22話
頭の中に突如流れた声。
その声は無機質で、機械のような声だった。
それを冷めない頭で聞いてたら、俺の身体がに異変が訪れた。
「ぐ、あぐ、あああああああっっっっっっっつううう!」
暑い。あっっつい!!
体温が急上昇したような感触だ。それに頭痛も酷い。インフルのピークに一瞬でなったかのような気分。あー気持ち悪い…
「キオ、どうした?」
さっきの声を聞いて不審に思ったのだろう、ユックリーンが頭おかしい奴を見るような目で見てきた。
しかし、身体がダルく、気分も優れぬ俺は答えを返せない。
今俺は自分の身体のことで精いっぱい。頭痛くて考えもまとまらん。
「キオ、顔色悪いぞ、急にどうした?」
「食あたりかぁ〜?」
ゴリアテとハスミンもこちらに気づいたようだ。ユックリーンも先とは違い、心配そうな目になっている。
3人は意外と心配性だ。俺が風邪の時など、3人とも食べやすいゼリー買って帰ってくるくらいには。それに、意外と世話好き。4人の中で一番面倒見のいいのは俺なんだが、3人もなかなかの世話焼きである。
そんな彼らに、俺も心配をかけるわけには行かない。(さっきまでいい雰囲気だったしな)
故に俺は、テキトーな理由つけて少し離れていよう。
「違、う…。鳥、見て、、首捻った。少し、休む。」
うむ、パーペキ。それにしても、、、アッタマいてぇ…
3人は俺を不審げな目で見た後、しょうがないなぁという顔をして、ロフトを鍛える計画を話し始めた。
あ〜〜アチィ〜イテェェェ〜キチィ〜〜
木に寄りかかって、手足を投げ出し十数分。
ハスミンが1人こちらに歩いてくる。
今ロフトと彼を囲む姫を含めた3人は、ロフトの筋トレを眺めている。
尚、ゴリアテとユックリーンはロフトの3倍の量を終えていて、終わらぬロフトの筋トレにアドバイスをしている。
「お前、首ひねったって嘘だろ?」
いつの間にやら隣に腰掛けてたハスミンが問うてくる。
「確かに、元の世界でも変なタイミングで捻ったって良く言ってて、実際しゃがみこんでたってのも知ってる。ただ、1分くらいで治ってただろ。それに、あの時はそんなに顔真っ赤じゃ無かった。正直に言え。お前、何やった?」
珍しくおちゃらけた口調ではなく真面目な口調のハスミン。…ちょっとオコですね。これは素直に言わないとあとが怖い。
「姫さんに、“詳細鑑定“した。そしたら、称号補正ってのが解放されたって頭に流れてな…。」
うわっ、声ガッサガサ!これ、治癒魔法で治るかねぇ〜
とりあえずハスミンには言ったが、興味本位で同じことやらせたらあかんから、止めとかないと。
「お前、詳細鑑定するなよ…。まだ、俺の症状もはっきりしてないし、どれくらいで治るかもわかってない。条件を、調べてから…手を出せ……。」
ハスミンは、俺の言葉を聞いて、またもやしょうがないって顔をする。
「全く、お前の姿見てやろうなんて思わないさ。やるとしたら、お前が治った時か、ロフトを鍛え終える10日後だな。幸い、黒桜式パワーレベリングは俺ら3人でも出来るし、交代交代で鑑定していけばいい。姫ちゃんの詳細なんて俺も知りたいしな!」
ハスミンの言葉を聞いて安心した。まぁ俺を見た後にやるほどバカではないだろうと俺も思っていたが、言葉にしてもらえれば安心もするものだ。
「とりあえず、お前にかかったのがどんなのか、ちょいと鑑定してみるわ。状態異常だったら魔法で治るだろうし、ゲームと違って、風邪なんだったら状態異常欄に提示されるのか、魔法で治るのかどうか確かめたいしな。」
なるほど。確かにそれは確かめたいな。風邪や病が魔法で治るならそれはいい。
「んじゃ、“鑑定“」
偽装のネックレスがあるが、俺ら4人は鑑定が最上級なので、素のステータスが見れるはずだ。
「っ!!??」
ど、どうした!?ハスミンがむちゃくちゃ目を見開いて、声も出ないくらい驚いている。なんだ、何があったんだ!?気になる。気になるゾォ!俺の体に何が起こっている!!
