1話
「今日も朝まで粘る?」
「そうだな。まぁ冬休みだしな。別にイイだろ。」
「彼女でもいれば違うんだろうけどなぁ」
「いるわけないし出来るわけないだろ。現実見ろよ。」
「うわおま、酷いわぁ」
4人で、こたつを囲みながらゲームをする。
最近の光景。
今は冬休み。
今秋から4人の通う大学のほぼ真ん中にある場所に、シェアハウスをしていた俺たちは、一つの大きめのこたつを囲み、ノートパソコンでオンラインゲームをしていた。
オフラインで集まりつつ、オンラインゲーム。
俺たちは大学生だからと、この冬休みを謳歌していた。
今遊んでいるのは、3年前からやっている、MMORPG「エミリア・オンライン」名前は、開発スタッフの中のお偉いさんの愛人の名前から取られたらしい。馬鹿げたネーミングセンスだが、中身はなかなかバカに出来ない。
かなり本格的であり、自由度も高い。難点を挙げるとすれば、ストーリーが拙いことだろうか。
そのMMOで俺たちは4人でパーティを組み、かなりの強さを誇るくらいには強くなった。
パーティ名は『黒桜旅団』
実はクラン名なのだが、クラン人数をこの4人のみに絞っているため、パーティ自体がこの名前で呼ばれている。
さぁここで突然だがメンバーを紹介しよう。
まず1人目は、黒桜旅団団長この俺、狂王エノモトのハンドルネームで知られてる男
榎本輝御
職業は魔王。 数多の闇系職業をコンプし、努力の末にこの職業を手に入れた。魔王の職を手に入れるまでは、調教師、召喚師をしていて、その名残から、後方から悠々と倒して行くプレイングを好む。ただ、数多の職を練り歩いてきているため、ふつうに剣を持って前衛をすることも出来る。その時に好むのは剣、双 槍、大鎌だ。ちなみに、4人の中で一番ログイン時間が長い。
キャラの外見は、普通の魔人族。白髪オールバックに、角。そしてオッドアイ。厨二の権化と言いたいが、職業魔王なので、意外と似合っていたりする。ただ、身長だけは低め。現実で身長にコンプレックスがある分、理想の身長にしようとしたら、他の三人がニヤニヤし始めたため、6センチもっただけに留めてある。なお、だけである。盛りすぎなどでは断じてあるまいて。泣
さて、つぎは、黒桜旅団副団長
ゴリアテのハンドルネームで知られ、気さくで面倒見のいい性格から、親父プレイヤーと言われている男。 その面倒見の良さと、圧倒的な防御力で、盾職のプレイヤーから絶大な人気を誇っている、
節田堅治
職業、守護者 仲間内でのちょっとしたロールプレイの観点から、闇系ではあるが、本音で言えば、騎士職のままがよかったりする。しかし、パーティメンバーのうち2人が魔法職なので、上位職の守護者になった。 渋いおっさん騎士団長とかに憧れていて、近衛騎士的立ち位置で、この職をしぶしぶやっている。
他には、格闘家や地味に治癒士などもコンプしている。HP上限うpをこよなく愛し、我が身を盾にするマゾプレイヤー。ただし、騎士職故に攻撃力もなかなかのものなので、彼を侮る者はいない。
ゲーム自体はあまりプレイ出来てはいないが、暗黒騎士として、上位ランカーである実力があり、キャラの 見た目にあまりこだわらない分、エンドコンテンツであるコスチュームを狙ってないので、たまにやると言った感じだ。
見た目は短髪長身のおっさん。厳つい目つきに、ジョリジョリしてそうな微妙な長さのヒゲと、頰の傷がこだわりらしい。ガタイはゴツく、バスターソードを装備している。
