神咲リン
俺が今向かっているのは、桜城学園、都内にある少し特殊な学園、高校が5年間ある。高校が5年間と言ってもただ3年+大学の2年って感じなんだけどね。国の新しい制度により高校の3年と大学の半分の2年間を合わせるという制度だ。まだ実施はしないらしくしばらくの間は一部のところでこの制度を取り入れてどのような結果になるか研究している。
何故、大学の2年間だけなのかというと最初の2年の基礎を一気にやったら効率がいいとかお金がどうのらしい。
また政治家が迷走したんだろうな、ややこしくて仕方ないよ。
だがこの制度にはメリットもある、試験をしないで大学に行ける。
俺も将来安定してるわけだ。まぁ、そううまく行けばな。
この学園には主に二つの学科がある、普通科と特能科。普通科は一般科目を重点的に行い、特能科は能力向上や強化に研究などを重点的に行う。簡単に言うとこんな感じだ、俺のいる普通科は結構人数が少ない、学園の大半は特能科に所属してる。まぁ、もう俺には関係ないけどな...。
9時ぐらいに学園につき3ーF教室に向かう。
「遅い!いったい何してたんだ!」
教室に入ると担任の我堂麻衣先生が目の前に。短い黒髪のスレンダーなスーツが似合う女性が一人、前髪を分けるためのヘアピンが何故かすごく似合う、黒い瞳も宝石のように綺麗だ、なので学園では男子に人気がある。性格を除けばな。
「すみません、ちょっとトラブルに巻き込まれて」
「そうか...、どんなトラブルに巻き込まれたんだ?」
「え?!えっと.....、いきなり現れた少女に腹蹴りせれて...」
「寝言は寝て言え!言い訳をするならもっとまともな言い訳をしろ!」
手を俺の顔に当てすごい握力で締め付けてくる。
「イテェ!痛い痛い痛い痛い!!」
頭が割れそうだ!必死で解こうとするがされに力入れられて解けない。
「反省したか?」
「あぁ!反省してるからやめてくれ!!」
はぁ〜っとため息を吐いって離してくれる。痛い頭を抱えながら自分の席につく。この学園はちょっと変わっていて、入学生は新入生のみだけでやる。在校生はただ春休み終わって学年が上がったぐらいの感覚だ。一か月後には新入生とご対面出来るけどな。
我堂先生は改めて話し始めようといたところ、校内アナウンスで呼び出され「大人しく待ってな」っと一言いい教室を出て行く。見た目と違いかなりボーイッシュだよな〜。
「ハハハ!相手が悪かったな!」っと俺の前の席でこっちを向き指差して笑うこの失礼な奴は、我堂龍二だ。ツンツンに立てた赤髪が特徴、顔は整っててキリっとした目、身長は182cm、身体は大きくはないが引き締めてある。制服を適当に着てる首には指輪がぶら下がってるネックレスをつけている。どこの学校にも少なからずいる不良って奴だ。
「行為じゃねぇ、トラブルに巻き込まれたっていったろ」
「そのトラブルが女に腹殴られたとか!腹いてぇよ!」と腹を抱えて笑う。
こいつ信じてないな、俺はありのまま起こった事を言っただけだぞ。
「ハハハ.....!ふぅ〜、笑った笑った。お前にしちゃいい出来じゃないか」
何がいい出来なんだよ、はぁ〜と軽くため息を吐き窓の外を見る。確か今日の夕方か夜に雨が降る予報が出てたが....、この感じだと夜に降るな、18時から19時ぐらいだろな。龍二の話を聞き流しながらボーっとしてると。
「おい、大人しくしてろって言ったろ!」バシッ!名簿でうるさく騒いでた生徒を叩いて回る。なぜか俺も叩かれたが....なんか恨みでもあるんですか?我堂先生!
「よっしゃ!授業を始めたいとこだが、転校生が来てる」
転校生?しかも普通科に?
