第三領域と先駆者『ファーストプレイヤー:イオ・アガリス』15
「リザルト」
『魔獣に関しての情報を得る:達成
強敵に勝利:達成
現地住人からの名声(小)を入手:達成
初めての捧げ物:達成
捧げ物:ガルム虎の毛皮
分類:死闘の証
価値:3
四つの目標を達成しました
価値3の捧げ物が行われました
階位の上昇が発生します
階位5→6
階位の上昇により能力値のランク上昇が可能です
階位の上昇によりスキルのランク上昇が可能です
能力値を一つお選びください
スキルを一つお選びください
またこの操作は後程ステイタス確認でも実行が可能です』
宿に帰った私は汚れを落として食事を取った後は泥の様に眠り、目覚めれば翌日の朝だった。
少し寝過ぎた気もするが、立ってみれば自分でも驚く位に身体の調子が良い。
どうやら続いた夜間警備等で溜まっていた疲労が、綺麗に抜けてくれたようだ。
名称:イオ・アガリス
年齢:15(0)
階位:5→6
主職:狩人 副職:なし
筋力:D 頑健:D 敏捷:D→C 知力:D 魔力:E
弓:D 短剣:D→C 罠:E 気配察知:D 動植物知識:E 野外追跡:D
番犬の加護:EX(3→4)
上昇させた能力値は敏捷で、スキルは短剣。
魔力を上げて全てDランクにする事や、役に立つとわかった動植物知識もどうするかと悩みはした。
でも身のこなしと近接戦闘の技こそが、いざと言う時に私の命を直接守ってくれる物だと思う。
それに今日みたいに調子が良ければ、上昇した身体能力にも早めに慣れてくれる事が期待出来る。
……が、それはそれとして今日は仕事は休む心算だ。
私がこの領域にやって来てから、今日で確か八日目の筈。
グリフィード王国に、否、ミルノーシェ領域のどこにも、週休二日なんて言葉はないだろうけれど、何故か私はそれを知ってる。
何故かと言うか、それは勿論依頼人が与えてくれた知識のせいなのだが。
知ってる以上はその基準に従って、今日と明日は仕事をせずに休もうと思う。
ブラックは良くない。
まぁそれに幾つかはやっておきたい事もある。
一つは宿の娘との約束。
焼き菓子の店を彼女に案内して貰う事だった。
と言っても、私が休むと決めたからって、家業を手伝う宿の娘の仕事がなくなる訳じゃない。
宿の娘の休み時間に合わせるか、もしくは数枚の銅貨を宿の主人に渡し、彼女を町の案内として借り受けるかだ。
私としては別にどちらでも良い。
休日がより良い物になるなら、銅貨の数枚位は惜しまなくても良い位には稼いでる心算である。
二つ目は細工師を探す事。
私が倒したガルム虎は、毛皮は依頼人への捧げ物にした。
魂を掬い上げ、身体をくれて、私をこの領域に送ってくれた依頼人への感謝を込めて、最初の獲物はあの人へと捧げたかったから。
しかしまだ私の手元にはガルム虎の牙が、特に大きい物を選んで数本ばかり残ってる。
これを邪魔にならずに身に付けておける物に細工して欲しい。
……となれば良い細工師を紹介して貰う必要があるから、やはり宿の娘はちゃんと案内役として雇った方が良いだろう。
午前中は宿が少し忙しい事は知っている。
客が出た部屋の清掃や、泊り客に頼まれる洗濯物の類があるからだ。
そして昼飯時も忙しい。
酒場付の宿屋は、泊り客のみならず近所の住人にも食堂として利用される。
だから案内を頼むなら、その忙しい時間帯が終わってからが良いだろう。
ならそれまでは、うん、やる事もないし、少し身体を動かしてトレーニングでもしていようか。
「イオさんとデートですね。任せて下さい!」
案内を頼むと、ガッツポーズを取る宿の娘。
いや、何でそんなに気合を入れるのかは知らないけれど、多分違う。
だって流石に、まだ十二、三歳であろう少女とデートをするのは、些か外聞が悪い。
確かに私はこの、大きな桶に満たされた湯を、えっちらおっちら運んで来る働き者の少女を可愛らしく思っているが、下心の類は一切ないのだ。
本当に。
信じる神は居ないから、私の信じる依頼人に誓って。
何かとチップを渡すのも、良い客で居たいと思う気持ちと、働き者の少女に小遣いを渡したいと思う気持ちの半々くらいである。
「違う。デートじゃない」
フルフルと首を横に振ったけれど、宿の娘は笑って私の袖を引く。
そうして、何故か笑いをこらえてる宿の主人に見送られ、私と宿の娘はコフィーナの町を歩き出した。
コフィーナは然程大きな町ではないし、決して豊かでもない。
期待される役割は、北にある旧都から流れて来るアンデッドに対しての盾だ。
この町が盾となるからこそ、ここより南は多少なりとも安全が確保され、ガーデナの様に大きく発展した町が存在し得るのだろう。
謂わば危険な役割を押し付けられているこの町だが、だからこそコフィーナの住人は強い。
脅威が身近にあっても笑顔を絶やさず、助け合って生きている。
故に町の商店街も、豊かとは言えずとも活気に満ちていた。
……のだが、私にとって想定外の誤算が一つ。
そんな笑顔で助け合う、つまりは横の繋がりが強いコフィーナの町を、地元の住人である宿の娘とで歩けば、そこかしこから声を掛けられてしまうのだ。
「あらメーレじゃない。珍しいわね。何か買ってく?」
「メーレちゃん、今パンが焼けた所だよ。お一つどうだい」
「おぉ、メーレちゃん。今晩五人で食いに行くから、ジジムさんに鳥の丸焼きを頼んでおいてくれるかな」
等々。
因みに上から順に、雑貨屋の店番をしていた宿の娘と同年代の少女、パン屋のおじさん、通りすがりの警備隊員だ。
流れの傭兵やハンターも多く訪れる街だから一人の時は然して気にもされなかったが、私に対してではないとは言え、こうも声を掛けられるとどうして良いのかわからずに戸惑ってしまう。
幸い、流れの傭兵やハンターの中には変わり者や孤独を好む者も多いから、町の住人も敢えて私には話しかけて来ないが、それでも好奇に満ちた視線はチラチラと向けられた。
それにしても宿の娘は、どうやらメーレって名前らしい。
恐らくジジムは宿の主人だろう。
でもまあ彼等の名前よりも、私は鳥の丸焼きに興味があります。
一人でも注文出来るのだろうか?
もし複数人でしか注文できないのなら、ベーデ辺りを誘ってみよう。
メーレは私の事を宿の客であると説明し、町の案内中なのだと胸を張る。
良かった。
流石にデート中だとか言われたら、間違いなく気まずいどころじゃなかった筈だ。
説明されてる間、手持無沙汰だった私は、雑貨屋でロープを、パン屋で焼き立てのパンを二つ買う。
警備隊員は元から私の事を知ってたらしく、
「あぁ、あの例の……」
何て風に言うから、お互いに頭を下げて挨拶をしておいた。
一体何があの例のなのだろうか。
パンは、昼飯時は宿で働いていた為、まだ昼食を食べていなかったメーレと私で一つずつ。
二度焼きもしていなければ、小麦粉にライ麦も混ぜてない、おじさんの言葉通りに焼き立ての白パン。
完全に贅沢品の類だが、食べたかったのだから仕方がない。
食べ応えこそは黒パンに劣るが、フワフワと柔らかくて味も良く、パンだけでも美味しく食べられる。




