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史上最強のパンチ  作者: ひなえSky
山篭り編
5/5

異世界生活1日目-01


異世界生活1日目

時刻は不明、佐治田さんが消えてから体感にして10分程度、既に俺は困っていた。


(何していいかわからねぇ)


基礎修練はここで積めと佐治田さんは言っていた、だが、その基礎修練ってどうやって積めばいいのかがわからない。

鑑定も山で練習しろと言っていた、だが、その鑑定をどう使えばいいのかがわからない。

結局木々を見て、改めてこの場所が俺の住んでいた場所とは違うと言うのを確認した後、こうやって地べたに座り込んでいた。


(とりあえず、鑑定からやってみるか?)


修練ってのはそもそも何やっていいのかわからないし、まだ鑑定の方は鑑定をすればいい、ってやる事が決まってるから探れるだろう。

そんなわけで、立ち上がった俺は木に向かって人差し指を突き出した。


「鑑定!」


…………待てども待てども何も起こらない。

え、今のは俺のスキルレベルが低すぎて失敗したのか、やり方が違うかのどっちだ?

そもそも鑑定であってるのか?なんか魔法の名前があったりしないのか?


「くわんてぇい!」


発音を良くしてみた。

何も起こらない。


「我が前に並びし物の情報を与えよ!鑑定!」


ポーズと詠唱を入れてみた。

何も起こらない。


「鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定鑑定ィ!!!」


連呼してみた。

何も起こらない。


俺はここで初めて恐怖を覚えた、システムメッセージが無いと言う事がこんなに恐ろしいと思わなかったのだ。

もしここで「対象が間違っています」と出るなら、照れ笑いでも浮かべていただろう。

「詠唱が間違っています」とでも出るなら、恥ずかしくて倒れていただろう。

しかし、今俺にはそれすらの情報が一切無く、何が合っていて間違っているのかもわからなかった。


「佐治田さぁん!!?」


何度か名前を呼んでみたが、周囲に木霊して俺の声は消えていく。

今はわからないけど、いつかわかるからいいか。なんて楽観的にはどうしてもなれない。

佐治田さんが居た時には、現実感が無さ過ぎて考えがついてこなかったが今ならわかる。

現状、この世界で俺が知っている物など存在しないのだ。

木の実一つさえ、口にしていいのかがわからない。

額から汗が流れ落ちる、鑑定とは俺とこの世界を繋ぐ為に必須の物だった。

だと言うのに、それの使い方すらわからない、これは非常に焦る。


「くそ!鑑定……!鑑定!鑑定!」


声を荒げても、どれだけ焦ろうとも、何も変わらない。

呆然とした、喉が乾いても水すら持っていない。

まだここに来て1日すら経っていないどころか、30分も経っていないと言うのに、甘く見すぎていた。


いや、ともかく落ち着こう、ゲームでも焦ったヤツから死んでくのは確かだ。

この鑑定と言う物が無ければ此処から先何を口にするにも博打でしかなく、これの使い方を知るのは急務だ。

俺は木の葉を手に取り、考える。

そもそも鑑定ってのはなんだ?

テレビや漫画で出てくる鑑定をする人を思い出す。

壺や陶器、後は、美術品等を見て、時代を推測し、使われた技術を辿って、物の価値を測っていたはず。

じゃあ俺も、ただ鑑定を叫ぶだけではなく、まず手にとる所から初めてみよう。


「……一見、普通の葉っぱなんだが」


葉っぱの主軸、そして枝分かれした筋が左右で互い違いになっている事、葉の形状が楕円ではなく菱形のようである事を確認していく。

色は黄色みの強い緑、と目にして理解した部分を言葉に変えて頭に入れていく。

何もわからない……だが諦めず、再度同じように全体を読み取っていけば、ふと、頭に何かが浮かんだ。


「……シダいや……シデリス……の葉……、食用には適さない……みたいだな、毒……は無い……」


ぼんやりと脳裏に浮かぶ知識を口から取り出す。

まるで低下した視力でぼやけた文字を必死に読み取るような感覚だった。

そして、引き出したい情報があらかた揃い、確認を終えた時点で大きく息を吐くと同時に俺は首を傾げた。


(……え?今のって、どこから取り出した情報なんだ?)


よくよく考えて見なくても、俺がこの植物を知っているはずはない。

だが鑑定と言うのは、当然自分の知っている知識の中から索引するはずだ。

もしこれが鑑定と言うスキルを覚えた事によってもたらされた知識なのだとしたら、葉っぱを見た瞬間にそれが何なのかわかったはずである。


(鑑定って名前だからややこしく考えたのか……?)


