25話
あれから3日。ロフトは順調にレベルアップを果たしていた。
ロフト・ペイル
人族男性
年齢:20歳
職業:深緑騎士
Lv:36
HP:1600 MP:570
筋力:880
敏捷:1010
体力:1080
知力:601
魔力:559
魔耐:932
運 :11
特に、体力と魔耐の上がり幅が凄い。
まぁ何故こんなにもここが上がっているのかといえば、
体力はゴリアテ式トレーニングで。(ゴリアテが想像以上に張り切った結果)
魔耐はハスミンが魔法の練習台にしたから。
そうそう、姫さまも何だかんだレベルアップをしている。
ロフトと一緒に、峰打ちされた魔物を魔法で倒していたからだ。
黄金バットや養成ギプスを付けてなかったので、そこまで劇的には上がってないが、流石精霊の加護。上がりやすさはなかなかだ。
イザベラ・ミラス・スレイプニル
人族女性
年齢:18歳
職業:魔術姫
Lv:52
HP:821 MP:1680
筋力:310
敏捷:613
体力 : 500
知力:992
魔力:1106
魔耐:948
運 :74
ステータスの上りは正直特殊ジョブをナメてた。ここまで上がるとは。特にMPが凄い。
前の数値より600くらい上がっている。
魔王ジョブは、もともとレベルという概念がMAXから始まるのでステータス上昇率なんかはなかったが、もし上がるとしたらこれだけ上がるのだろうか。
だとしても確かめようがないな。今は、“称号補正”以外に、解放出来るものがないか探しつつ、面白おかしく過ごしていこう。
あ、“称号補正といえば、俺以外の3人もこの3日で解放した。
状態異常なんだが、ハスミンとユックリーンは俺と同じようにかかった。だが、ゴリアテは衰弱(軽)だった。これは何故だ。と思ったのだが、
「種族差じゃね?」
とのユックリーンの発言で他3人も納得した。
魔人族、ダークエルフ、狼人族だったら、確かに狼人族の方が免疫力高そうだよな。
ちなみに、ハスミンの衰弱は、状態異常ポーションで治した。
あの気分を治るまで味わっていただくのも悪くなかったんだが、自前のポーションで治すって言うから結局止めなかった。
俺の時あんだけ心配してもらったしね〜
ということで今はみんな補正200%が付いている。人外極めてます。俺らに匹敵する人間は現れるのかね。
そうそう、補正で強くなりすぎて困ったことが一つ。
グシャッ!
魔物の頭蓋が握りつぶせるようになってしまった。
ブッ。
鉄の剣くらいでは、肌を通さなくなってしまった。鈍い音が鳴って終わり。
流石に目とか患部は試してないけど、俺らと対峙したら、そこらを狙うか、もっと切れ味すごいの持って来なきゃって時点でヤバいよね。
手術とかどうすんの?あ、回復魔法か。
正直困ってる、というか怖いのが一般人を一瞬で肉塊にしてしまうかもしれない筋力が問題。
見た目はマッチョってほどでもないんだが、魔物の頭蓋じゃなくても、鉄の棒くらいグニャリといってしまう。ステータス補正やばいね。
なので、今は日中は強力な筋力弱体化装備をつけている。筋力ステータスが3分の1にまで下がる腕輪。ゲームだと死にアイテムだったんだが、まさかこんな形で役立つとは思わなかった。
ただ、これも手加減を覚えるまでである。もし、俺らに匹敵する敵が現れたらこんなの付けてたら咄嗟に反応出来ても攻撃力が足りないかもしれない。
だから、ロフトと姫さまが寝た後に3人で手加減の練習をしているのだ。
何故3人かというと、ゴリアテは手加減が出来ているからだ。
あいつは元のステータスで手加減に成功していたからな。あいつの元々の筋力ステータスは騎士職だけあってかなり高い。そして上限9999に結構近かったため、あまり前と変わらないらしい。
ただ、コツを聞いた時、
「勘?」
これだから困る。もっと具体的に言ってほしいものだ。
ゴリアテはたまにこういうことがある。ユックリーンとハスミンは割と理論的に話してくれるので、わかりやすい。
今ハスミン意外。とか思ったやつ。正直に手を上げろ。
ハイ!俺も最初はこいつ意外!って思いました。
「さて、3日経ってロフトがここまで強くなったわけだが、何か気づいたことがある人―挙手。」
「ファイ!」
「はいどーぞ、ハスミン君。」
「ロフト君ね〜意外と〜酒に弱い!」
「そーねー。俺が期待していたのはそんなんじゃないです。」
いま俺達は夕食後の晩酌中だ。
焚き火を囲んで王都で買ってきたワインでほろ酔い気分。ただ、ハスミンは泥酔。酔い潰れたロフトを見てケラケラ笑っている。タチ悪い。
ちなみに言うと、俺とゴリアテは酒に弱い。ユックリーンとハスミンは割と強めだ。ハスミンは強いことをいいことにかなり飲むから結局泥酔するんだが。
俺とゴリアテはチビチビと。ユックリーンはグラスを回しつつ程よく飲んでいる。
「意外でしたわ。ゴリアテさんはもっとお酒に強いように見えますのに。」
「イザベラ嬢、人を見た目で判断してはいけませんぞ。」
「あら、爺やみたいなことを言うのですわね。」
「ハハハ、、、そんな老けて見える?」
「?、そうですわね、30代後半かしら?」
「…がっくし。」
前世からの悩みですねハイ。ゴリアテは老けて見えるのを気にしてましたね。ええ。
まぁお前の場合はキャラクターの外見がおっさんだから割としょうがないっちゃしょうがないけどな。
俺は親父を見て毛髪を気にしてました。これらの悩みについて語り合ったあの熱い夜を思い出しちまうぜ。
言わないけどな!
