プロローグ
こんにちは(またはこんばんは)。作者の楔 風牙といいます。
「戦いの神」には少々猟奇的な表現があります。18禁にするほどのものではないですが、極端に苦手な方は残念ですが閲覧を遠慮なさった方がいいと思います。
それを踏まえたうえでの読破をお願いします!!
虚ろに映る黒い人影は雨音に消されそうなほど儚く、恐れさえ感じたのを覚えている。
自分は雨の中横たわっていて、その人物を見つめているのだ、ということが何故だか理解できた。
その人物がだんだん近づいてくるにつれ影の形が見えるようになってくる。
黒い学生服を身にまとった『彼』は、綺麗な顔立ちをしていて、あぁ、女子にモテそうだなぁなんて悠長なことを思った。
一歩、二歩、三歩…ピタリ、と俺の前で彼は止まり、冷たい視線で俺を見下ろす。
近くにいるはずなのに、何故だか輪郭と大体の顔立ちしかわからなくて顔に集中できない。
最初と同じように理解できる…俺は、コイツに殺されるのだ、きっと。
どうせならアイツへ想いを伝えればよかった、もっともっと、アイツらと話しとけばよかった…ずっとずっとずっと・・・みんな一緒に普通でいたかった。
でも、多分ムリだな…男の持っている日本刀だけがやけに鮮明で、乾いたような潤いのない光が目をさすように痛い。
「・・・・・・・・・・神、さま・・・。」
どうか、どうかどうか、俺を殺さないでほしい。誰にも『死ね』なんて言葉発しない、これからは親孝行だってする、なんなら一日百善を達成しつづけたっていい。なんだってする。だから、俺を助けて下さい…。
すると自嘲を含む笑みを浮かべ、男は俺の喉元に日本刀を突きつけた。そして、静かに口を開き、次は俺の左胸に刃を向ける。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・神様なんていたら、」
そして、刃は俺の胸を貫いた。
感覚はない、痛くもないけど、ただうちつける雨だけが男の笑みのように冷たかった。
「神様なんていたら」
男はもう一度言いなおして、俺から刀を抜いた。寝てるから服は見えないけど、きっと真っ赤なんだろうな。俺の頬にもパタパタと血が飛ぶのが分かる。朦朧とする意識の中で、彼の言葉だけが異常にはっきりと耳に残っていた。
まだテノールになりきれていない、少し低めのアルト調の声。
「俺みたいな存在、作らないやろ?」