自分の知識に無いはずの物をどこかから引っ張ってきているのだとすれば、鑑定と言うより検索だ。

調べる上で何かをトリガーに、どこかのサーバーにアクセスして検索し、必要な情報をダウンロード、と言った感じだろうか。

鑑定と言うよりはそちらの方がしっくりくる。


(……うーん、まあ……どうせ今ごちゃごちゃ考えてもわからないし、素直に成功したのを喜ぼう)


あるかどうかすらあやふやだったスキルを本当に持っていたのだ、これは大きな進歩である。


「いやっほう!」


変なポーズで飛び上がった。

誰も居ないと言うのはこういう時だけは便利である。

それから俺は辺りにある様々な物を鑑定して回った、この鑑定1回にかかる時間は体感で2~5分程度と物によってバラバラ。

スキルだと言うのだからもしかするとレベルがあり、鍛えていけば時間も早くなるのかもしれないが、それすら今はわからない。

一方、自分自身を鑑定で見れないかと試してはみたのだが……なんというか。

片目を閉じて、25m先に自分の名前が小さく表示されているような感覚だった、読めるかい。

これによってわかった事が一つ、魔物と遭遇した場合、魔物の情報が自分と同じように見えないのも困るのだが、調べるのにそんなに時間がかかるとなると、結果が出る頃には俺が魔物のディナーになってしまっている。

よって、人や魔物に使うのは現時点では無理と判断。

後これ、めちゃくちゃ神経を使う。

かなり集中しないと読めないので、敵対している相手にそんな事してるヒマもない。


「……参ったなぁ……食べるモンが見当たらない」


目下最大の危機はこれ。

周囲に存在した木の実は1つを除いて毒、一応食べられる木の実であるサラの実と言うのを確保してはいるが

鑑定を持ってして「これをそのまま食べる生き物はいない」と言わしめるほどに苦い。

栄養は豊富なようなので、本当に困った時以外は出来れば口にしたくない。

そしてもう一つの問題。

この世界に果たして四季に通じる物があるのかどうかは今のとこ不明だが、体感温度から察するに春か秋。

陽が登っている今はいいが、夜は確実に冷える。

着ているのは学ランとズボン、中はTシャツ、私服よりは分厚く出来ているとは言え、本格的な寒さが来たら凍え死ぬだろう。

やはり改めて考えると、どう考えても山スタートはハードモードすぎるのではないか?


「まあ、文句言っても仕方ないんだけどさ……」


ともかく、今必要なのは川と、屋根のある場所だ、今は降ってなくとも雨は必ず降る……よね?

背負った鞄の中にある教科書やノートも、確かに重いが着火するためには必要だ……ってか火つけるのも木の枝ゴリゴリしなきゃいかんのか。

幸いだったのは、山道を教科書詰め合わせ、学ランで歩んでいると言うのに、疲れがほとんど来ない事。

別に身体能力が向上したわけでも、急に筋肉がついたわけでも無いんだけど、なんとも不思議な感じだった。

斜面で平地を歩くのと変わらない速度が出せるのはありがたい。

道中見掛けたキノコのような物も、触らないで鑑定して行くがやはり食用に適さない物ばかりだった。

この世界の味覚が俺と合わないとかじゃなければいいんだけど……。


「……ん?」


遠方、木々に阻まれてハッキリとは見えないが、緑に覆われた景色をくり抜いて、灰色の岩肌が見えた気がした。

地盤が緩んで滑り落ちた跡で無ければ良いが、空洞かくぼみを期待して近づいていく。

辿り着いた先は10~15mはあろうかと言う岩壁、今まで生きてきた中でこれほど大きな岩場を見たのは初めての経験だった。

思わず自分がサバイバル中だと言う事すら忘れてその非現実に感嘆の声が漏れる。


「……はぁー……すげぇ……」


岩肌は層になっているのが確認でき、ここなら洞穴が無くとも、岩壁の方へは警戒を緩めてもよさそうだと頷いた。

出来れば近辺に滝でもあってくれればいいのだが、期待せず岩壁に沿って再び歩き出す。

しかし、結構歩いているのに未だ蜘蛛の巣を一つも見ないのは、この世界、蜘蛛がいないのだろうか?

後は蚊も全く見ていない。

同じ生き物とまでは言わなくとも、それに類似した生物は居そうな物だけど。

まあ、未知の世界で魔物の血液が付着した針を指してくる蚊なんて居たら、恐ろしくてたまらないが。

そんな事を考えながら歩いていると、近くの草むらが揺れた気がした。


「……なん―――ゲハァッ!?」


突然腹部で衝撃が弾けた。

その質量はまるでボウリング玉。

足が大地から離れ、身体が後ろに投げ出される。

俺の腹部から離れたソイツは、地面に降りるとこちらを赤い瞳で睨んでいた。


「げほっ!う、うさぎ!?」


異世界で俺が初めて出会った魔物。

ソイツの正体は、中型犬ほどのサイズのうさぎだった。

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