「ハスミン!」
ガラガラの声で、覇気なく呼べば、ハスミンは恐る恐るこちらを向いた。
「あ、ああ、ごめんごめん。とりあえず、その状態は、魔法で治りそうだ。状態異常の“衰弱(重)“にかかってた。」
なるほど、衰弱か。ステージボスとかがのかけてくる魔法によくあるやつだな。
それにしても(重)ってそんなのゲームではなかったぞ。これも異世界だけのやつか。
「“ピリフィケーション“」
ピリフィケーション
上級状態異常回復魔法だ。中後半でよく使われる光魔法で、ボス攻略では必須級の魔法だ。うちのパーティでは、ハスミンにしか使用出来ない。なぜなら、俺らは黒魔法の方にジョブガン振りなんで、光魔法が使えないのだ。ただ、ハスミンは課金という行為によって、光魔法適正のあるジョブも解放出来ているので、使えるのだ。俺は魔王のジョブを手に入れるのに必要なかったから取ってない…。
暖かい光が俺を包む。あの色情魔のハスミンから出されたとは思えない優しい光だ。
あ〜癒されるんじゃぁ〜
身体が軽くなり、頭痛も消えた。ハスミンさまさまですね。ハイ。
とか思ってたんだが、ハスミンは俺の顔をマジマジと見ている。
男の顔をガン見する趣味はないんだが…いくらゲームキャラでイケメソでも中身がハスミンってわかってたら色々萎えるってもんですよええ。
「おい、ハスミン。いい加減ジロジロ見るのをヤメろ。治してくれたのは有難いが、流石にキモい。」
俺が立ち上がりつつそういうと、ハッとした顔でこっちを見る。
「キオ、お前、自分のステータス見たか?」
「はぁ?」
そういえば見ていない。称号補正というのが姫さんのステータスの高さに関係あるのだとすると、凄いことになっているかもしれない。
だからハスミンは驚いていたのか!
「ステータスオープン!」
はやる気持ちをそのままに、俺はステータスを見る。
狂王エノモト
魔人族男性
年齢:21
職業:魔王
Lv MAX (称号補正上限200%)
HP:38100 (+200%)
MP:210000 (+200%)
筋力:6480 (+200%)
敏捷:9999 (+200%)(上限に至りました。)
体力:9999 (+200%)(上限に至りました。)
知力:9999 (+200%)(上限に至りました。)
物耐:9999 (+200%)(上限に至りました。)
魔力:9999 (+200%)(上限に至りました。)
魔耐:9999 (+200%)(上限に至りました。)
運:67
…補正、やばいっすね。こんなステータス急上昇したら体に負担かかるわ!そりゃ衰弱にもなりますわ!
バケモノ級だったステータスがさらにやばばになったよ…
ヤバババハムートですねぇ〜。国一つ一人で滅ぼせるよ。多分。
けどMPの3倍はデカイな。あいつらの召喚がしやすくなった。
まだ召喚してない6体。それにまたアルラウネやキュベレーにも会いたい。
ヴァルキュリアはユックリーンの遊び相手として出してもいい。
ただ、最近ジェネラルさんとか見てないんだよね…従魔もたくさん種類持ってるから、そっちも使ってあげたいなぁ〜
「お前、ステータスマジでバケモンになってるの気づいたか?」
「ああ、気づいた。」
逆にお前忘れてた、まである。
「“称号補正“…俺も欲しいねぇ〜。詳細鑑定しちゃおうかな」
「なっ、やめい!“ピリフィケーション”はお前しか使えないんだから!お前最後ね!」
…ふと思った。“称号補正“のことを知ったのに、こいつは解放されてないのか?
俺の“称号補正“解放の条件が、”称号補正“の存在を知ったからなのか、詳細鑑定をしたから、なのかがわからない。ただハスミンが調子悪そうにしてないから、大丈夫なのか?
見て見るか。“鑑定“!
ハスミン
ダークエルフ男性
年齢:21(元103)
職業:暗黒魔導術師
Lv:MAX
HP:14000
MP:98000
筋力:1280
敏捷:4700
体力:6910
知力:8103
物耐:5600
魔力:9999
魔耐:7600
運:31
良かった。まだ解放されてなかったわ。
ここでハスミンに倒れられても困るしな。
「急に黙ってどうした?」
「いや、“称号補正“の条件を確認してた。まぁお前らが詳細鑑定で解放されるかどうかわからんけどな。」
「うわぁ、解放されなかったら割と傷つくんだけど。お前らと実力がかけ離れちゃうじゃん。」
「せやな。乙〜」
それからもハスミンはブーブー言ってたが、まぁ今すぐにどうにかなることでもないので、放置!あとでゴリアテとユックリーンが解放したら、だな。
「さ、戻るか!」
「おま、聴いてた!?ねぇ、聞いてた?聞いてなかったよね!人の話は聞くものですよー!」
「心配かけたからなーちゃんと元気になったって言わなきゃなー」
「くっそ、聞いてねーやコレ。」
はいはい、後でね、あとで。
割とガバい。