守り手
結界が貼られ、もはや逃げ場がなくなった、エイダとアレン先生の前にフードを深くかぶった黒いマントを羽織った人物が現れる。どうやら結界を張った張本人のようだ。
「エイダ下がっておれ!」
アレン先生はこうなっては戦うほかないと、覚悟を決めた。結界を貼られた状態では、逃げる事は不可能、結界を無理矢理破ろうとしても時間がかかるし、そうしている間に後ろからやられてしまうだろう。だからこそここは、目の前の敵を打ち破るほか手立てはないのだ。
エイダとアレン先生の目の前に立ち塞がった人物は、手を突き出す。来る、魔法の攻撃が、アレン先生自身も反撃用の魔法を準備する。
(来るなら来てみるがいい!)
アレン先生が今まさに、魔法を放とうとする瞬間。
「待っていただきたい。」
マントを羽織った人物はそう言った。男の声だ。アレン先生は警戒をとかず、様子を伺う。
「ジンも、早とちりはやめろ!」
ドンキホーテと戦っている。スティレットを持った人物もその言葉を聞くとピタリと攻撃の手を止めた。
ドンキホーテは汗を拭い、エイダ達の近くへ移動する。彼もまた警戒は解かない。
「すまない、連れのものはかなり今、気が立っていてな。」
マントを羽織った男は話を続けながら、マントの中から袋を取り出す。それにドンキホーテは見覚えがあった。
「ああ!メルジーナ先生の本!返してくれ!それ!」
どうやらどさくさに紛れて買った大事な本を落としてしまっていたようだ。それを聴くと、マントの男からいかにも、徒労と落胆のこもったため息が漏れ出た。
「やはりな、ただの、メルジーナ先生の作品が好きなもの達か。ジンだから言ったろ!いくら私たちの気配に気がついたからといって襲いかかるなど!ただのファンを片付けるところだったぞ!」
ジンと呼ばれた人物はさぞ落胆もするそぶりを見せる事なく。こう言い放った。
「人は間違えるものだ、アロク。すまないことをしたな、メルジニアン。」
ジンと呼ばれた者はフードを取り、その素顔を露わにする。綺麗な黒い長髪を持ち、女性と見紛うほどの美貌しかし、ほんの少しだが男らしさの残る顔立ちから、男性だとわかる。ジンはそのような顔をしていた。
「まて、どういうことなんだ?お前らは一体何者なんだよ!」
当然の疑問だ。てっきりドンキホーテ達はエイダを狙う。刺客がやってきたのかと思っていたが、どうやらこの様子を見るに違うようだ。
ならば一体何が起きて、このような事態に陥っているのか皆目検討がつかなかった。
「わ、私を、狙ってきたんじゃないですか?」
エイダに至っては襲ってきた本人達にこう聞く有様である。
「エイダ、落ち着くんじゃ、はい、そうです答える刺客はおらん!」
「あ、たしかに!」
その言葉を耳にした、アロクと呼ばれた男は、首をかしげる。
「君を、狙う?なぜそんなことを…?」
深くは追求せず、アロクはエイダ達の疑問に答えるべく、訳を語り始めた。
「まずは、突然襲ってしまってすまない。私達は、芸術家の守り手、アロクとジンだ。」
「芸術家の守り手?聞いたことないな。」
ドンキホーテは話に割って入る。アロクは「そうだろう」と言い話を続けた。
「私達を知るものは少ないなにせ、人に知られてはいけないからな。こうして先ほど結界を張ったのもこの話を聞かれたくないからだ。さて、私たちの目的を簡潔にいうと、芸術家の保護だ。例えば国よっては、素晴らしい絵画を描いていたとしても、その国の法律のせいで規制をされてしまったり、最悪監獄に入れられたりしてしまうという事例がある。そういった、素晴らしい腕を持つが様々な障害のせいで実力が出せない芸術家達を保護するのが私達、芸術家の守り手の役目だ。」
「そして」とアロクは続けていう。
「人に知られてはいけないというのも、納得できるだろう。国によっては本来、監獄に入るべきはずの囚人を逃がしたりしている訳だ。我々は常に隠密に事を進めなければならない。故に人には知られない、知られてはいけないのだ。」
そこでアレン先生は疑問に思う。
「おい待て、では今回はなぜこんな事をしでかしたんじゃ?知られてはいけないはずなのに随分とまあ派手に襲ってきたのぅ?」
アロクは、それを聞くとため息の混じった笑いを零した。
「そうだな、今回は少々勝手が違ってしまったのだ。」
アロクは、そのまま「どう説明したものか」と悩むそぶりを見せ、少しばかり考え込んだ後、説明を再開した。
「単刀直入に言おう。メルジーナ先生は生きている。私たちが保護した。」
その言葉にエイダ達は衝撃を受けた。特にドンキホーテはその言葉がまるで天にいる神からの啓示のように感じていた。
「く、詳しく聞かせてくれ!ください!」
ドンキホーテは、冷静さを失う。
「ド、ドンキホーテ?!」
その姿を見た、エイダはたじろいだ。アロクはエイダと同様に、驚きながらも、話を続ける。
「メルジーナ先生は火事の前から芸術家の守り手と交流をしていてな。火事が起こった当日助けを求めてきていたのだ。保護したメルジーナ先生はこういっていた…」
アロクは、忌々しげにいう。
「火をつけられたのだと。」
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