「ほら入ってこい」我堂先生の一言に教室の扉が開きそこから女の子が歩いて来て我堂我堂の隣に立つ。
身長は高校生には似つかわしくない小柄、146cmぐらい綺麗な透き通るような金髪のロングストレート、瞳はルビーのように赤い、肌も白く顔もかわいい。あぁ....これで朝出会った女の子じゃなかったら最高だったのに....。
頭を抱え机に伏せる。
「自己紹介しな」我堂が椅子を用意して座る。
「神咲リン、よろしくお願いします」と淡々と自己紹介する。
神咲リンか...日本人には見えないからてっきり外国人だと思ってたが...。不思議に思ったがどうでもいいか。このまま伏せてやり過ごそう。
よくあるラブコメ展開に「あーお前は朝の!」「あんたはあん時の!」というシュチュエーションはまずない。そんな事しても気まずいだけだ。なので普通は無視一徹、向こうもそのつもりかただ気付かないだけか。
「はい、仲良くやんな。神咲席はあそこだ」我堂先生が名簿で指す場所は俺の後ろの空席だった。余計な事してくれるな〜。よし、ここは初め会った事にしよう!そろそろ、我堂の授業が始まる。始まる時に机に伏せてるとボコボコにされるので仕方なく顔を上げる。運よく顔は見えなかったらしい無事に授業を終えた。その後も顔を合わせないようにしていた、向こうからも話しかけて来ず他の女子連中に質問攻めにあってる。
昼になり龍二があくびをしながら「飯食おうぜ」と誘ってくるので、
「あぁ、先行っててくれ」立ち上がり教室出て購買に向かう。学園の一階、昇降口の右にすぐある。購買部はここ以外にもあるため意外と混まない。すごく助かる。
そこでパンを買い龍二が待つ屋上に向かう。屋上に着き扉を開こうとドワノブに手をかけるその時、下の階から誰かがこっちに向かってくる。問題は誰がくるかなんだが、風紀委員とか生徒会とか厄介な奴じゃなければいいが..。
扉を軽く開け近くの掃除用具入れのロッカーに隠れる。さぁ、先公かそれとも風紀委員かな。おお!来た。....が姿は見えない。おかしい...確かに来てるはずなのに、キィ..っと扉が開く音がした。やっぱり来てた、って事は来たのは身長が小さい奴だ。屋上で俺が来たと思ってたのか龍二は「おう!じゃ、さっそく......?」違う奴で驚いてるようだ。今朝笑った罰だ恥をかけ。
「.......私の前の席に座ってた男の人がここに来なかった?」
「あぁ?来てねぇよ」
「そいつがこの階に上がって行ったのを見たし扉も開いてたわ、ここに居るのはわかってる」
「来てねぇもんは来てねぇ!」
その女の子と龍二は言い合ってる、声を聞いてわかったが神咲リンだ。朝のお礼参りでもしに来たか?ここにいてもあれだからこっそり抜けて飯食おう。そーっとロッカーから出て下に降り教室出て飯を食って携帯をいじって過ごした。昼が終わり屋上にいた二人が戻ってくる。わざわざ時間ギリギリまで俺を探してたりしてたんだな。律儀だな。
「.....おい、迅...。テメェ......!」俺を睨んでくる。
「悪い、後で駅のプリン奢ってやる」
「!!ミルキーシュガーのカスタードプリンな!」
「ああ、カスタードでもマスタードでも奢ってやるから怒るな」
「怒る?怒ってねぇよ俺」
いつの間にか上機嫌だ、よかったよかったっと言いたいとこだが、隣にで仁王立ちしてる奴をどうにかしないとな。
「.....えーっと、神咲さんでしたっけ?はやく席についた方が良いんじゃないかな?」
我ながら初めてあったようにさりげなーく優しくなおかつ馴れ馴れしくないように。
「えぇ、座るわ。でも少しあんたに話があるのよ如月迅君」
話って朝の事か?なら俺だってあるぜ。こいつには説教がしつようだな。
「その.....、あ..朝は...ありがとね...。それと殴ってごめんなさい」
「あ...ああ。気にしてない、俺も悪かったな」
