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異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜  作者: 青山喜太


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許さない。

「頑張れロシナンテ!!」


 そういうのはロシナンテの主人であるドンキホーテだ。今、ロシナンテは魔法で空を飛び、仲間のエイダが捕まっていると思われる飛空挺に向かい飛んでいた。

 だがロシナンテ自身、ラバなのに空を飛ぶなどという奇天烈な事をしたことがないので、なかなかに飛行が安定しない。上下左右と空飛ぶラバと馬車は蛇行運転を繰り返しながら進んでいた。


(オエ、酔ってしまうぞ!)


(我慢してくれ先生!)


 テレパシーの魔法で馬車の中から思わず、アレン先生が訴えかけてくる。しかしドンキホーテ達はここでグレン卿を見失うわけにはいかない。ここでグレン卿を見失うことはつまりエイダを見失うことと同じことだからだ。


「クッソ全然距離が縮まらねぇぞボス!」


「それでも追いかけるんだ、ロシナンテが慣れればその分速くもなる!」


「と、いうわけだ頑張れロシナンテ!」


 そんなことを言われても、とロシナンテは喋れるなら言いたかった。しかしマリデの予見通り、ロシナンテは無意識のうちにだが空中での体の動かしかたのコツを掴みつつあった。飛行が安定しつつあることをドンキホーテは察すると「いいぞ!」だとか「良くやった!」などの励ましの言葉をロシナンテに投げかける。

 それはロシナンテにとって気休め程度の効果しかなかったがないよりはマシであった。


「よし、ロシナンテ!このままいけ!」


 言葉という名の鞭を打たれるロシナンテは安定してきた飛行で、どんどん飛空挺との距離を詰めていった。マリデは「よし」と言いながら言う


「やはりロシナンテに魔法かけて正解だった。この空中浮遊の魔法は生物の脚力を、空飛ぶ力に変換するんだ。ロシナンテはなかなかに足の速いラバだからね。適任だった。このスピードでいけば、ぼく達はほとんど消耗なしで、あの飛空挺に乗り込める。」


「そうだな…痛てて…」


 ドンキホーテが痛がるのを見て、マリデは心配そうに話しかけた。


「大丈夫かい?回復魔法が不十分だったかな?」


「いや問題ないぜ。多少痛みはあるがやれるさ。」


 そんな傷よりも今はあの飛空挺だ、とドンキホーテは飛んでいる飛空挺を睨みつけた。

 飛空挺は依然として速度を保ち飛行している。


「エイダのことやメルジーナ先生のこと、色々とグレン卿には聞きたいことがあるんでな。逃がさねえぜ。」


 ドンキホーテがそのセリフを吐いた瞬間。飛空挺のデッキが内側から爆破された。




「ゆる、さない」


 意識の朦朧とする中エイダはそう呟いた。心の中にあるのは、グレン卿への憎しみであった。


「許さない…」


 その言葉に呼応するように背中の肩甲骨のあたりから光がまるで心臓の鼓動のように、漏れ出る。


「許さない!」


 その言葉と同時にエイダは覚醒する。意識をはっきりと持ったまま。そして同時にエイダの背中には一対の光り輝く羽が生えていた。


「グレンはどこ?」


 エイダはとにかく外に出なければと、牢屋の天井を見渡した。そして天井に手を向け詠唱する。


「火球よ、空を焼け。」


 それはアレン先生に、教えてもらった。火球の魔法の詠唱だった。その火球は牢屋にかかっていた魔法障壁をいとも容易く破り去り、そのままデッキまで貫いてしまった。エイダがデッキに出ると騒ぎを聞きつけた。グレン卿の兵士たちがデッキに集まってきていた。


「こ、これは!牢屋に閉じ込めていたはずではないのか?」


 1人の兵士が戸惑い叫ぶ。


「あなた達、もしかしてグレン卿と一緒に失踪した歴史の騎士団?ならちょうどいいわ、。グレン卿はどこ?」


 エイダの目には、今、憎しみの炎が宿っていた。そして1人の男がその炎を消すべく立ちふさがる。


「ここにいるぞ。」


 グレン卿は逃げも隠れもしなかった。真正面からエイダを見据え、手には身の丈ほどの両手剣を片手で握っていた。剣を構えるとその威圧はもはや老人とは思えない。グレン卿はエイダの背中に生えている光の翼に目をやると嬉しそうに微笑んだ。


「ほう、完全に覚醒したか」


「見つけた…!」


 まるで隼の如くエイダはグレン卿に飛びかかる。そして近距離で火球の魔法を放った。

 グレン卿はそれに臆することなく対応する。グレン卿が剣を振るうと火球は真っ二つに割れた、しかしそれで終わりではない炎の隙間から、エイダが飛び出してくる。エイダは何も持たず素手でグレン卿に殴りかかった。狙うは武器だ、ドンキホーテとの訓練で培った体捌きと格闘でグレン卿に肉薄する。不思議と訓練の時よりも格闘の術の練度が高くなっていたがエイダは気付かぬままであった。


「むう!」


 グレン卿はその格闘を剣でいなす、どうやら魔法障壁で腕をグローブのように覆っているらしく。エイダの腕は剣で切り落とせはしない。


(面白い…)


 グレン卿はほくそ笑んだ。依然としてエイダは格闘での攻撃をする。だが全ての格闘での攻撃はグレン卿により弾かれてしまう。効果がない、そう判断したエイダは距離を取り。再び魔法を詠唱する。


「風よ、全てを切り裂き烈火を運べ!」


 それは風と炎、二つの魔法の同時詠唱であった。風によって威力を増した。炎がデッキ全体を包み込む。


「ぐああ!」


 グレン卿の兵士と思われた。歴史の騎士団たちは、デッキごと焼かれてしまった。

 しかし、グレン卿ただ1人だけは違う。彼は自分の肉体を闘気によるバリアを張り事なきを得ていた。


「久しぶりだ、これほどの魔法を身に受けるのは。」


 グレン卿は服を払い剣を構え直す。するとどこからともなく「父上!」と言う言葉とともにデッキに男が現れた。その男にエイダは見覚えがあった。カルエ遺跡のあの男だ、前から思っていたことだが、自分に似た容姿のその男は恐らくそうなのであろう。思わず、こう口に出た。


「私の兄弟…?」

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