自分の好きは認められるのか
私は書きたいものは題材にあらず、と思っているし、だいたい私の楽しいものは「こんな人が好き」と具体的にターゲット絞って考えています。
それに、「これが面白いから書きたい」から作品を考え始めるので、あまり何が面白いかを悩むことはないです。面白くないのは、私の技術が足りてなくて伝わってないだけです、多分。
一方で「こういう人にはこういう嫌われ方するだろうなぁ」っていう予測もたてます。すると、その嫌われ方を最小限に抑えるか、もしくは無視して魅力の部分を特化させるか、などを考えます。
そして最後に、「この面白さが伝わるのは多数派か?」と考える。多数派でなければ、他にも楽しいことを突っ込む。
と、こんな感じで書き始めると、「何が面白いのかわからずに書いている」人は大変そうだと思って見ています。
「このキャラ、この関係たまんなくないですかー?!」って楽しそうな人は、「わかる」ってなる。
さて、人気題材が書きたいものでない場合、「ガマンして人気題材書かないと認められないのか」「他人からの評価は無視しなければならないのか」この二択に分ける必要がまるでないと思ってます。
たとえばあなたが好きなものが、優しくって明るく、純粋なひとが理不尽でひどい目にあってボロボロになって死ぬ。それならちょっと書く場所間違えてるのでなろうでは二重の意味で厳しいです、はい。
さて、あなたが面白いと思っているものは反社会的、倫理的に問題、性的や残酷さが強いといった要素はありますか?
これらがあると、確実に一定需要はありますが、出す場所次第では伸び悩むことでしょう。エロならムーンライトやノクターン、グロならミッドナイトに。反社会的なのは確か投稿認められてたかな……規約と相談次第です。
そうでない場合は、あなたが面白いと思ってるものはほかの人もいいね、といってくれる可能性が高いです。あなたが美味しい物食べたり、人に好かれたり、何かで勝って嬉しいとかそのあたりの感覚があるならば。
では何故、認められないのか。それは多分、そのまま出してるからではないかなと。あなたは魚が好きだったとします。でもその国には魚を好んで食べる人が少なかったとします。生臭さが苦手な人にはくさみとり、香草、生姜やネギなどを使って臭くないようにすると思います。
それと同じことではないかなと。臭みが好きな人が少数派でそれを狙うならとらなくていいけど、臭くない方がいいよね?と思う人相手に魚の美味しさを伝えるなら、くさみとればいいじゃないか、と。
それは魚をバカにしたり、美味しさを損なう行為なのでしょうか。
あなたが面白いものを、より広く受け入れやすく作るのもまた創作の一つのたのしみ方ではないでしょうかね。
その一つとして人気題材、人気の展開、設定、構造があると考えると、少し気が楽になるかなぁとも。
と、これだけだと単に私の考えを述べただけに留まるので、これに対してあったほかの意見と、それに対する補足をしておきます。
まず「香草すら無理、ほんとにそれしか食べられない人はどうしたらいいのか」という意見。
つまり、自分はピンポイントでマイナーでそれしか楽しめないからそれを作っていて他のものは無理、と。
(書いてる人の作品、ブクマ4桁あるんだけどね)
まず、楽しめるという感覚にもグラデーションの如く程度の差があると思います。
たとえば異世界で話をしましょう。
異世界は好き、探して積極的に読む人。
好きなものも多い、あれば読む。
好きなものもある。
特に何も思わない。
どちらかというと苦手。
嫌い、絶対読まない。
さて、私の「受け入れてもらう」はどちらかというと苦手、を限界としています。
絶対に無理という方は多分、根本的に合わないとか、もしくは何かしら決めつけていることがあって拒絶している状態です。その人はアレルギーだとでも思って諦めてます。
自分が食べられるそれは、果たして世の中の全員の人にとって「嫌い、絶対に読まない」とまで言われるものでしょうか? 自分はトリカブトだと思ってるけど実はフグとかだったりしません?
というのが一つ。
そして、「自分はコンニャクしか食べないぞ! 他は無理だ!」というのであれば、「草しか食べないウシさん、ウマさん」「虫を食べる小鳥」も認めなければなりませぬ。ほかの生き物相手に「なぜこれを食べない? 私が間違ってるのか?」というのはなかなか大変です。
つまり、自分がそれしか食べられないように、ほかの人にも食べられないものがあることを認めないと、不公平ですよね? と。だから自分の許容範囲が狭いと大変で、広い人は楽しいです。それしか楽しめないということは、それを楽しめる人にしか楽しくないということにほかなりませんから。
がんばれ! これは毒があるが加工すれば美味しい芋なんだ! とこんにゃく芋押し付けると、そりゃなかなか食べてもらえない。つまり、その人が食べているこんにゃく、それそのものにまで作り上げないといけない。それは技術が必要になりますね……新たな食品の開発です、是非頑張ってください。
人気題材はつまり、バナナとかイチゴとか、鶏とか豚肉です。
しかし私たちが現在、シンプルに生でも美味しいとか、塩ふって焼けば美味しいと思っているものも人類の歴史の中で品種改良やらを重ねて美味しいことを皆に知らせてきたものです。また、あちこちで調理方法が確立されて、好きな味付けで食べられる状態となっています。
既に人気題材を好きで書いてる人は、その歴史にもたまに思いを馳せたくなるものです(異世界転生という人気題材に僻地でとってきたスパイスかけて作った人)
次に、「エンタメって、受身じゃないですか。読めばとりあえず面白い。じゃなくって、お互いに足掻いてこたえ掴むようなのが書きたいんです」とのお便り。
こちらもまた、創作者としては抜群にカッコイイ、純文学目指している方です。
ちなみに、何かがわかる、作者にしかないものが伝わるというのは非常に素晴らしい魅力の一つであると私も思うことを前置きしておきます。
そしてその作者は綺麗な味のある文章の方です。
さて、公募で純文学目指すなら、文学方面の仲間を作った方がいいよね! とは。
そしてWebでは、無料で読むのでみんな面白くなかった段階で切って、評価します。つまり、見る前から想像つく面白さ、読んでる途中での面白さは重要ですよね!と。
つまり、登山とかで「気軽にハイキングしたくて来た人」相手に、高くて険しい山を指さし、ガチ装備を買ってこさせて「さあ! 達成感があるぞ!」と登らせようとするようなものです。
確かに素晴らしい、達成感はあるとは思うけど大体の人が「俺はそこまで思っていたつもりじゃ……」と逃げてしまいます。そこで、こちらから装備用意して、道中美味しい料理や綺麗な景色、楽しい解説を挟みながら、飽きることないように山頂まで連れていき、そこで「な? 達成感あるだろ?」と問いかけるぐらいで良いのではないかなぁと。
そこで、「いや、わからん。疲れただけだよ」と言われてしまえばあれですが、ただ「それでも道中は楽しかったかな」とは思ってもらえたら連れてきたかいはあるのではないかなぁとも。
そもそも苦しませたいなら、それはある種の悪意にも見えるそれは、いかに苦しむのが楽しいか綺麗に飾り付けてようやくですぜ。技量と哲学の必要なお仕事ですな。
とまあ、あまり「書きたいものと変わる!」と怯えなくても、多分どういうふうに書いてもわかる人にはわかるんじゃないかなぁとか思ってみたり。
読ませるための工夫は、自分らしさを損なうと怯えなくていいのに。