28話
ロフト視点でございま酢
一方その頃、僕もまた、襲撃を受けていました。いえ、こちらが本命なのでしょう、敵の数がかなり多いです。でもそれも当然だと思います。狙いは術姫イザベラ姫でしょうから。
昨日の夜寝る直前にゴリアテ師匠から忠告を受けましたが、まさかここまでタイムリーだとは。遠くで戦闘音がします。多分師匠たちでしょう。と言うことは援軍は望めない。僕しか彼女を守れない。
「くっ、姫様を、やらせはしない!」
敵の数は17人。多い。それに練度も高いです。我が国の騎士より少し弱いくらいでしょうが、人数が多すぎる。それに、戦闘には加わっていませんが、明らかに他とは違うオーラを放つ人がいます。彼が入ってくると私一人では厳しい!
「姫様!絶対に私より前には出ないでください!」
「う、うん。」
何故だかわからないが、姫は魔法が使えません。それにハスミン殿はテントで爆睡中。絶体絶命の状態。
今、この三日間の鍛錬によって向上した能力によってなんとか保っている状態です。
「意外としぶといな。実力を見誤ったか?だが、時間の問題だな。攻め続けろ。」
襲撃者のリーダーらしき人間がそう言うと、敵の攻めがさらに厳しくなりました。
本当に厳しい!だが、姫様をやらせるわけにはいかない!!
この人を守ることこそ僕の存在意義なんだ!
やらせはしない!!
「うおおおおおおお!」
前から飛んでくる弓矢を叩き落とし、それに合わせて左右から突っ込んでくる二人に一閃。防御されましたが、弾き飛ばしました。
次に後ろから迫っているダガーを姫様を抱えることで避けます。
「ロフト!?こんな時に何をっ!」
姫様が何かいってますが、気にしていられません。
ダガーの後に斧使いが攻めて来ます。
その斧の柄を蹴り反動で後ろに飛びつつ避けます。腕の中で姫さまが叫んでいますが、気が抜けないので静かにしていただきたいです。
三日間ゴリアテ師匠達の特訓を受けていて本当に良かった。ほんと、特訓というよりイジメなんじゃないかと何度も思ったけど、ここまで動けるのは彼らのおかげとしか言えません。
魔物ホームラン競争に、地獄の筋力トレーニング。
ユックリーンさんの奇襲を防げとかいう無茶なこと。
ハスミンさんが飛ばしてくる魔法をひたすら切り消すとか。
キオさんは何もしてこなかったけど時々とんでもない殺気や悪寒がするから油断できなかった…
「それに比べればこんなもの、生ぬるい!!」
おっと、思わず声に出てしまいました。
私の言葉を聞いて腕の中の姫様はポカンとしています。
場が静かになった中、襲撃者のリーダーが口を開きます。
「ほう、生温い、か。ならば俺も行かせてもらおう。」
げ、あの人をやる気にさせてしまった!やらかしです!
ヤバイヤバイヤバイ!けど口に出てしまった言葉はもう戻って来ません。
やるしかないんですね!はい、耐えます。守り切って見せましょう!!
姫様を下ろし、奴と対峙します。
「俺はリロン、お前の名前は?」
「ロフト・ペイン。」
「ロフトか。完全にノーマークだった。ただの雑魚と思っていたが存外にやるじゃないか。」
「敵に褒められても嬉しくありません。」
「そうか。だが、任務なんでな。術姫の首、貰い受ける。」
「やらせるわけないです。」
「行くぞ。」
リロンは、ダガーを手に持ち、こちらに仕掛けてきます。ダガーの表面には毒らしきものが塗られています。油断できません。少しでも切られれば、毒が体を周り、姫さまを守りきることは不可能となるでしょう。
リロンは体制を低くしたまま、ダガーを振ってきました。その動きは無駄がなく、かなり素早いです。それに位置が低いので、私の剣より小回りの効くダガーは避けにくいです。
それに、下に意識を割きすぎていると足のバネを生かし、首や腕を狙ったりなど、芸が細かく、翻弄されてしまいます。
剣で受けたり、鎧のある場所で受け、毒が回らぬように対応しましたが、リロンの動きはさすがの隊長格、速い。
見えてはいますが、対応し切れなくなってきました。
「俺にばっかり構っていていいのか?」
「キャァ!」
その時、姫様の悲鳴が聞こえました。
「何!?」
姫様!
「貰ったァ!」
意識がそれた。その時、リロンの一撃を貰ってしまいました。
場所は右膝の裏。関節部の鎧のない場所。
深々と切られてしまったため、右脚はもう使いものにならない。
皮肉にもお父さんと同じようになってしまいました。
「くゥ、卑怯な。」
「なんとでも言うがいい。」
他の襲撃者たちに取り押さえられた姫様が視界に入ります。リロンに集中しすぎてしまいました。
「ロフトっ!!」
姫様の悲痛な叫びが私の胸に刺さります。
このまま、僕は彼女を失うのでしょうか。
僕の光。弱気な僕を助けてくれる姫様。こんなところで、殺されていい人ではない!
「やれっ!」
姫様を取り押さえている男たちへリネンの指示が飛びます。このままでは姫様が殺されてしまう!
その時、脳内にゴリアテ師匠から言われたセリフが頭に浮かびました。
[諦めるなどクズのすることだ。守護者たる者何があっても守り切れ。病にかかっていても手足が千切れていても、決して止まることなく、愛するものを守り切ればこそ、俺たちは輝ける。]
「姫様あああああああああああああああああああああ!!!!!」
両手で地面を這い、片足で踏みしめ立ち上がります。
その様子にリロンは驚いていますね。しかしそんなことは気になりません。
短剣が姫様に迫っている。
それによってか世界がスローに見える中、僕は驚くほど力強く動けます。相変わらず斬られた足には力が入りませんが、片足でも少しは動ける。
僕は剣を投げつけます。少しズレれば姫様に当たってしまうかもしれませんが、ここで外す僕ではない。
僕の投げた愛剣は姫様に短剣を振り下ろしていた男の眉間に刺さり、短剣は姫様の隣に振り下ろされました!上手くいった!
しかし僕は倒れてしまいます。
まだ、危機は去っていないと言うのに、、、僕の足は言うことを聞いてくれません。毒が効いてきたのでしょうか、視界も揺れてきました。
「最後のには驚かされた。だがもう動けまい。これで最後だ。」
くっ、姫様…!
「術姫を殺したら首を元王に届けてやろう。」
なんだと!?
「貴様ああああああああ!!」
私は安定しない意識の中、力一杯叫びました。その叫びにリロンは愉悦を感じたように笑う。
そして、彼は再び命令を出した。
「やれっ!」
「あああああああああ!!」
「よく諦めなかった。あとは任せておけ、ロフト。」
轟音と共に、姫を取り押さえている男たちが吹き飛んで行きます。
僕らを助けに現れたのは、無表情のゴリアテ師匠でした。
拙い文章ですいませぬ。次はゴリアテ無双でございます