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リッドは機嫌がいい

「定期報告はじめまーす」


リッドは、鼻歌でも歌いそうなほど気分が良いようだった。


「やけに威勢がいいですね。何かうれしいことでもありましたか」


「黒薔薇の調査が終わって王子の調査してたら俺好みの年上美人未亡人と出会っていい感じで毎日楽しい」


恋愛は、自由でリッドが好きならば応援する気持ちもある。しかしリッドという男は、この手の話になるととても長いのでグラソンは内心ため息をついた。


「そんなことですか。それ以上は、いいから報告なさい」


「そんなことってひどいな。まぁ、若様だししょうがないか。王子について調べたらアラゴナイト伯爵が出てきました。なんでも黒薔薇を養女にするとか」


「確か軍部系統の家ですね。伯爵なら王族への嫁ぎ元として及第点です」


オプシディアン男爵家は、王族に嫁ぎ正妃とするなら家格が低い。正妃とするなら最低伯爵の家でなければすべて側室になる。


「それでですね。若様の騒ぎは、アラゴナイト伯爵が主張したみたいっすよ。隣国と戦争が終結し10年、その友好の証としての道路建設を進めるべきじゃないかって」


「ついでにまだ婚約者のいない私に隣国の貴族と"友好"の結婚をすれば安泰…と言った所でしょうね。浅はかです。外交でカードにするならお互いの王家でなければ象徴としての意味が弱い」


グラソンは、切られても痛くない同士の婚姻など簡単に切れてしまうのが目に見えた。


「まぁ、若様顔と家格はいいから餌にするには充分っちゃ充分っすね」


「私はネージュを可愛がって、公爵夫人としての義務を果たす人でなければ結婚しません」


「そこで公爵うんぬんよりもネージュちゃんについてだすのが若様らしいや」


「それで他には」


「これは親父からの連絡なんですがね。ブリュイヤールさまとネージュちゃん来月こっちに戻って来るってよ」


「記憶が戻ったのか!?」


グラソンは、椅子から立ち上がった途端に机に体をしたたかに打ちつけたに関わらず、痛そうな様子がない。


「たぶん違うんじゃないかな。そんな重要なこと書き忘れるとは思えないし。でも久々に会えるしうれしいだろ」


「嬉しいが…いや戻ってくる前になんとかするか。よしアラゴナイト伯爵について調べろ、王子に関しても継続する。絶対にボロが出る」


関係者が増えればそれだけ気にするべき存在が増えるということになる。

アラゴナイト伯爵は、一度口を滑らせているのでさらに気をつけなければ。


「それにしてもうちと対抗するならせめて侯爵へ養子にだせばよかったんじゃね」


「侯爵家に王子と婚姻を結ぶつもりがないからな。5大侯爵は、軍事・経済・政治・農業・技術それぞれに特化している。

現在軍部の大将はガーネット侯爵、宰相はエメラルド侯爵の者だろう。商業ギルドの長はアマゾナイト侯爵がしていて農業大臣がアンバー侯爵の子息」


「そういえば芸術ギルドの長がアメジスト侯爵令嬢だ。何度か会ったことがある」


「それぞれ特化させることで国力の調整を行っているんです。男爵令嬢の教育や根回しなんて真似するより更なる発展に力をいれたい。次期王妃の友人くらいはなりたいかもしれないですね。オパール公爵家は王国の影として耳や目、手足になり。王族が絶えれば影ではなくなる」


それは王国が始まってからずっと決まっていた役目だった。時には王になる候補として英才教育を受けることになる。シュバルファンが生まれるまで王位継承権一位はグラソンだったので必死に学んだものだった。


「だから王位第二位ってことっすか。そういえばネージュちゃんは第三位っすね」


「本家たる王家の血筋が一人しかいないのであの馬鹿王子を亡きものにする反意はないという意思表示です。それとネージュは、好いてましたから叶えるためでもあります」


「なるほど、でもなんであんな駄目男にネージュちゃん引っかかっちゃったんだろうな…」


「昔はあれで神童と言われてましたからね。保険や奨学金など発案したのは馬鹿王子です。それらのおかげで良い人材の確保がしやすくなりました」


「あぁ、あれか。確かにあれは最初こそ問題だらけでしたが最近は、正しく機能してるっすね。今回の洪水でだいぶ役にたったようっすよね。神童って言いたくなるなソレ」


リッドは、グラソンの話に腕を組んで頷いていた。


「でもそれ以来目立った功績がありません。学園での成績も中の上です。まぁ、学園での成績だけで能力は正確に測れませんので参考程度です」


「俺は赤点よりちょい上組だったからな~。中の上も羨ましいけど」


「まともに勉強しようとしないからです。なんでリッドの勉強をみてしまったんでしょうね……。先取り勉強していましたからなんとかなりましたが」


「若様結局優しいからな。それじゃあ、優しい若様のために頑張りますわ」


最後まで陽気な態度で帰っていくリッドにグラソンは疲れを覚えながらもネージュが帰ってくるのを楽しみにしていた。

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