実は、見た目おっさんなので、人族に間違えやすいが、実は狼男の魔族で、特殊な魔法を使うと、変身できたりする。ここで間違えられやすいのが、亜人族の狼人種だ。しかし、簡単に見分けられる。元の姿だ。狼 人種は、ケモ耳にケモ尻尾の亜人間、自身の“特殊能力”として変身する、つまり獣人。しかし、狼男は、もともとの見た目は人間であり、“特殊魔法”を用いて変身する。こんな細かな設定で似たようなの作るなよ。とよく言われるが、運営側はどこ吹く風で全く気にしていない。
三人目はギャグ担当ハスミンこと、
蓮味琢磨
職業は暗黒魔導術師。 魔術師、魔導師、治癒士等、魔法を使う職をほぼ制圧。ただ一つ暗黒戦士等を必要とする魔王を除くすべての魔法職をコンプしている。その中には、聖魔術師や神聖魔導師も含まれており、 相反する属性を取るために、課金アイテムまで使ったほどの魔法溺愛者。中学まで剣道を習っていて、他の3人は、剣職取るんだろうなぁと思っていたら、まさかの魔法職。それも極められた魔法職。ビックリである。
キャラは、ダークエルフだ。褐色色の肌に、尖った耳。しゃんと伸びた身長と、抜群のスタイル。キャラメイクの時は他の三人に思いっきりどやされた。
最後は4人目ユックリーンこと、
湯積隆輝
職業は暗殺者。 結構初期の頃に取れる職ではあるが、他の職を広く浅く取り、ステータスボーナスと、有効スキルを多数会得することで、暗殺者の職を極めた。
持ち前のステータスの万能性で言うならば、魔王である輝御に迫るレベル。ただ、広く浅くであるが故に、他の職は上限レベルに達していないため、魔王の職は取れなかった。尚取得後に、なる予定など皆無である。隆輝は、ステータスボーナスも発生しない、ある意味ただの称号とも言われていたエンドコンテンツ気味の、魔王のことを、これを取るのはバカくらいだ。と思っている。
因みに、金策のため、鍛治職を極めていて、黒桜の装備や、魔道具は、隆輝の作ったものがほとんどである。作るときは、仲間からもちゃんと相応の金額を取っている。しっかりものである。
外見は、普通の魔人族。普通、まさに普通。なぜなら、キャラメイクはスキップ!デフォルトのままである!!角は2本。
流石に他三人もぽかーんとしていた。
さて、そんな4人だが、この一週間はゲーム内大規模イベントということもあり、バイトを休み、ひたすらやり込んでいた。
このイベントの景品は、上限にいち早く達したパーティは運営に対して、要望を出せるというもの。
お問い合わせ、のようなものよりはるかに強制力のあるある意味命令レベルの権限。これを与えられる。最近このゲームの敵がめっきり弱く感じていた4人は、超高難易度ダンジョンを作ってもらえないかと画策していた。
「ここの敵弱いなぁ」
「しょうがないんじゃね?俺ら強すぎだし。まぁイベント対象だから刈り尽くすけどな。」
弱い、弱いと呟きつつも敵を全滅させていく4人。
そして、16回ほど湧いた敵を全滅させた時、全員にメールが届いた。
「ん?終わったか?」
終わりとは、このイベントのポイント稼ぎのことである。一週間、ほぼ休まずにやった刈りで得たポイントは、普段のトップランカーを三倍も離して、ついに上限まで達したようだ。
4人はメールを開く。
「ほう」
「ふっ、いいじゃねぇか」
「やっとですか」
「(ニヤッ)」
上から輝御、堅治、琢磨、隆輝だ。
メールには『貴方の望みはなんですか?』
「よし、決めてたことな。」
「おうよ」
「チョロすぎるダンジョンはつまらないからなぁ。」
「素材は高く売れたけどな。」
「「「「答えは、血湧き肉躍る更なる冒険を望む。だ!」」」」
その瞬間、4人を強烈な光が包んだ。
「うわっ、なんだこれ!」
「うおっまぶい。」
「目がぁぁあ、目がああああ!」
「パソコン壊れてないよな?意外としたんだぞ」
上からいつも通り輝御、堅治、琢磨、隆輝。
光が消えた時、その部屋には4人はいなかった。