表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
融合世界  作者: らる鳥
76/94

争い渦巻く第六領域『ファーストプレイヤー:イオ・アガリス』7


 ソウの屋敷に辿り着いた私は、野宿と山を駆け抜けたせいでどろどろの姿だったので、出くわした妙子を驚かせてしまった。

 驚きが収まった後、心配したとの声を上げる妙子に、兎に角空腹で死にそうだと訴えて、急ぎで用意出来る食事を出して貰う。

 おにぎりを貪り食い、温め直された汁物を一気に飲み、またおにぎりを貪る。

 実に美味しい。

 米を握って塩を振っただけなのに、どうしてこんなに美味しいのだろうか。


 その答えは、ソウが食に拘って熱心に精米してるから。

 どうにもソウと話していると、彼は最初から私程に全てを失ってはなかったんじゃないかと思う。

 或いは、元々あの魂の湖から回収された訳ではないのかも知れない。

 今のアガリスとなる前の話なんて、触れて良い話題なのかどうかもわからないから、それを確かめる術はないけれども。


 勿論おにぎりが美味しい最大の理由は、限界に近い空腹である事はわかってる。


 手当たり次第に食事を口に運び、腹が満ちた私は再び眠気に襲われたけれど、眠りに落ちる寸前で、妙子に風呂を用意したから入って欲しいと言われてしまった。

 あぁ、こんな泥だらけの恰好の私に屋敷内でゴロゴロされると、確かに後で妙子が苦労するだろう。

 眠気を堪える私は風呂に押し込まれたので、掛け湯をしてから身体を布で拭い、清めてから湯に浸かる。

 湯にゆっくりと浸かれば、肌をピリピリと刺激する熱に、少し意識がはっきりとして来た。



 昨日の夢は覚えてる。

 宣言通り、大魔術師は夢の中で魔術講義と小言をたっぷりと私に詰め込んだ。

 結論から言えば、詠唱を使う魔術は私だけではなく、常識の異なる各領域を旅するアガリスには向いてないのだと思える。

 いや、魔術師のジョブを持つアガリス達はシステムとして魔術体系を共有してる様だから、やっぱり私に向いてないだけかも知れない。


 しかし魔術を極める心算なら、魔術体系の創造や共有は欠かせない物の様だし、詠唱も避けては通れない要素なのだろう。

 うぅん、まぁ、良いか。

 多分本当に私が魔術を極めたいと願うなら、大魔術師は己の持つ魔術体系を、教え共有してくれると思う。

 これまで大魔術師が詠唱を教えなかったのは、私に魔術を極めたいって意識が薄いからだ。

 私は確かに魔術に面白みは感じているが、それでも戦う為の術の一つとして、短剣や弓や、身軽に身体を動かす技術と大差なく考えている。


 そもそも私はアガリスであるとは自信を持って言えるけれど、それ以外の何である、何かになりたいと言う意識は薄かった。

 ジョブで言えば狩人ではあるのだろうが、熱心に狩りをする訳でもなく、獲物を追う事に何らかの信念を持ってはいない。

 魔術を使えない人から見れば、魔術を使えば魔術師に見えるかも知れないが、魔術を道具として便利に使うだけの人と、魔術師の間には大きな差があるように私には思えた。


 私はアガリス以外の、一体何になりたいのだろうか。

 性別、男か女、そんな事すら決められない私が、どんな道を選べるのか。


 考え事をしてる間に、目はハッキリと冴えていた。

 私はざばりと湯から出て、髪と身体を洗ってから、また掛け湯をする。

 昼間から風呂なんて、贅沢な話だと思う。

 再び湯に浸かると、はぁと大きなため息が漏れた。


 

 脱衣所に妙子が用意してくれたのであろう浴衣を身に纏う。

 少し、ほんの少しだけ、困った事がある。

 折角風呂に入り、浴衣を着て、非常に心地良い状態なのに、この流石に格好では吾賀里の領民達に牛蒡と当帰を届けに行けなかった。

 流石に何時までも放置しては、頼み事を引き受けた身としては心苦しいし、もしかしたら何時までも顔を見せねば心配されてしまうかも知れない。


 ……ソウに任せれば良いだろうか。

 私はそんな風に判断して、彼の私室へと足を向ける。

 どうせあの妖の事も報告しなければならなかったのだし、ついでに預けて頼んでしまおう。




「リザルト」



『アルガラード領域、十州を知る:達成☆

 アルガラード領域、十州の妖に遭遇:達成☆

 中級妖を初めて討伐する(対象、山姫):達成☆

 吾賀里領の窮地を救う:達成★

 現地住人からの名声(小)を入手:達成

 現地住人からの名声(中)を入手:達成☆


 捧げ物:山姫の核

 分類:魔石

 価値:3


 五個の目的を達成しました

 有益な目標が四つ、重要な目標が一つ達成されています


 価値3の捧げ物が行われました


 階位上昇が二回発生します


 階位6→8

 階位の上昇により能力値のランク上昇が二回可能です

 階位の上昇によりスキルのランク上昇が二回可能です

 能力値を二つお選びください

 スキルを二つお選びください



 またこの操作は後程ステイタス確認でも実行が可能です』



 そしてこれが、今回の結果である。

 中々に、悪くはないんじゃないかと思う。

 見付けた光る石をソウに見せた所、それは妖の心臓にあたる核だと言われ、詳しい話を求められた。

 その結果あの妖は、中級妖怪の中でも上位に位置する山姫と呼ばれる厄介な存在である事がわかる。


 何でも確かに妖は鬼の手下の様な物だが、それは下級に限った話で、中級以上の妖は鬼と同等、特に中級上位は鬼の指揮官と同等、上級妖に至っては豪嵐童子の様な鬼の英雄と同格に扱われる存在なんだとか。

 まぁ確かに、あんな手強い妖が手下の様な扱いだったら、私も少し鬼には勝てないかと思ってしまう所だった。

 今回の山姫は、吾賀里の領地の破壊工作に忍び込んで来たのだろうとソウは言う。

 勿論その狙いは、吾賀里の領地に壊滅的な被害を与えてソウが戦場に来れない様にする、或いはソウ自身が毒と呪いの水を飲んで倒れてしまう事だったのだろう。

 つまりあの山姫は、破壊工作員であり暗殺者だったと言う訳だ。

 どうやら鬼側も、ソウを非常に目障りに思ってるらしい。


 滅びた妖の核は強い魔力を秘め、妖刀や術具の作成に使える代物らしいので依頼人への捧げ物にした。

 ソウは中級の、それも上位の妖となれば滅多に討ち取る事なんて出来ない、具体的には腕の立つ武士が十数人で掛かって、犠牲を出しながら何とか倒せる位の相手だと言っていたが……、その口ぶりだと彼自身は単独でも倒せるのだろう。

 だとしたら妖、山姫の討伐は確かにソウの手助けになっただろうが、これで全ての恩は返したと大陸に旅立つには、何だか少し物足りない。

 それに今回の様なやり方で、吾賀里の領民や妙子が危険に晒されるのは、少しばかり腹が立つ。

 やはり大陸に旅立つならば、少なくとも伍の島を奪還して、この地から前線を遠のけてしまってからが良い。



 後日、吾賀里の領民達は、牛蒡と当帰の礼だと言って、大きな山芋を持って来てくれた。

 私が妖、山姫を討伐した事を領民に知らせた為、安心して山に入れる様になったんだそうだ。

 彼等が喜んでくれたのならば、私も嬉しく思う。

 その山芋で妙子が作った山掛けご飯は、とてもとても美味だった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