ローズは吐露する
長らくお待たせしました。
「ローズ、夏の休暇が終わってからなんで会いにきてくれなかったの?」
「それは、その病気で休まれているオパール様に対して悪いことをしていると思ったので、殿下と距離を置いた方がいいと思ったのです」
ローズは、シュバルファン殿下に半分は本当で半分は嘘の内容を答える。
夏休みの間にジャンやリッド、セルヴォを通じてオパール公爵家について情報収集したもののめぼしい情報を得られなかった。
ネージュが物語の序盤でいなくなるような重大な出来事があったはずだ。
「ネージュのことは僕も心配だよ。だから出来る限りのことをしている。ローズが気に病む必要はないよ」
「本当にそうでしょうか。オパール様が体調不良になったのは、私のせいではないのですか。シュバルファン殿下ならご存じではないですか」
「僕も詳しくオパールのことを知らなくてね。数日前にオパール公爵領へ母上が行かれたので近いうちに様子が聞けると思うよ」
「はい」
ローズは、王妃が直接会いに行っていることに驚いた。確かに王族が避暑に王都を離れることがあるが行き先は、大抵王族直轄地である。
「ところでローズ、新年祭を僕と一緒に出て欲しいんだ」
「……」
新年祭にシュバルファン王子と出席するということは、完全に王子ルートである。ハーレムルートでも王子たちと登場することになる。しかし冷静に考えれば、さすがに公式行事で婚約者でもない令嬢を伴うのはおかしい。
「シュバルファン殿下、お願いしたいことがあります」
「どうしたの君からお願いなんて珍しいね」
ローズの真剣さが伝わっていないのかとても軽い調子で返される。
「ネージュ様との婚約を新年祭の前に解消して欲しいのです」
「僕と早く婚約したいってことかな」
「婚約したいと思います。でも一番の理由は、ネージュ様に対して配慮していないからです。私は、シュバルファン殿下と一緒にいたいです。でもネージュ様との婚約は、国として一人の女性としてちゃんとするべきだと思ったんです」
これがローズとして、ネージュに出来ることだと思う。誇り高いネージュが、ローズからの施しを受けるわけがない。だから王子が言い出す必要があった。
「君は、そう思ってるんだね。でもそんなこと意味ない。僕は君がいい、絶対にネージュが婚約者にならないように徹底的に潰す」
「シュバルファン殿下……?」
いままでの笑顔が全く異なるものに見えてきた。足が後ろへと動いたと気がついたのは壁に背が当たってからだった。
「ローズ、君は僕が好きなんでしょう? 僕の言うとおりにすれば一緒にいられるよ」
「でも!」
「君にそういうことを吹き込んだのは誰? セルヴォは、脳筋だからそういうの気にしないし。商人が貴族に対して意見なんて言わないし。グラソンかな。オパール家は余計なことしかしないな。ローズのことは俺が守るよ。僕は、やることが出来たから城に戻るよ」
ローズの手をとり手にキスをする様は、いつもと変わらないのにローズは、背筋に冷や汗をかいていた。
「どうしよう……私はただ」
王子の協力を得られなかったローズには、もうどうしようもなかった。




