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91、カオス



 とりあえず厨房で暴れられても困るので、調理中のマル君を除いて全員テーブルについてもらうことにした。

 私とハロルドさんのレストランテチームと、梓さんとアリスちゃん、アデルさんの王宮チームに分かれて着席する。

 事の顛末に興味津々な梓さんとアリスちゃん、ハロルドさんの傍に行きたくてウズウズしていそうなアデルさん、そして顔面蒼白で机に突っ伏しているハロルドさん。大分カオスな空間だけれど、さっきよりはマシだ。

 私は咳払いを零して、ぐるりを周囲を見渡した。


「ではまず、マル君の悪戯における誤解について私からお話させていただく――形でいいですかね? ハロルドさん」

「お願いするよ、リン。でもさぁ、マル君ってば本当に酷くない? 僕の立つ瀬がなくなっちゃうじゃん」

「自業自得だと思いますけどね」

「えー、そんなことないってば」


 むっと頬を膨らませるハロルドさん。

 いくら顔が良くても成人男性のそれはキツイです。

 誤解を解かなければという気持ちが急速にしぼんでいく。しかし、彼はレストランテ・ハロルドの店長。いわばこの店のトップ。男を無理やりベッドに引きずり込むリーダーがいる店だと思われたくはない。

 私は重い溜息を吐いた後、口を開いた。


「ええと、酷い勘違いが起きているようなので、これ以上面倒くさくならないうちに私から弁明させてください。マル君とハロルドさんはただの親友同士で、みなさんが思っているような関係ではないです。一緒に暮らしている私が言うのだから間違いありません」

「そうなの? 残念」


 そう呟いて目を伏せる有栖ちゃん。

 どうして残念なのかは聞かないでおきます。


「でも一緒には寝ているんでしょう? ギルティ?」


 ギルティって何。一緒に寝ていても罪にはならないですよ梓さん。

 でもさすがだ。痛いところをついてくる。これに関しては、私が言葉を尽くすより本人たちに語ってもらうのが一番なんだけれど――私はマル君に視線を投げた。すると彼は仕方ないとばかりに火を止めて厨房から出てきてくれた。

 察しが良くて助かります。


「まったく。普段はこんなサービスはしてやらんが、今日だけ特別だぞ。順番に並べ」

「え? マル君? 一体何を――」

「サービスと言っただろう」


 言うが早いか彼は黒銀色のふさふさとした尻尾を出した。なるほど。実践が一番と言うわけですか。マル君なりに誤解を解いてあげようという気持ちはあるらしい。なんだかんだお優しい魔族様だ。

 ハロルドさんはマル君の尻尾を安眠枕として頼りにしている。本当にふわふわで手触りも最高なので、触れてみればわかるという考えなのだろう。


 ただ、私は失念していた。

 情報量の差という、とても重要なことを。


「え、尻尾!? この世界、獣人もいるんだ」

「獣人? なんだそれは。というか、お前まさか!」

「いないの? じゃあ尻尾は店長さんの趣味? えーっ、淡白に見えて自分色に染めたがるタイプなんだ! 情熱的で良いと思います! とっても!」


 目を輝かせる有栖ちゃん。反対にアデルさんは驚きに目を見開いている。

 マル君の正体を知っているのは私とハロルドさん、梓さんのみ。

 アデルさんはさすが第二騎士団長だけあって彼の正体に気付いただろうけど、有栖ちゃんはなんというか、凄まじい脳内変換が行われた結果、大事故が起きている。


「ぜんっぜん良くないよ!? 僕、束縛しないタイプだし!」

「ははは!」

「笑ってないで説明しろよマル君! 僕の威厳が複雑骨折しちゃってるだろ!」

「威厳? 元からないだろう?」

「酷い!」

「褒め言葉だ」


 ハロルドさんの抗議など綺麗に無視して、聖女様二人をおいでと手招きするマル君。梓さんも有栖ちゃんも不思議そうに近づいたのだが、彼の尻尾に触れた瞬間、秒で陥落した。

 ふにゃふにゃと膝をつく二人。そして。


「せ、聖女―――!?」


 店の中に木霊するアデルさんの叫び声。

 カオス再びである。


「なぁにこれぇ、すごぉい。ふわっふわでさらっさら。気持ちいい……」

「ブラッシングは念入りにしている」

「あー……これはいいわ。安眠できそう。なるほどこういうことねぇ」

「ああ。あいつが抱きしめていたのは俺の尻尾だ」


 案外まともにネタ晴らしをしてくれるマル君だが、二人の綺麗な女性を地面に侍らせているので完全にヤバい図だ。なんだこれ。私はどうすればいいの。


「お前、ハロルド団長だけでは飽き足らず、聖女たちまでも!!」


 アデルさんはアデルさんで、何を言っているの。

 助けてジークフリードさん。この際ライフォードさんでもいいです。ツッコミ役が足りない。圧倒的に足りないです。

 

随分長い間お待たせしておりました。

お知らせも兼ねて、今回久しぶりに更新いたしました。


お知らせとは書籍版「まきこまれ料理番の異世界ごはん」がコミカライズされます!

本日よりフロースコミック様で連載開始です!


このまま下へスクロールするとコミカライズの案内、

また、該当ページへと飛べるようにいたしましたので、

ぜひよろしくお願いいたします!


また節目節目で……とは思うので、

頻繁には更新できませんが、よろしくお願いいたします。

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コミカライズ連載中!!
書籍版「まきこまれ料理番の異世界ごはん」のコミカライズが
フロースコミックさんで連載開始です!

○コミカライズページ○

料理番コミカライズ
ARATA先生の手で描かれる料理番のキャラたちはとても魅力的で
本当に素敵なコミカライズとなっております!
ぜひお読みくださいませ!
詳しくは活動報告などをご確認いただければ幸いです。
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