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ローズは商人を見つめる

敏腕商人ポール商会のジャンは、日に焼けた褐色の肌に赤茶の髪、そして南の海のような澄んだ緑の瞳のワイルドなイケメンだ。

ローズとしては、二番目の推しであり現在攻略中の相手である。

ジャンは、ハーフでこの国では珍しい見た目をしている。そのためお客さんが萎縮して商売にならないと悩んでいた。

それまでは行商人として諸国を周り言葉や風習を学び、珍しい品を売ってまわっていた。


たまたまジャンの悩みを知ったローズが笑顔講習会を始めた。どんな時でも笑顔は接客業の基本だ。前世のバイト経験が生きる。顔がいいのだから抜群の笑顔で解決出来る。


「こうか」


「笑顔が固いです。口だけじゃなく目元も意識してください」


「目……? 目もなのか」


「もちろん、目は口ほどに物をいうんですよ」


ゲームでは、こんな話ではなかったがここは現実だ。ゲームのようにセリフや行動が目の前に出て選ぶわけではない。


「その言葉東方の国で聞いたな」


「たまたま……その方面について書かれた本を読みまして……」


「東方見聞録か。学園の図書館なら確かにありそうだ」


「それより笑顔の練習です! 楽しいことや嬉しいことを思い浮かべましょう」


「そう言われてもな。でもローズと話すのは楽しいな」


突然のジャンの苦笑とその内容に顔が熱い。真っ先に出てくる楽しいことがローズと話すことというのが殺し文句すぎる。


「どうした」


だがすぐに真顔に戻ってしまいさっきの表情の写真を撮りたかったと後悔した。


「今のいい笑顔だったと思います」


「ローズの前だと自然に笑えるんだな俺」


「お客さんの前で出来なきゃ駄目ですよ」


そのための笑顔講習会だがローズは、この気安い穏やかな時間が終わって欲しくないと思ってしまう。


「だから教えてくれるんだろ。俺にサイコーの笑顔」


肘をついてローズを見るジャンがかっこよくて困る。なぜここは自室ではないのだろうか、すごくベッドで身悶えしたい。


「どうした」


「そろそろ帰る時間なので次に持ち越しで。次までに楽しいことと嬉しいこと考えてくださいね」


「わかったよ。先生。またよろしくお願いします」


「うむ、任せなさい」


ローズが偉そうな態度をするとお互いに爆笑した。

たぶんジャンに笑顔の練習は、もういらないのだがソレを伝えるのに躊躇するローズなのであった。



「さっきの子が本命か。かわいいこだね」


「親父、お袋」


ジャンの親であるポール商会頭取とその妻トリーシャがニヤニヤした顔で覗いていた。


「エガオのレンシュイラナイ。あうコージツホシいダケ」


「母さんの言うとおりだぞ。男ならそんなチャチな約束じゃなくデートの約束をしろ」


「なにいってんだ。ローズと俺とじゃ身分も歳も違う」


ジャンの顔が苦しげに歪む。


「ユイノーキンイパイナラキットイイね。デモハートは、お金でカイケツデキナイ」


「母さんの言うとおりだ。お前があの子を奥さんにと望むならあの子の家が納得するくらいの結納金で。権力はないが商人なら財力で勝負だ」


「ラザールカッコいいね!」


この夫婦は、結婚して30年経ったのにも関わらずうざいほど仲がよかった。


「ジャンには苦労かけたから幸せになれる相手と一緒になってほしいと思うんだ」


「親父……」


「何より孫が見たいがね。女の子がいいな」


「ナラワタシオバーチャマね」


ジャンは、もうすでに孫の心配をしている両親に溜め息をついた。

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