王都エポロ
トーンレンスから出発して2週間、エイダ達一行は王都エポロに向かっていた。
「もうすぐだな。」
ラバのロシナンテにまたがりながらドンキホーテはそう呟いた。ドンキホーテはエイダ達の乗る馬車に近づくと窓を軽く叩く。エイダは窓を開けた。
「どうしたのドンキホーテ?」
「エイダもうすぐエポロが見えるぜ。」
「本当!じゃあ先生を起こすね。」
エイダは隣で寝ている、寝息をたてている白猫を撫でる。
「アレン先生、もうすぐつくらしいよ。」
撫でられていることに気づき、白猫は目を覚ました。
「ついにきたのか、エポロに。」
アレン先生は欠伸しながらそう言う。
エポロ、ソール国の心臓部とも呼ばれる、巨大な王都である。
2000年前の魔王の災厄から唯一逃れ、かつて勇者が育ち、そして旅立っていった。別名「最初の街」
そう、ソール国はこの街から発展していったのだ。勇者生誕の地となったこの街は重要な聖地とみなされた。それだけではない、かつて魔王を倒そうとこの街に集っていた職人や商人の力により瞬く間にこの街は交易の地としても盛んであった。その結果瞬く間にこの街は、豊かになっていく。魔王討伐後の世界でほかの街や国が復興に向け尽力する中、唯一エポロだけが、一歩先をいっていたのだ。そして今日、エポロは王都となりソール国は巨大な国となった。
だがもし勇者の伝説に誤りがあったのすればどうなるだろう。勇者の国と勇者の街として発展してきた。この国の勇者の伝説が揺らげば、少なくとも他の国は黙っていないだろう。なぜなら勇者を生み出し世界を取り戻した、その礼を込めて土地を分け与えてきたのだ。
勇者の伝説が改ざんされたものである、ということになれば一気に不信感が蔓延り、ソール国の領土問題が発生するだろう。ただでさえ、領土の返上を求めている、ロウル国に正当な理由を与えかねないものだ。
ドンキホーテは考える。
(俺たちが思っている以上にソール国は危機に瀕しているのかもな。)
そうしてエイダ達の馬車はエポロの門をくぐった。一目見回しただけで目に入る家々はどれも、立派である。王都というだけあってかなり豊かな印象を受けた。
「すごい、ここがエポロ…今まで見た中て街の中で一番大きい。」
エイダは馬車から降りると、そのエポロの街並みに圧倒されていた。馬屋にロシナンテを置いてきたドンキホーテが「そうだろ?」と話を続けた。
「なんったって王都だからな!懐かしいぜ、俺も冒険者の時この町でお世話になったなぁ。」
「ドンキホーテって冒険者だったの?」
エイダは驚く。ドンキホーテはとぼけた表情で言った。
「ああ、言ってなかったっけ?」
エイダは首を横に振る。
「俺はな騎士になる前、ここの街で冒険者やってたんだよ。そこで…まあなんやかんやあって騎士になったのさ。」
「そんなことよりボスを探さなきゃな」とドンキホーテは話を切り上げた。エイダは、ハっとそのことを思い出した。マリデは、ただ単に王都へ来て欲しいとだけ、それ以上のことは書いてなかった。まずはマリデの場所を探さねばならない。
「そうだね、マリデさん探さなきゃ。」
エイダがそう言った瞬間、アレン先生が口を開いた。
「それには及ばんようじゃな。」
アレン先生の見つめる先そこには、黒一色の服と帽子をきた、太った男がいた。
「やあ、みんな」
マリデ・ヴェルデだ。
「突然呼び出してすまない。王様から直接の依頼を受けてね。なんでもグレン卿関連の依頼だというから君たちを呼んだんだ。」
そう謝る、エイダは「そんなことないです」と返す。
「実は私たちもソール国の王様に会いたいと思っていたんです。」
「どういうことだい?」
「ここではちょっと話しにくいかもしれません…」
エイダ達は場所をマリデがあらかじめ予約していた宿へと移し、訳を話す、メルジーナ先生のこと、先生が襲われたこと、その裏にソール国がいるかもしれないこと、そしてそれを確かめるために王に直接会いにきたこと。マリデはそれを黙って聞いていた。
「なるほどそういうことだったんだね。」
マリデは紅茶をすすると、「どうしたものか」と呟いた。
「では、君たちは直接王様に会いに行きたいとそういうことだね、それは問題ないんだが、問題はないんだけど…」
「質問する内容に問題あるんだろ?」
ドンキホーテが食い気味に言う。
「その通りだ。もし王様が黒幕なら僕たちはただじゃすまないよ。」
マリデのいうことについては最もだ。しかし、それを承知の上でエイダ達はドンキホーテのいう王様を信じることにしたのだ。
「ボス、俺はな王様を信じてる。そんなことをするやつじゃないってな。」
そのドンキホーテの発言にマリデは「しかし」と言いかけたが、思い直した。
「わかった、でもね、一応保険はかけておきたい。危なくなったら僕とアレン先生でこの宿屋に転移魔法で戻ってくる。いいね。」
マリデはそう言って、宿屋に簡単な魔法陣を描いた。
エイダ達は頷く。一行はついに王城へと向かう。




