第三領域と先駆者『ファーストプレイヤー:イオ・アガリス』19
十日目の朝、目を覚ました私は水差しからカップに水を注ぎ、一息に飲み干した。
夢だけど、夢じゃない、夢を見た。
うぅん、まだ少し混乱してるかも知れない。
もう一杯水を飲もう。
……うん。
纏めると、少し準備をしておく事はあるけれど、今の所は順調だから、私は私の好きにして良い。
と言った感じだろうか?
色々と、大事な事を知れた様にも思う。
だからって私にはどうしようもない様にも、また思う。
でも多分、わざわざ教えてくれたなら、私が知って置く事に意味があるのだ。
「リザルト」
『生存状態で十日目を迎える:達成★
案内人との情報共有:達成★
二つの目標を達成しました
重要な目標が二つ達成されています
前回階位上昇時の繰り越し分と合わせ、階位の上昇が発生します
階位6→7
階位の上昇により能力値のランク上昇が可能です
階位の上昇によりスキルのランク上昇が可能です
能力値を一つお選びください
スキルを一つお選びください
またこの操作は後程ステイタス確認でも実行が可能です』
階位も上昇していたが、何だかサービスされた感が凄い。
或いは、そんなに早く加護の切り替えをさせたかったのだろうか?
名称:イオ・アガリス
年齢:15(0)
階位:6→7
主職:狩人 副職:なし
筋力:D 頑健:D 敏捷:C 知力:D 魔力:E→D
弓:D 短剣:C 罠:E 気配察知:D 動植物知識:E→D 野外追跡:D
大魔術師の加護:EX 番犬の召喚:EX(4)
今回のステイタス更新はこんな感じだ。
昨夜の、夢の中での話から、魔力を伸ばして加護を『大魔術師の加護』に切り替えた。
勿論魔術を自力習得する為である。
他には、罠か動植物知識が選択肢だったが、色々と便利だと判明している動植物知識を選ぶ。
と言っても次の階位上昇では罠を上昇させる心算なので、早いか遅いかの差でしかない。
罠も含めてすべてをD以上にすれば、狩人としては一流以上らしいから、まずはそこが目標だ。
ステイタス更新を終えた後はのんびりと柔軟体操をしていると、宿の娘、メーレが各部屋を回って洗濯物がないかを聞いていたから、汗で汚れた肌着等を預ける。
その際に洗濯代と一緒にチップを渡そうとしたら、
「お茶と焼き菓子、御馳走になりましたし。お買い物したんですよね?」
そんな風に言ってサラリと断られた。
少女ながらに気遣ってくれてるのは何となくわかるが、でも少し寂しい。
かと言って無理に受け取らせるのも違う気がしたので、数日の間は控える事にする。
朝食を受け取るついでに依頼を探すべく、階段を下りて宿の酒場部分へと向かう。
「おはよう、イオ。飯は何時ものか?」
すると声を掛けて来た宿の主人、ジジムの言葉に頷いて、私は壁に貼り付けられた依頼書に目を通して行く。
仕事の内容、必要とされる時間、報酬を見比べて、興味を惹かれた一枚を壁から剥がした。
カウンターに向かえば、丁度良いタイミングで宿の主人が食事を用意してくれていたので、食事代である銅貨三枚と一緒に依頼書を手渡す。
「これか、わかった。後で詳細を説明するから、飯を食い終わったら降りて来い」
ちらりと依頼書に視線をやった宿の主人は、そう言いながら食事の乗ったトレイを渡してくれる。
では自分の部屋に戻って食事を取ったら、今日も一日頑張るとしよう。
さて今日受けた仕事は、害獣駆除。
コフィーナの南側には、町に食料を供給する為の農地が広がっていた。
この町の役割は北からやって来るアンデッドに対する盾だが、食料がなければ当然戦えない。
だが以南の町から食料を運ぶにはコストが掛かるし、武器や防具、傭兵達が呑む酒等、他にも運ぶ必要がある物資は色々とある。
故に比較的戦いで荒らされ難い南側に、食料供給の為の農地があるのだ。
そんな農地を、ここ数週間程、少し離れた森からやって来る獣が毎日食い荒らしていると言う話だった。
森の獣にとって人が作物を育てる農地は、そこら中に美味い餌が転がっている、少しばかり遠出してでも来る価値のある餌場と認識されてしまったのだろう。
当然そんな風に作物を食い荒らされては農家としては堪ったものじゃないから、見張りを立てたり罠を仕掛けたりはしたらしい。
だが見張りもアンデッドに襲われる危険性のある夜は、城壁の中へと戻らねばならず、どうやらその獣は厄介な事に夜明けの時間帯に畑にやって来ている。
アンデッドが襲うのは人型種族だけなので、獣はその時間帯にも活動するのだ。
更に仕掛けた罠にも引っ掛かった痕跡はあるものの、強引に破壊されていた。
そうなると、もう農家の手ではどうにも出来ず、獣に荒らされている辺りの農夫が金を出し合い、ハンターを雇う運びになったのだとか。
まぁ農家からすれば災難以外の何物でもないだろうが、私にとっては有り難い飯の種である。
しかし罠を破壊出来るだけの膂力がある獣ともなれば、下手に農家の見張りが発見出来ない時間帯に畑に来ていたのは、寧ろ不幸中の幸いだろう。




