ネージュはお祝いをする
遅れましたが本日分です!
「これお嬢様に似合いそうですわね」
セッティは、誕生日にもらった休みで町に出て来ていた。領主の館から馬車で1時間程度の場所にあり、オパール公爵領で一番賑わっている。
「誕生日といっても普段の休日と変わらないですわね」
雑貨やスイーツ巡りをして時間を潰していく。だがどこに行ってもネージュのことを思いだし大丈夫だろうかと思ってしまう。
「びっくりさせるとわかっていてもとても楽しいわね。そろそろ帰ろうかしら」
「お帰りなさい! セッティ」
セッティが使用人用の扉から屋敷に戻ると笑顔のネージュに出迎えられた。
「お嬢様がお出迎えくださるなんて珍しいですわね」
セッティは、ネージュの可愛らしい計画を知っていてあえて知らないふりをした。
「だってセッティの誕生日だもの! おめでとう」
「ありがとうございます。お嬢様」
ネージュがセッティへ花束を差し出し受け取った。
「セッティ帰ったんだね。早くこっちにおいで」
メイド長が手招きしているのでセッティは、ネージュと共に厨房へ行くとご馳走があった。
「料理はうちの人からだけどケーキはお嬢様が作ったんだよ」
「お嬢様がですか!?」
「ネージュ頑張ってこねこねしてギュッギュして塗り塗りした!」
ネージュが作ったであろうケーキは、タルト・オン・シトロンだった。
レモンクリームとタルトの組み合わせのケーキで、レモンの爽やかな風味とサクサクしたタルトがおいしいケーキだ。
「ネージュね、頑張って作ったの。セッティいつもネージュのこと頑張ってくれるからありがとー! おめでとー! って」
「お嬢様……うれしいです」
「えへへ」
「お嬢様が良ければ一緒に食べませんか。一緒に食べればもっとおいしくなりますから」
「一緒に食べる! あとね、もう1つプレゼント」
カードにはいびつな文字だがネージュ着せ替え券と書いてあった。たぶんネージュが書いたのだろうと微笑ましく思う。
しかしネージュでも読める文字が書けるのにセルヴォの文字はまったく読めないのが不思議だった。
「ネージュ着せかえ券ですか。お上手に書かれましたね」
「りっくんがね。セッティならこれがうれしいって言ってたの」
「兄が……」
セッティは、微笑みながらも内心大歓喜していた。馬鹿な兄だがこういうフォローをさせれば一番だと。
「お手本の文字は、書いてもらったけど。セッティにあげたの字も絵もネージュ書いたの。セッティいつも一緒にいてくれてありがとー」
「お嬢様! 一生ついていきます!」
優しい主が傷つくことがないように徹底的に動こうと心に刻んだ。