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融合世界  作者: らる鳥
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第三領域と先駆者『ファーストプレイヤー:イオ・アガリス』6


 原初の時、全ての混じり合った混沌から、光と闇が飛び出した。

 そして生まれ出た光と闇は、更に混沌の中から光が火と風を、闇が水と土の、合計四つを引っ張り出す。

 揃った六つは、力を混ぜて世界を創る。

 空と海、大地だけでなく月や太陽、星々も。

 これが世界の誕生だ。


 世界を創造した六つは神となる。

 けれども六つの神、元素神達だけでは、生み出した世界を発展させるには手が足りなかったのだろう。

 故に六つの元素神達は、混沌を切り取り、捏ねて自分達の同類、つまりは神々を生み出したのだ。

 数百の神が生み出され、彼等の手により世界は少しずつ発展して行く。

 命ある存在が世界中に芽生え、木々や動物、或いは人型種族に成長した。

 多くの神々は己の役割を見付け、人型種族達や動物等を導き、世界はそう、繁栄の時を迎えたと言える。


 繁栄の時は長く続いたが、けれども永遠では無かった。

 前に進んでいる間は、些細な意見の違いは許せても、停滞が始まれば些細な粗が気になり出す。

 そもそも光と闇は相反し、火と水、風と土も同じく相反する関係なのだ。

 光は火と風と、闇は水と土と共に、他の神々を巻き込んでお互いに敵対を始めてしまう。

 最初は意見の対立だったが、やがて全ての神々を巻き込んだ争いへと発展し、そうして互いを滅ぼし合った。



 そう、それが世界を維持が困難な程に傷付け、融合に至る原因となった神々の戦いである。

 そして今、この領域内で脅威となっている多くのアンデッドは、この時の戦いの余波で死んだ者達がアンデッドと化した物なのだ。


 そもそもアンデッドと言う存在自体を生んだのは墓を守る神だったと言う。

 闇から生まれた中級神である彼は、墓の前で死者を悼み嘆く人々を見て、繊細な心を痛めた。

 だからこそ死者をアンデッドとして蘇らせたのだが、……当たり前の話だが、それは決して望まれた蘇り方ではない。

 不完全な蘇りと、死んだはずの家族が帰って来て恐れる人々の姿に、墓を守る神は頭を悩ませる。

 その末に、墓を守る神は、悲しみが生まれるのは死があるからだと考え、死を無くすために全ての生者をアンデッドに変えてしまおうと動き出す。

 完全に思い悩み過ぎた末の暴走だが、墓を守る神は邪神とされて、他の神々に封印された。


 さてそんなアンデッドだが、一度不完全な蘇りが行われる法則が世界に刻まれてしまえば、処理されぬ骸はアンデッドとして蘇ってしまう。

 だが光から生まれた上級神である昼の神は、アンデッドを大変嫌い、己が領分である昼間、陽光の下を歩く事を禁じる。

 しかし闇から生まれた上級神である夜の神は、行き場を無くしたアンデッド達を哀れみ、弟である墓を守る神にも気遣って、夜をアンデッドに開放したのだ。

 ……まぁ生きた人間からしてみれば良い迷惑でしかないのだけれども。


 けれども夜の神は、その後に弟である墓を守る神と同じく、邪神として封印される。

 何でも夜闇に震える人々を哀れみ、火を与え、更には脅威を払う力、魔術をも与えてしまったのだそうだ。

 人に過ぎたる力を与えたとして封印される夜の神。

 でもこの件が、神々の争いが起きる引き金となる。


 光の元素神は、余分な力を持ってしまった人型種族を一度滅ぼし、新たに生み直すべきだと考えた。

 だが闇の元素神は、自らの息子が封印される事で償った筈の罪を掘り返そうとする光の元素神に怒り、激しい抗議を行う。

 意見の対立は然程の間を置かずに本格的な争いへと発展し、そして世界は滅びかけたのだ。



 ……と、少し話が逸れたが、これがこの領域内に多くのアンデッドが蠢く理由である。

 つまりは全てが神々の責任であった。 

 神々が争いを止め、世界が融合した事で力を取り戻し、復興が始まりはしたけれど、だからと言って生まれてしまったアンデッドが消える訳ではない。

 故にこの領域の人々はアンデッドに怯えながら夜を過ごす。 


 これは、実に危険な話だろう。

 だってアンデッドは兎も角、哀れだからと言うだけで後先を考えずに行動してしまう神が二柱も、今の世界の状況を知らずに封印されているのだ。

 仮にその封印が解けた時、どれ程の問題を引き起こすかは想像も出来ない。

 勿論、そんな大きな話に私が関わる術はないので、この領域の神々や、或いは依頼人が対処すべき問題ではあるけれど。


 老神官に礼を言って教会を出た私は、思わず大きな溜息を吐く。

 そう、私が悩み、想いを巡らせた所で仕方がない。

 出来ない事は出来る誰かに任せ、目の前の事を片付けよう。




 最後に弓の訓練だが、後日に夜間警備を引き受ける代わりに、警備隊の訓練場を貸して貰った。

 最初はどうにも上手く行かず、前に飛ばす事すらおぼつかなかったが、二時間程経った頃だろうか?

 試行錯誤していたら、上手く飛んだ一発が的に当たる。

 そして一度当たってしまえば、その感覚さえ忘れなければこっちの物で、訓練を覗きに来た町の兵士が驚く位には弓の腕も上達した。

 いや、本来の腕を発揮出来る様になって来たと言う方が正確か。


 更に満足が行く射撃が行えるようになった所で、ステイタス確認を行い、能力値とスキルの割り振りも行う。



 名称:イオ・アガリス

 年齢:15(0)

 階位:2

 主職:狩人 副職:なし


 筋力:E 頑健:E 敏捷:E→D 知力:E 魔力:E


 弓:E→D 短剣:E 罠:E 気配察知:E 動植物知識:E 野外追跡:E


 番犬の加護:EX(1)



 夜間警備でアンデッドとの戦闘が起きる事は然程多くはないらしいが、出来る限り備えておくに越した事はない筈だ。 

 物見櫓から矢を射かけるイメージをし、的からある程度の距離を置いて矢を放つ。

 数をこなす事よりも、一射一射で感覚を確かめる様に。

 そうやって私は日暮れまで練習用の矢を放ち、警備隊に幾人かの顔見知りを作って、宿へと戻った。





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