ファファンの村へ
エイダがふと目を開けるとそこはいつぶりだろうか、あのコウサテンとやらにエイダは立っていた。あの少年もいる。
「やあお姉ちゃん久しぶり。」
少年はにこやかに挨拶した。
「ええ、久しぶり。」
エイダも返事を返す。もはやこの空間に来るのも慣れてしまった。戸惑いこそあったものもはや慣れっこである。
「今回はどうして現れたの?」
率直な疑問に、少年はまた笑って返す。
「やだなぁ。理由がなきゃ会いきちゃいけないのかい?」
そう言われてると確かにそうかもしれない、とエイダは思った。この少年には何度も助けられている。そう考えると別に少し話すぐらいならいいか、と。
(それに勇者と話せるなんてまたとない機会…)
そこまで考えてエイダは気づく。この少年の正体はなんなんのだろうか。この少年は以前自分のことを勇者だと説明した。てっきりエイダ達はこの少年の事を魔王討伐の勇者だと勘違いしていたが、そもそも魔王討伐したのは女勇者コルナと魔法使いヴァルデだ。
疑問に思ったエイダは率直に聞いてみることにした
「あなたって本当に勇者なの?勇者はコルナとヴァルデじゃなくて?」
しかし返ってきた答えはエイダを全く違った。
「やだなぁ、僕は英雄、勇者、賢人、そして神の使者って呼ばれてるって前にもいったでしょ?本当のことだよ?あの石碑みたいに皆忘れちゃったのかもしれないけど。」
あの石碑、恐らく精神交換殺人事件の石碑のことを話しているのだろう。そう聞くとなんだか納得してしまう、忘れられた英雄ということなのだろうか。しかしどこか引っかかる。その引っかかりをエイダは言葉にできないままでいると、少年はなにかを察してこういった。
「もう時間だねじゃあねお姉ちゃん。」
「待って!」エイダの訴えも虚しく、目の前に光が広がっていく。
「エイダそろそろ着くぞ、ほれ起きんか。」
アレン先生はエイダの顔を肉球で押す。母が肉球の形に沈み、エイダは呻きながら目を覚ました。
「こ、ここは?」
目をこすりながらエイダは聞く。
「ファファンの村の近くだよ?エイダ君。」
それにマリデが答えた。そうだ、とエイダは思い返す。あの後慰霊碑に祈りを捧げた後、馬車を借りファファン村へと出発したのだった。ファファンの村はエポロから馬車を走らせ約1日のところにあったため、途中で休憩を挟んだものの、二度寝をしてしまったのだ。
「まぁ寝られるうちに寝とくのがいいと思うぜ。」
ドンキホーテは笑った。今馬車の手綱を握っているのはマリデの分身体である。ちなみに走らせている馬というかラバはドンキホーテの相棒のロシナンテである。
「ところでエイダ君うなされている様だったけど大丈夫だったかい?」
マリデが心配そうに聞くのでエイダは見た夢の内容を正直に答えた。そして疑問に思ったことも。
「例の少年の正体ねぇ確かに言われるまで疑問に思わなかったぜ。確かに魔王を倒した勇者はいなかったんだから、本当の正体は何者なんだって言う話だよな?だがやはり、忘れられちまった英雄って言う路線が妥当か?」
ドンキホーテはそう予測を立てた。しかしアレン先生はその言葉に疑問を投げる。
「忘れ去られたのかのぅ?その割には中途半端に神の使者の伝説がのこっているみたいじゃが。」
「確かにそうだな!エルフ族や妖精族には残ってんだよなぁ、なんで俺たちの側に伝説が残っていないんだろうな?あってもおかしくないのに。」
ドンキホーテとアレン先生の会話を聞いてエイダはやっと心の中にあった引っかかりを言葉にすることができた。そうだあまりにも人間側に知られていなさすぎるのだ。
(まるでだれかが忘れさせようとしてるみたい。)
そう思ったがエイダは流石に考えすぎだ、と思い直しその言葉を喉の奥に飲み込んだ。
そしてしばらくすると、馬車は足を止めた。
「どうやらついた様だね。」
マリデは馬車から降りる。エイダ達も後に続いた。
馬車から降りるとそこはのどかな村だった宿屋などはあるがそれ以外は恐らく畑と家しかないそんな村であった。
こんなところに本当にグレン卿がいるのだろうかエイダはそう思ってしまう。それほどのどかで平和を感じさせる村であった。
「じゃあまずはこの村で聞き込みだ手分けしてグレン卿のことを聞いて回ろう。これグレン卿の似顔絵ね。」
マリデはグレン卿の似顔絵が描かれた紙を1人一枚ずつ渡す。もっともアレン先生は猫の姿なので持てないから待つことになったのはドンキホーテとエイダだ。
「じゃあ始めよう!」
「はい!」
「わかったぜ。」
「やるかのぅ。」
エイダ達は、ドンキホーテ、マリデ、アレン先生とエイダの、三組に分かれて聞き込みを開始した。グレン卿の似顔絵を村人に見せ合った。しかし返ってきた返事はどれもこの様なものだった。
「グレン卿なんぞ見たことない。」




