表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/7

  2





初めて春原先輩に会ったのは、俺が中学3年生の時。



ここ、藍川高校の秋期オープンスクールに来た時だった。



当時の学力じゃ正直厳しい学校だったから、まったく興味が無かったけれど、



小学生の時からいっしょの涼に誘われたこともあって、とりあえず行ってみた。




全体説明会が終わり、涼と一緒に部活動見学をしていた時だった。



唯一興味があった合唱部を見学し終えていた俺は、相当とぼけた顔をしていたのか、



当時2年生、現在3年の部長兼主将の進藤しんどう先輩に声をかけられた。




「弓道部が今練習してるんだけど、見ていかない?」




だるさが最高潮に達していたけれど、涼に「行ってみようよ」と言われたので、



とりあえず見に行くことにした。




結果、これが最高にいい判断だった。




道場の中には、当時1年生、現在2年生の方々が・・・何人いたっけ・・・。



とりあえず練習していた。




その中で、一番後ろで弓を引いていた人。



背は高くないけれど、なんかよくわからない不思議な感じがする人。



他に何人も人がいるのに、なぜかその人だけに目が行った。




最初はたぶん、好奇心から。



その人が弓を引分け、会に入っていくうちに、だんだん体が熱くなって。



矢を放って、ピシッと決めたあの姿勢を見た瞬間に、心臓がばくばく言い出した。



冷静になってる今じゃ、その気持ちがなんていうのかわかるけれど、



なにがなんだかわけがわからない状態だったその時の俺は、何も考えることなく、



引き終わったその人に向かって走って行き、先輩の右手をゆがけの上から握り締めて言った。



それも大声で。




「めっちゃ・・・カッコよかったですっ!!」




ちょっと間が開いたのは言葉選びのため。



「カッコよかった」 と言うつもりではあったけれど、その人の顔を正面から見た瞬間に、



「あ、やっべ、めっちゃかわいいっ!」 と想ってしまったから、できた間。



さすがに「かわいかったですっ!!」 とは言えない。




なにせその人は、男の子だから。




その人はきょとんとした様子で俺を見上げ、そして言った。




「・・・そっか。」



「あ、お、俺、藤堂とうどう 雀人って言います! 先輩は!?」



「・・・春原。」



「下は??」



「・・・裕紀。 春原 裕紀。」



「春原 裕紀先輩ですね! お、俺、今の学力じゃちょっと厳しいかもしれないけど、



カラオケとか、ボウリングとか、女の子とか、全部我慢して勉強して、



そんで、絶対この学校に入って、



弓道部に入りますからっ! 後半年待っててくださいね!」



「・・・ああ。」



「絶対来ますからっ! 忘れな・・・ちょっ、涼、引っ張るなってっ」



「はいはーいうるさーいかえるよーおさわがせしましたーさよーならー。」




劇的な出会いだった。



何人か付き合いを持ったことはあったけれど、春原先輩ほどに焦がれたことはなかった。



当時、春原先輩に彼女がいたのか、狙ってる人がいるのか、



そこまで考えることができなかった俺は、



入学までの後半年に、ずっと焦りを感じていた。




あの宣言通り、俺は本当に遊ぶことをやめ、一心不乱、無我夢中で勉強した。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