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1、召喚



 それは突然の出来事だった。



 今年の夏は稀にみる猛暑。

 暑さに弱い私、鏑木凛(かぶらぎ りん)は大変参っていた。

 唯でさえ身体が火照って頭がぼぅとする中、水分補給もままならぬくらい走り回り、怒鳴りたいだけだろうクレーマーの相手をし、くたくたになって帰路につく毎日。上司は自分の事で精一杯らしく、仕事量は増えはしても減りはしない。


 しかもこのご時世に節電のためとか理由をつけて、少し涼しいくらいのクーラー設定。

 常に動いているこちらからしたら、たまったものではない。

 

 来年も猛暑だったら間違いなく死ぬ。私はそう確信していた。

 そう、来年。

 今年だけならば乗り越えられると思っていた。今考えると何と浅はかだったのだろう。



 ある日の仕事帰り。

 私は唯一の憩いの場である自宅へ向かって歩いていた。

 信号が赤から青に変わったので歩きはじめる。その時、もともと過労ぎみだった私の身体がついに限界を迎えたらしい。

 視界がぶれ、ふぅと意識が遠くなっていく感覚と共に、立っていられなくなる。


 まずい。

 何とか踏ん張って倒れ込むまではいかなかったけれど、しゃがんだまま身体が動かない。信号が変わる前に何とかしなければ。

 しかし運が悪いことに右側から迫ってくる車があった。どう考えても私を認識しているようには見えない速度だ。そもそも赤信号見えてますか。見えてませんよね。


 ああ、死ぬわ。間違いなく。

 スローモーションのように近づいてくる車を視認しながら目を閉じる。ヘッドライトが眩しかった。


 もういいや。

 死ぬのが怖い――と思うよりも先に、楽になれるんじゃないかって思いの方が強かった。その時点で私はもう駄目だったのだ。


 車と接触するまであと数センチ。私は死を覚悟した。

 

 けれども、私に訪れたのは安らかな暗闇ではなく、ふわりと身体が宙に浮く感覚だった。

 慌てて目を開くと、車どころか周囲の全ては時が止まったように動かなくて、足元からは謎の白い光が溢れだしていた。

 

 「なんなの、これ……!」

 

 怪奇現象もかくやな状況。

 だんだんと周囲が白い光で覆われていく。ヘッドライトなんて比にならないほど眩しい。もう目を開けている事すら叶わなかった。私は覚悟を決めて目を閉じる。

 その後、何が起こったのかは分からない。ただ、吸い寄せられているような力は感じた。

 

 こうなったらどうにでもなれよ。

 私は流れに身を任せ、全身の力を抜く。そして意識を手放した。

 

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