃ」
ドンキホーテは片手に鞘を持ちそれを頭上にあげるとゆっくりとした動作で剣を抜こうとしていた。その動作に銀髪の男アルは訝しむ。
(なんだあのパフォーマンスは…まるで注目をあつめたいかのような…)
アルはだんだんと気がつく、ドンキホーテはなにかを企んでいると。
「父上!」
アルがそうグレン卿を呼び止めた時にはもう遅かった。ドンキホーテの剣の刃が空気に触れた瞬間、刃は太陽の如く輝いた。その光はグレン卿達の目を潰す。
「あばよ!」
ドンキホーテはその言葉とともに、デッキの外に走り出す、それもアレン先生とエイダを抱えて。
マリデもドンキホーテと同じくデッキの外に走り出した。
そして、3人と1匹は飛空挺から飛び降りたのだった。
グレン卿達の目が元に戻ったころはすでにドンキホーテ達の姿は消えていた。
「逃げられたか…」
グレン卿のその言葉には、落胆が混じりつつもどこか
喜んでいるようにも思えた。グレン卿は呟く。
「素晴らしい」
グレン卿の口は釣り上がり、歪な笑みを浮かべていた。
「父上いかがいたしますか?」
アルはそれに気づくことなく、グレン卿に聞く。どうやらどうしてもエイダ達を追いたいようだ。それをグレン卿は察する。
「エイダの魂の感知は再びできるようになったのか?アル?」
「ええ、どうやら今まではなにかしらの妨害があったらしく、魂の感知が不可能でしたがどうやら先ほどの2枚羽の覚醒の際に魂の波動が強くなった模様です、再び感知ができるようになりました」
「ならば私が行きます父上」
アイラが話を遮るように進言する。
「アイラ、お前!」
アルは、突然割り込み、自身の使命を奪おうとするアイラを快くは思わなかった。
「アル、あなたの能力はすでに敵に割れている。これ再び行けば、やられるだけだわ。」
それにアルは言い返せない、「だが!」と反論するアルをグレン卿は片手で止める。
「いいだろうアイラ行ってきなさい。アン・テラーン達もともに行かせよう。エイダを連れ戻してくれ。」
「父上、俺も!」
「お前はまだダメだ。別の使命がある。封印を後二箇所、解かねばならん。」
「…!わかり…ました…」
「アイラよでは準備をしておけ整い次第出発してもらう」
グレン卿は船内へと歩きながらそう言う。
「承知いたしました父上。」
アイラは頭を下げる。こうしてエイダの追跡が再び幕を開けた。
主人達が馬車から飛び降り、数分はたっただろうかロシナンテは空を飛んでいた。今は飛空挺と並走している状態である、最初は慣れなかった空中飛行だが今は自由自在に空を飛べるようになっていた。
この世にラバ、数多しと言えども空を自在に飛べるようになったラバなど存在はしないだろう。そんな事実をロシナンテは思うと心の底から自分が誇らしくなった。
そんな自惚れているロシナンテの耳に口笛の音が入り込んできた。馬車に乗せろと言う合図だと受け取ったロシナンテは自信たっぷりに優雅に、その口笛のする方に走っていった。
ロシナンテは賢い、口笛の音から主人達の場所を把握しどの位置にいれば馬車の上に主人達が乗せられるかわかるのだ。
巧みな空中歩行でロシナンテは主人達を乗せられる位置までいとも容易く到達した。
ロシナンテは思う、計算通り、としかし一つ計算外だったことがある。それは馬車にドンキホーテ達が着地した衝撃が思いのほか強かったのだ。一旦それで体制を崩すロシナンテ。
しかしこの程度で、ヘタれるロシナンテではない、なんとか体制を立て直し安定飛行に戻そうとした。がもう1人一番重い人物が馬車に到達していない。
マリデはロシナンテの背中に落ちてきた。
その衝撃で完全に体制を崩したロシナンテは蛇のような軌道を描きながら森の中へと墜落していった。
「「ぎゃああああああ!」」
1人と1匹の断末魔とともに。
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