第三領域と先駆者『ファーストプレイヤー:イオ・アガリス』48
グリフォード王国の首都、ピューサを出てから二週間、私は国境を越えて隣の国であるグリアへと辿り着いていた。
グリアはグリフォード王国に比べると領土の大きさは半分ほどしかない、小さな国だ。
もう少し正確に言えば拡張の余地はあるのだが、敢えて拡張をせずに小さいままの領土を開発し、その内を栄えさせている国である。
その理由は簡単で、グリアにとってグリフォード王国が危険地域への盾となっているからに他ならない。
仮に領土を拡張したならば、広がった分の領土の一部は旧都等の危険地域に近付いてしまい、一部のアンデッドはその地域に流れて来るだろう。
すると拡張して得られる利益よりも、防衛に掛かる損失の方が上回りかねないのだ。
グリフォード王国の様に戦わねば生きられぬ地であれば、民も自ら戦う事を選ぶ。
だがグリアはグリフォード王国の御蔭で無理をせずとも生きられるから、民はどうしても危険を厭う。
故にグリアは小さい領土に開発の力を集中させ、安全な流通の中継地として栄えていた。
まあグリフォード王国内で、グリアを占拠すべきって意見が出る気持ちも、少しわからなくはない。
ただ幾ら安全と言ってもミルノーシェ領域だから、時にはアンデッドも出るし、安全だからこそ盗賊も出易く、それ等に対抗する為の戦力はグリアも保持しているのだ。
それにグリア以外に隣国を持たぬグリフォード王国と違い、グリアは北東にローグス国、南東にリザリア国と領土を接し、友好的な関係を保っている。
幾らグリフォード王国の戦士が優秀でも、他の二国が動けば苦戦は免れないだろう。
「リザルト」
因みに前回の事件や、それからの移動で得た私の評価はこの様な感じだ。
『悪魔の存在を知る:達成☆
悪魔との契約を阻害:達成★
敗北の報復:達成★
現地住人からの名声(大)を入手:達成★
新しい人里の発見(小規模な町):達成
新しい人里の発見(小規模な町):達成
新しい人里の発見(小規模な町):達成
新しい人里の発見(小規模な町):達成
新しい人里の発見(中規模な町):達成☆
十個の人里を発見:達成★
捧げ物:最下級の魔術具×6
分類:魔力を秘めた品
価値:1×6
捧げ物:悪魔契約の印章
分類:特殊
価値:5
捧げ物:双頭蛇の杖
分類:魔杖
価値:5
十個の目的を達成しました
有益な目標が二つ、重要な目標が四つ達成されています
人里の発見数が一定に達しました
次回からは人里発見の評価が下がります
価値1の捧げ物が六個行われました
価値5の捧げ物が行われました
価値5の捧げ物が行われました
前回階位上昇時の繰り越し分と合わせ、階位上昇が三回発生します
階位11→14
階位の上昇により能力値のランク上昇が三回可能です
階位の上昇によりスキルのランク上昇が三回可能です
能力値を三つお選びください
スキルを三つお選びください
またこの操作は後程ステイタス確認でも実行が可能です』
そう、とても凄い事になった。
これまでで最高記録である。
残念だった事は、捧げた魔導具の評価が、殆ど最下位の魔術具って扱いだった事だろうか。
後で大魔術師に訊ねてみると、
「イオ君がこれまでに出会った魔術師は、君にわかり易い評価で言うと全てE以下だ。その程度の木っ端魔術師の作成したアイテムは、我々にとってはあまり価値はないから仕方がないさ」
なんて風に言われてしまった。
我々と言うのは、やはり悪魔なんだろうかと思ったが、訊ねるのはやめておく。
だって彼等の正体が何であれ、私にとって恩ある大事な存在である事には変わりがない。
……が、取り敢えずこれからは普通の魔導具を捧げ物にするのはやめておこう。
捧げるならば矢張り、神々の時代のアイテムだろうか。
今回はあの教会に居た夜の教団のリーダーらしき老人の持つ杖がそうだった。
人里発見の評価が下がるのは残念だが、まあこの先無数の町を訪れるだろうから、何時までも同じ基準で評価がされる筈もない。
今回の件では随分と急成長をしたのだし、ここからはのんびり行くとしよう。
でないと、ただでさえ肉体の性能と中身に差があるのに、性能ばかり急成長されてはとても追いつけないから。
名称:イオ・アガリス
年齢:15(0)
階位:11→14
主職:狩人 副職:忍者
能力値
筋力:C→B 頑健:C 敏捷:C→B 知力:C 魔力:C→B
主職スキル
弓:C 罠:D 気配察知:D→C 動植物知識:D 野外追跡:D
副職スキル
隠身:D→C 軽業:E→D 薬毒耐性:E
その他スキル
短剣:B 魔術:―
大魔術師の加護:EX 番犬の召喚:EX(3)
ステータスとスキルは旅の間に複数回に分けて上昇させたが、最終的にはこんな感じだ。
密偵と言うか、暗殺者染みて来たような気もするが、副職に忍者を選んだ時点で今更である。
見付からず、敵を先に見付ける事の優位をピューサでは思い知ったので、そのスキルを優先して上昇させた。
私がスラムの教会に巣食った夜の教団を排除した後の話だが、スラムを出た私は、定められた場所に用意されていた衛兵に事の完了を告げて宿に戻った。
宿にはセレスの護衛、と言うかランフォード侯爵家の貴族騎士であるコーゼが待っており、布に包んだ宝石の詰まった革袋を手渡される。
流石に数百枚の金貨は重たいだろうからと言う配慮だそうだ。
どう考えても貰い過ぎだが、これを断るなら任官でもして貰わなければ働きに報いられないと侯爵が言ってたらしいので素直に受け取らざるを得ない。
「私としては任官して戴きたいのですけどね。……お嬢様がとても悲しまれてましたよ。私がイオ様と会って来た事を知られたら、一体どれ程に怒られるか……」
憂鬱そうに言うコーゼに、私は思わず笑ってしまう。
まぁ、そうか。
別れを悲しんでくれたのなら、
「何年先になるかはわからない。でも旅が落ち着いたらランフォード侯爵領には遊びに行く。その時までセレスが私を覚えてたら、また話そうって伝えて」
何時かまた、帰って来るのも良いだろう。
その翌朝、私はピューサを旅立った。
『再びグリフォード王国で暗躍しかけた夜の教団を、白狼の異名を持つ一人のハンターが壊滅させた』
何てニュースが飛び交う予定になってるらしいから、その話に追い付かれない様に大急ぎで。
噂を運ぶ隊商よりも早くに移動して国境を越え、更にグリアも踏破してリザリア国へと入ってしまえば、流石に大仰で面倒な扱いを受ける事も無くなるだろうから。
アレから二週間も経ったけど、今日も私は旅路を急ぐ。
私の旅は、まだまだ始まったばかりである。




