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異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜  作者: 青山喜太


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慰霊碑

 朝日が、エイダの顔を照らす。エイダは呻きながら瞼を擦り上半身を起こした。そして思い出す。今日はファファン村へ出発する日だと。


「もしかして、寝過ごした!?」


 そんな不安がエイダの頭によぎり、急いで服を旅の装束へと着替え、荷物の準備をする。荷物の多くはドンキホーテの妖精の倉庫に入れてもらうため、必要最低限の傷薬や着替えなどを鞄に詰める。そうしてワタワタと準備をしていると、一緒の部屋に泊まっていたアレン先生が目を覚ました。


「落ち着けエイダ、まだ寝過ごしてなどおらんぞ。」


「あ、アレン先生、おはよう。日が照ってるから勘違いしちゃった。」


 アレン先生は欠伸をしながら話を続ける。


「では、共に朝食でも食べに行くか。」


「うん!」


 エイダは元気にそう返事をし、アレン先生と共に一階に降りる。この宿は一階に席があり、頼めば簡単な食事が取れた。オススメは新鮮な卵を焼いた目玉焼きとベーコンだ。

 それを期待して一階に降りた2人はちょうどドンキホーテに会う。


「よう!ちょうど起こしに行こうと思ってたぜ。昨日はよく眠れたか?」


「うん、眠れたよ。」


 エイダがそう返事するとドンキホーテは、「そりゃ良かった。」と言う。


「エイダの分の飯も頼んでおいたからな皆んなで食べようぜ。」


 席の方を見るとすでにマリデが座っている。エイダはマリデにも「おはようございます」と挨拶をすると、そのまま席に座った。


「おはようエイダ君。」


 マリデは挨拶を返すと「ではこれで全員揃ったね」と話を切り出した。


「この後、朝食を食べたあと昼頃にファファンの村へ出発する。それまで自由行動ということにしよう。」


「いいのか?急がなくて」


 ドンキホーテの言うことはもっともだ、グレン卿に追いつけるならすぐ様行った方がいいに決まっている。


「すまない、それなんだが僕の方が準備ができていなくてね。ちょうどあと少ししたら準備ができそうなんだ。」


 マリデは申し訳なさそうに言った。アレン先生は、目を細めマリデをじっと見つめると、ため息のよう鳴き声を出し言った。


「マリデ、お主、戦闘用の分身じゃないのう。」


「はは、見破られてしまったか。」


「え、どういうことですか?」


 エイダの質問に、マリデは頭を掻いた。


「今の僕は本体じゃない、いつものことながらね。王が直々に手紙をよこすものだから急いで各地に散らばっていた分身の内近い者をここエポロに寄越したのさ。僕はその分身ってわけだ。僕はただの調査用の分身でね。戦う力は持ってない、だから本体から今戦う力を送ってもらってるのさ。」


「それが届くのがちょうどお昼なんだよね」とマリデは締めくくる。


「本体のマリデさんを送れないんですか?」


「それ、俺も思った。」


 ドンキホーテとエイダの質問に、マリデは再び申し訳なそうに答える。


「本体はちょっとね、今から急ぎで行っても1ヶ月はかかるところにいるんだ。ただ戦う力を送るだけならすぐに来るから!安心してね。」


 ちょうどその話を終えた時、ベーコンと目玉焼きがテーブルに運ばれる。


「まあいいや、俺もやりたいことがあったし。」


「私はどうしようかな、ドンキホーテ。用事良かったら私も行っていい?」


「お、いいけど、悪いなもしかしたらあまり楽しいことじゃないかもしれねぇ。」


「いいよ大丈夫!アレン先生はどうする?」


 アレン先生は、エイダの膝の上に座る。


「ワシも行こう。どうせ暇じゃしな。ところでエイダワシの目玉焼きなんじゃが切り分けてくれんか?これでは食えん。」


 こうして朝食の時間は過ぎていった。出発まで、正確にはマリデが戦闘用の力を受け取るまでの暇な時間、エイダはドンキホーテの用事に付き合うことにし、後をついて行った。

 ドンキホーテはエイダ達を人気のない、エポロの街の外にある哀愁の漂う墓地へと連れて行った。楽しいことではないと言っていたわけがなんとなくエイダには理解できた。ドンキホーテは誰かを追悼しに来たのだ。

 ドンキホーテはしばらく歩を進め、ある石碑の前で歩みを止めた。それは他の墓よりも少しばかり大きい、よく見ると文字が刻まれている。



 精神交換殺人事件の被害者を悼んでここに石碑を残す。



 そう石碑には刻まれていた。


「ドンキホーテこれって…」


「精神交換殺人事件の被害者を悼む石碑さ。エイダは知ってるか。この事件。」


 エイダは首を振る。


「そうか、とにかく凄惨な事件でな、多くの人々が亡くなった。犯人は自分の精神と他人の精神を入れ替えて犯行に及ぶという。卑劣極まりないやつでな。捕まえるのも難しかった。やっと捕まえた時には、被害者の数も相当だった。とにかくとんでもない事件だったのさ。」


「ドンキホーテも関わってたの…?」


「…ああ、冒険者としてな、夜警と協力して犯人を探してた。」


 ドンキホーテは、石碑の前で祈り始める。エイダもそれに続いた。アレン先生も同様に目を閉じ祈りを捧げる。

 しばらく沈黙が続き、祈りが終わる。


「ありがとなエイダ付き合ってくれてよ。」


「ううん、逆に知れてよかった。そんな事件があったなんて。祈りを捧げれてよかった。」


「そうか、そう言われると。事件に関わった関係者としては少し有難いぜ。最近だとこの事件の事も忘れ去れてるみたいだしな。」


「そうなんだ…」


 エイダは少しだけ寂しい気持ちになる。いつか忘れてしまうのだろうか。その事件の事も、あの石碑も。エイダは実際に事件を目の当たりにしたわけではないそれでも。少しだけ忘れられていくあの石碑に、哀愁を感じてしまった。


「さあ行こうぜ。そろそろ街でボスが待ってるはずだ!」


「そ、そうだったね。急がなくちゃ」


 エイダは街に向かって歩き始めた。アレン先生がドンキホーテの肩に乗って耳打ちをする。


「ドンキホーテ…大丈夫か?」


「何を心配してるんだアレン先生?俺は大丈夫だぜ。」


「そうかの?じゃがお前さんがここに来るときはいつもあのことを考えているように思うのじゃ、ワシは。あまり自分を責めすぎるなよドンキホーテ。」


「大丈夫さ。何せ今日は祈ってくれる優しい奴もいたしな。」


「ふふ、そうか、それはよかったのぅ。」


 ドンキホーテもまた、エイダの後に続き歩き出した。





 森の中、男の声が絶叫が木霊する。声の主はばたりと倒れて、動かなくなると。何事もなかったかのように起き上がる。


「あれ俺、どうしてこんなところに寝てたんだ?………そうだ戻らなきゃ。」


 男はある方向に向かって歩き出す。戻らなきゃ、戻らなきゃと呟きながら。


「ファファンの村に戻らなきゃ。」

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