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そして俺は、最後の授業が終わるたびに先輩を迎えに行く。
最初は「名前を覚えてもらいたいのでー。」 という理由で。
「もう覚えた。」 と言われてからは「これが後輩の務めってもんです!」 と無理やり。
「無理するな。」 と言われてからは「もう体が慣れちゃいましたからー。」 という具合で。
「来るな」 と言われてからは「善処しまーす。」 と流して。
先輩はなんとも想ってないみたいだけど。
半年も会えなかった俺の焦りようは半端無くて。
半年間会えなかった分、1秒でも長く、先輩の側にいたいがために・・・
「―――あがりましたぁっ!!」
吸い込んだ息を一気に吐き出しながらそう叫ぶと、先輩は廊下とは反対側の窓際の席に座っていた。
声に反応した先輩は、肩口まで流した黒に近い茶色の髪を左手でいじりながら、こっちに目を向けた。
いつもなら先輩は右手を挙げて返してくれるけど、今日はなかった。
かわりに髪をいじっていた左手を、小さく溜め息をつきながら顎に当てた。
ジトーッとした目でこちらを睨んでくる。
と思っていると、ふいっと窓の外に目をやって。
実はこちらに向けられた視線は、先輩のものだけじゃなくて。
先輩の前の席の人、後ろの席の人、隣の席の人、その隣の席の人。
人の輪はどんどん大きくなって。
教室内にいらっしゃるすべての方々が、俺を見ておられました。
2、3秒の沈黙の後、教壇にいた先生からお言葉。
「え、えっと、藤堂君? まだチャイム鳴ってない・・・よ?」
「・・・で、ですよねーっ・・・は、はは・・・」
その直後に鳴るチャイム。
途端に教室中に笑いの渦が起こった。
窓の外を向いていた先輩は、さっきよりも大きな溜め息をつきながらこっちを向いて。
俺と目が合った途端、ふっと笑った。
その顔に、思わずどきっとする。
(2ヶ月しか経ってないのに、俺、早くも限界かもしれないですよ先輩・・・)
教科書類を腕に抱えて、ゆっくりと近づいてくる先輩を見ながらそんなことを考えていると、
「ばか。」
先輩の手から地学の教科書が放たれ、俺の顔に何の迷いもなく命中する。
「痛っ! 何すんですかーっ」
「お前が悪いんだろ。 これ全部持て。」
と言って、教科書の類を俺の腕に乗っける。 結構な重さ・・・
「ええー、ちょーせんぱーい。 許してくださいってー」
「うるさい。 早く歩け。」
そう言って鞄を肩にかけ、先を行く先輩。
俺は先輩の教科書類が腕に乗った反動で肩から落ちそうになっていた鞄を担ぎなおし、
先輩の後を追いかける。
そしたら先輩が顔だけちょっとこっちに向けて立ち止まって。
「そうだ。」
「はい?」
「出迎え、ご苦労。」
と言ってまた前を向いて歩き出す。
その言葉に、笑みを我慢することができなくて、ぷっと吹いてから。
「いえいえー」
俺は先輩の後ろにしっかりと付いていく。