「まぁまぁ姫さま、そのくらいで。そろそろ寝たほうがいいのではないですか?夜更かしはお肌によくありませんよ。」
助け船を出してやった。そしてお姫様には酔い覚ましと眠気増幅のために温めたミルクを手渡す。俺特製黒砂糖入りホットミルクだ。寝る前に飲むとグッスリと眠れる。
「ありがとうございます。それでは、お先失礼しますね。」
「「「おやすみなさい。」」」「おろ、姫さまねりゅのー?おやすーみ〜」
ヤベェ、ハスミンのろれつが回ってねぇ。これはさっさと眠らせといたほうがいいな。
ほいほい“スリープ”
「ぐがぁ〜すぴ〜〜ぐぁ〜ひっぐ」
…タチ悪いわぁ
「で、さっきの続き。気になったこと、あるだろう?」
ハスミンによって中断されていた話を改めて聞く。
「ああ、昨日から何度か探るような視線を感じる。」
「あれは俺と同じ職だ。けど全てにおいて俺より格下の格下だ。足運びはいいが、肝心の気配が消せてない。いや、誤魔化してはいたんだが、あのレベルでは俺には到底及ばない。もっとスッと入ってサッと動いてスススッと消えていかないと。」
あ、ユックリーンも割と飲んでるな。話が長い。自分の職にこだわりがある分こういう時の話はすんごい長いから聞き流そう。今酒も入ってるから相当長いぞ…
それにしてもユックリーンと同職、暗殺者か。
「ゴリアテ、どう思う?」
「うむ、アルゴー殿を狙ったのと同じ輩ではないだろうか。」
「ふむ、狙いは?」
「ロフト、いや、イザベラ嬢の方だろう。魔術姫なんぞ特殊職にそれにあの強さ。疎ましく思ってるのは少なからずいるだろうよ。」
やはりか。ゴリアテの考えは俺と変わらない。
俺も、アルゴー殿を狙った犯人、帝国の刺客だと思う。もし違うとしたら、この短期間で暗殺者達が2組も王都、王都付近に潜んでいたということで王都の警備を疑うレベル。ただ、騎士団にはなかなかの数の人がいるそうだし、それに加えて、王都警備隊なんていう警察みたいな組織もあるらしい。そっちは騎士団より更に人数が多いそうなので、流石に二組目は無いと思う。
それにこの国が敵対してるのって帝国だけらしいし……。
「大丈夫。あの程度ザコ。足軽レベル。」
ユックリーンが話に乗ってきた。だが例えが微妙に独特だ。足軽レベルってどんなレベルだ?
「ザコはザコでしかない。今のロフト3分の1くらい。」
「ロフト3分の1か。」
「だが敵は複数ではなかったか?俺が感知した気配は4人ほどであったぞ?」
となるとロフト1.3人分?わかりづらw
「む、だが姫がいるなら勝てる。」
確かに。イザベラ姫の実力はかなりのものだった。この3日、ロフトを鍛えつつ見ていたが、魔法の威力はピカイチ。種類も豊富。それに加え、明日からハスミンと個別特訓に入る。
確かにロフトと姫が合わされば3分の1暗殺者など余裕だろう。
「だがまぁ用心することに越したことはないな。4人で全員とは限らないし、敵が奥の手を隠し持っている可能性もある。それに、」
「「それに?」」
「俺達は“人”を殺したことがない。」