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融合世界  作者: らる鳥
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第三領域と先駆者『ファーストプレイヤー:イオ・アガリス』20



 では農夫でなく、ハンターである私なら、罠を壊してしまう、夜明け頃に活動する獣に対してどう対処すれば良いだろうか?

 パッと思い付くのは二通りの方法だ。

 

 一つは破壊された物よりも大型で、頑丈な罠を新たに仕掛け直す事。

 だが頑丈で大型の罠を使うとなれば、当然ながら仕掛ける難易度は高い。

 ましてや一度、脱出したとは言え罠にかかってるのだから、獣の警戒度も高くなっているだろう。

 そしてもう一つは、荒らされた現場から獣の痕跡を追い掛け、棲み処の森に踏み入っても尚追い掛け、発見して狩る事だ。

 勿論かなりの長距離に渡って獣の痕跡を追わねばならないだろうから、こちらも普通に難易度は高かった。


 どちらも難易度の高さは変わらないが、双方にそれぞれメリット、デメリットは存在する。

 前者のメリットは、上手く罠に嵌ってくれさえすれば、捕らえた獣を丸々手に入れられる事。

 森に踏み入って狩った場合は、解体して荷物として持てる分だけしか持ち帰れない。

 罠を破壊出来る獣は、多分それなりに大きいだろう。

 だから森に踏み入って狩る場合は、その大半を諦めねばならない可能性が大きかった。

 故に猟果を求めるならば、罠に頼るか、持ち帰る為の工夫が何か必要だ。


 次に後者のメリットは、何と言っても解決までの早さである。

 罠を仕掛けてもそれに嵌るまでの間は、更に農地が荒らされるだろうから、依頼を出した農家の負担は大きくなってしまう。

 一方森に踏み入った場合は、私の実力と運次第では今日中に解決が可能だ。


 ……そう考えたら、まあ選択の余地はあまりないのかも知れなかった。

 私は金銭も欲しいが、他の町への護衛依頼を受けられるだけの信頼がより欲しい。

 つまりは猟果よりも、依頼を出した農家からの評価の方が重要だろう。

 なら選ぶべき方法は明白である。


 もし仮に、私がアンデッドを物ともせぬ程に強ければ、農地で獣がやって来るのを待ち伏せする手も、猟果も信頼も両方得られる手も使えたのだが……。

 今の私には些か危険が大き過ぎた。

 首を刎ねれば動かなくなるそうだから、短剣を用いれば一体や二体は相手をする事も可能だと思う。

 何せ性能だけで言うなら、身のこなしと短剣を用いた近接戦闘の技は、一流を超えて英雄に近いと評されるランクになっている。

 でも私の実力で対処可能な数しか襲って来ないなんて保証はどこにもない。

 無用な危険を冒しても、誰も褒めてはくれないのだ。




 そんな風な事を考えながら、私は被害者連合、依頼に金を出し合った農家の代表者に、荒らされた農地へと案内された。

 でもそこで、私は少し驚くべき物をその目にする。



『名称:イノシシ科の獣の足跡』

 荒らされた農地に残された足跡を見れば、こんな文字が視界の端に浮かんだ。


『名称:ガリードボアの糞』

 そして同じく、荒らされた農地に残された獣の糞を見れば、こんな文字が視界の端に浮かぶ。


『名称:ガリードボアの足跡』

 すると最初の足跡の文字が、こんな風に変化する。



『名称:ガリードボア

 ミルノーシェ領域北部の森林地帯で稀に見られるイノシシの一種

 非常に欲深で大量の餌を喰らい、体長3m~4m程の巨大な体躯を誇る

 また己の餌場を荒らす者に対して激しい敵意を抱き、空腹を覚えるまでは執拗に攻撃を繰り返す』


 最後に先程の足跡の文字から派生する様に、足跡の持ち主の情報が展開された。

 いや、まあ確かに、その生物に対しての深い知識があったなら、足跡を見て、糞を見て、種の特定も出来るかも知れない。

 動植物知識がそう言う物である事は否定しないが、ちょっとズルくないかなぁと、そんな風にも思ってしまう。

 だって何がズルいって、こうやって対象の物だと確定した足跡を追って行けば、多分難なくガリードボアの所に辿り着けるだろうから。

 実に便利ではあるけれど、恐らくは野外追跡と動植物知識が合わさってこんな事になってるのだろう。




 森までの追跡も、森に入ってからの追跡も、スキルの御蔭で苦労はなかった。

 しかしそれでも、私はどうやら些か運が悪い。

 遠目に、まだこちらに気付かないガリードボアを見て、そう思う。

 ガルム虎の時もそうだったが、ガリードボアも、そう易々と人が出くわす相手ではないそうだ。

 3mを越えて4m近いサイズのイノシシなんて、もう怪物や怪獣って言葉が相応しい相手である。

 あんな巨体の突進に轢かれたら、幾ら依頼人から頑丈な肉体を授かった私でも、多分ひとたまりもない。


 勿論こちらが有利な点も多少はある。

 例えば今なら確実に先手が取れたり、弓で遠距離攻撃が可能な事とか。

 奇襲で四足のうち一本でも潰せれば、ガリードボアの脅威度は大きく低下するだろう。

 でもそれには一撃で確実に足を潰せる攻撃が必要だった。

 

 弓をガリードボアの足に当てる事自体は然程難しくないけれど、それで足が使い物にならないダメージを与えられるかどうかは、首を傾げざる得ない。

 少しでも突進が鈍ってくれれば、回避しながら足を斬り飛ばす、なんて真似も出来るかも知れないが、勿論結構危険な行為だ。


 ……葛藤はあったが、悩んだ時間は短かった。

「悔しいけど、一旦、退こう」

 私はそう呟いて、気配を殺したままに来た道を静かに引き返す。

 ガルム虎の時とは違い、ガリードボアは今即座に狩らずとも、誰かが危険に陥る可能性は低い。

 ガリードボアの再発見は難しくないのだし、確実に狩り切れるだけの用意を持ち込むべきだと、私は考える。

 農地の農作物がもう一日荒らされてしまう農夫には些か申し訳ないが、事情を話して一日準備時間を貰うとしよう。

 



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