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融合世界  作者: らる鳥
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第三領域と先駆者『ファーストプレイヤー:イオ・アガリス』4


 食事を終えたら、食器を返すついでに桶一杯の湯を部屋まで頼み、代金の銅貨を二枚払う。

 この領域の常識が未だいまいちわからないが、宿の娘がふぅふぅ言いながら懸命に桶の湯を運んでくれたので、礼を言って銅貨を一枚チップとして握らせた。

 どうせ一週間を過ごすなら、しみったれた面倒な客だと思われるよりも、少しでも良い風に思って欲しい。


 荷物袋から布切れを出し、湯に浸して身体を拭く。

 熱い湯で身体を拭くのは、なんともこう、気持ちが良い。

 私は知識の上では風呂も知ってるので、機会があれば是非入りたい物だと思う。



 食事を終え、身を清めた私は、今日はもう寝るだけだ。

 だからこそ一日の終わりに、私はすべき事がある。

「マップ展開」

 蝋燭の灯りを消した闇の中で、私はそう呟く。

 するとステイタス確認の時と同じ様に、暗闇の中に私にだけ見える映像が浮かぶ。

 と言ってもそのほとんどは黒塗りで何も無いが、ごく一部だけに光が灯っている。

 その部分を良く見たいと考えると、自動的に光ってる部分付近のマップが拡大された。

 どうやら光ってるのは、私が降り立った場所からこの町までの道のりらしい。

 そして町の部分にはコフィーナの町との文字が書き込まれてる。


 成る程、どうやらこのマップ機能は、私が歩いた場所、知り得た情報を自動的に記載してくれる物の様だ。

 では次に進もう。

「リザルト」

 私はマップを見て今日の事を思い出しながら、ステイタス確認、マップ展開に続く三つ目の言葉を口にする。

 すると一瞬の間を置いてから、やはり視界にずらずらと文字が流れ出す。



『初めての加護の使用:達成

 初めて人里に辿り着く:達成

 新しい人里の発見(小規模な町):達成


 三つの目標を達成しました

 階位の上昇が発生します


 階位1→2

 階位の上昇により能力値のランク上昇が可能です

 階位の上昇によりスキルのランク上昇が可能です

 能力値を一つお選びください

 スキルを一つお選びください


 またこの操作は後程ステイタス確認でも実行が可能です』



 ……と、そんな風に。

 まあ要するに簡単に言えば、クエスト達成によるレベルアップの処理である。

 尤もこんなに容易く階位の上昇が起きたのは、依頼人からのサービスの様な物だろう。

 だって人里の発見も本当は私の手柄ではなく、あの加護で出て来た犬のおかげだ。

 とは言え、肉体の性能が上がるのは有り難い事に違いないので、文句は言わずに有り難くサービスを受け取るのだけども。


 さて、この階位の上昇だが、実は三つの方法があると私は依頼人に聞いていた。

 一つ目はこの領域内の旅をして、色々な場所や物事を知る事。

 つまりは元々の依頼を果たす事だ。

 今回の階位上昇に繋がった目標達成がこれにあたる。


 二つ目は依頼人に対して捧げ物を行う事。

 誰かの思い入れや執念の染み付いた物品や、いわくつきの代物、或いは強い魔力の籠った品等を捧げれば、その価値に応じて階位を上げてくれると言う。

 ただ依頼人の捧げ物に対する評価基準は、世間一般の価値基準とは大きく異なる為、どう言った評価が下されるかは捧げてみなければわからない。

 旅の途中で面白い物、変わった品、もしくは処理に困る品物を入手したなら、捧げてみようと位に思ってる。


 そして最後の三つ目は、依頼人を崇める信者を増やす事なのだが、これに関しては聖職者を職に選ばなかった時点で達成は出来ないと断言された。

 信者を通じて領域内を観察すればまた違った視点が得られるだろうからと設置した項目らしいが、まだ戒律等を詳しく設定して居ない為、私が聖職者を選ばなくて助かったそうだ。



 私の場合は主に一つ目の方法で階位を上げる事になるだろう。

 と言っても、今の状態でさえこの身体を充分に使えてはいないのだから、能力値やスキルの上昇はもう少し訓練を積んでからになる。

 ランクに関しては、Eが一人前で、Dが一流、能力値ランクの平均がCに達すれば英雄並で、BやAはそれ以上だと言う話だった。

 実に大仰な話だから、正直何の実感も湧きはしない。

 でもあの依頼人が言うことだから、何も大袈裟でなく本当にその通りなのだろう。


 まあしかしそうなったとしても、力に振り回されない様にだけ気を付ければ良い事だった。

 例え人よりも高い位置まで登り詰められるのだとしても、その歩みが人よりも速くても、私は私なのだ。

 この身体に慣れ、食事に慣れ、風呂にだって入り、色んな刺激を受けて、私と言う人格を少しずつ完成させて行けば良い。

 だって私は、今とても楽しいのだから。


 ではそろそろ、そう、初めての肉体での睡眠を経験しよう。

 湖の底で何も感じずに時の流れで魂を削られて行く眠りじゃなく、明日の活力を得る為の休眠を。

 ……おやすみなさい。



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