プロローグ 『Best Wish』
小さい頃、翼は自由の象徴だと思っていた。
広げた時に舞う羽は光沢で、星みたいにキラキラして見えた。
――けれど、
本物を目にした時、それは理想と違って残酷なものだった――。
むか~し、むかし。それはと~っても昔。世界には一本の大樹と剣がありました。
大樹には妖精が住んでおり、剣には白い天使と黒い悪魔、黒い天使と白い悪魔が半分ずつ宿っていました。
それぞれは世界の反対側に秩序を守るべく存在し、中にいる天魔と妖精は自由に会うことができ、大層仲良く暮らしていました。
ですがある日、一人の人間が剣を抜き、もう一人の人間が大樹を切り落としてしまいました。
大樹に宿っていた妖精は、行き場を無くして切り落とした者の伴侶となり、切り落とした者は後に『妖精王』となりました。
剣を抜いた者は、宿った力によって『英雄王』として崇め祀られるようになり、彼もまた大国の王となりました。
そしていつの日か、二つの国は対立するようになり、争いが続きました。
たくさんの者が命を落とし、血を流し、長く続いた戦争で勝利を手にしたのは『英雄』でした。
けれど、英雄の国ではその力を巡って新たに内乱が起こりました。
一つの国は対立し、その意思に導かれるようにして剣は二つに分かれました。
二人の先導者。百年と続く終わりなき戦争。
滅びた妖精。分かれた天魔。
いつしか、悲しみに暮れた世界の果て、宿っていたはずの二つの存在は忘れ去られていきました――。
――似て非なる存在のぶつかり合い。
それは終わりなき戦争の始まりの物語――。