オパール・フォン・ネージュ3さいです!
「あなただぁれ。ネージュに何かごよう?」
「えっ、ネージュさま!?」
それはオパール公爵家で突然起こった。
オパール公爵令嬢ネージュが記憶喪失になったのだった。
前の日は、少し体調不良気味になっており早めに就寝し朝起きたら3歳までの記憶しかなかった。
「これじゃあ学園に通わせられないぞ。それに王家との婚姻も危うい。記憶が戻った時に自分の粗相のせいで婚姻が流れたと解ればネージュは……可哀想に」
「しかし父上、3歳のネージュを学園に通わせるのは不可能です。礼儀作法や読み書き、計算も出来ていないのですよ。記憶が戻るまで病気として休学させましょう」
「それしかあるまい」
公爵とその長男グラソンは、溜め息をついた。それを近くで見ていたネージュは、ニコニコしながら二人を見ている。
「おとうさま! おにいさま! 暗い顔をしてどうしたの? 痛いならネージュがいたいいたいとんでけしてあげる」
「あー、もうっネージュ可愛いね!」
グラソンがネージュを抱き締めると、ネージュも抱き締め返す。
「おにいさま! 大好き」
「おとうさまは?」
「おとうさまも大好き!」
屈託なく笑うその顔は、かつて王妃教育を受ける前にはよく見たものだった。常に冷静に品よくを心がけるべき王妃として教育され最近では見られなくなっていた。
「父上、いっそこのまま記憶がないままでも……」
「考えないでもないが、どのネージュもネージュなのだから、記憶が戻って欲しいよ私は」
「旦那さま、恐れながらお耳に入れたいことがございます」
「なんだセッティ」
ネージュの専属侍女セッティは、緊張した面持ちで公爵を見ていた。
「はい、最近学園ではお嬢様が特定の令嬢に対して当たりが強いと噂されております。実際にお嬢様と噂の令嬢が会っているのを見ていましたが令嬢として当然の行動しかしておりません」
セッティは、そこで一旦区切り、視線を公爵達から外して下を向いた。
「ですが………お嬢様の悪い噂が流れております故に、学園を長期休学して噂の沈静化を待つのも手かと進言したいと思っておりました」
「あの噂か、王宮でもその話題が多い。しかもあの馬鹿王子が娘の意見を聞かずに令嬢の肩を持ち囲っているとも聞いている。私は、ネージュが幸せならばと王家との婚約を認めたというのに」
公爵は、腹立たしげに眉間に皺を寄せる。
「父上、私も王都にいるより領地に行ってもらい記憶が戻るのを待った方がいいと思います」
「りょうちってゴートじいちゃんのいるところ? 行きたい! 今度会ったら花冠の作り方教えてくれるって」
ネージュは、ニコニコとご機嫌だった。
「そうと決まればセッティ。お前は、ネージュについて領地に向かえ」
「はい」
「グラソンは、王宮内で噂を流すものを探せ。噂がネージュの悪い方面しかないのが気になる」
「はっ、父上」