なんか気まずいので目を逸らし言う。普段からありがととか言われた事なかったからな〜。なんか変な感じする。神咲は気が晴れたらしくやたらかわいい笑顔になる。その後の授業はそ笑顔がちらついて集中出来なかった。
放課後約束どおり駅前のミルキーシュガーに行く。龍二はここのプリンを凄く気にってる。実際の目当ては店にいるオーナー目当てなんだが、今日はいないらしく少しテンションが下がっている。
「迅、なんで屋上に来なかったんだ?」プリンを食いながら聞いてくる。
「うーん、朝の話し覚えてるか?その子が神咲だったんだ。また殴られたくないから引き返したんだよ」
「あの小学生みたいな奴にか?...信じられないな」食い終わりゴミ箱にゴミを捨て振り返り
「あの女、能力者か?」
「さぁー、分からん」
神咲は見た目どうりの筋肉量、あの時は何かしらの格闘技でもなかった、だが異様なほど速く鋭く重かった。能力者でもおかしくはない。龍二はこの後用事があるらしくしばらく駄弁って帰って行った。俺も帰るか。駅前から直ぐ近くにある広い空き地があってそこで中学生が野球をやってる。青春だな〜。俺も女の子と.....。などと妄想に浸ってたら。目の前に今朝あった背の高いオールバックの男が立っている。何事も無く通り過ぎようと歩くと、
「.....一人なのですか?朝の女の子とは一緒じゃないんですか?」
覚えてるやがったか!だけど関係ないね、俺は無関係なんでね。そもそも知らない人と話しちゃいけないって親に習わなかったのか?
「.......」
無言で歩きちょうど隣を通る時。
「......手短に言います。朝一緒にいた女の子はどこですか?」
「知らないし、知ってても答える義理はない。」
「私は、あの子の親戚なんです。迎えに行ったところ見失いまして」
誰でもわかるような嘘をつきやがって、.....俺をこのまま返してはくれないみたいだな。歩く足を止め振り返る。
「やっと話してくれますか。理解が早くて助かります。」
「詳しくは分からない、でも駅の方の行ったのは見た」
うん、嘘だってバレてる。でもいい、ここはバレてもいい大事なのはその後だ。
「わかりました。ありがとございます」
その男はペコリとお辞儀をし駅に向かった。あれ?なんか信じちゃったんだけど?上手くいくもんだな。...帰るか。歩き出す。しばらくして家の前に来た。
「......」
俺には関係ない、そもそも被害者は俺だ。何も分からずいきなり巻き込まれただけだ。そうだ、関係ない、関係ない...。ああー!クソクソクソッ!どうなっても知らんぞ俺!駆け出す。駅?いや、駅にはいない。クソ!連絡先交換しとけばよかった!...そんなコミュ力ないけど。走りながら腰のベルトに手をかざす。よし、今日は持ってた。学園に向かって走る。何処だ?何処に居る!わかるわけない今日あったばっかりでなんで追われてるかも何もかもわからない。嫌な予感ばかりする。走ってる時とある廃墟に目が止まる。なんだ?微かに物音がする。取り壊しの予定日は2か月も先、誰かいるのか?こんな所に?...行ってみるか。関係者立ち入り禁止の看板を無視し入っていく。この廃墟は元は何処かの工場だったみたいだ、結構広い。身を潜めながら工場の扉の前までいき中の様子をうかがう。
「いい加減にしてください、何が不満なんですか?」
「何もかもよ!あんた達の全てが嫌!もう、構わないで!」
「あなたに拒否する権利なんてないですよ。それにここに来たってどうやって暮らすのです?家は?食事は?」
「そ、それは...」
「さぁ、一緒に戻りましょう。食事も家もあるのですから。」
「戻らない!戻っても殺されるだけでしょ!」
この声は、神咲か!?特徴のある声だからわかりやすい。それにもう一人の声はあん時あったワックスギトギトオールバック野郎か。話の内容的に身内だと思ってたが、殺されるだの拒否する権利がないだの内容がおかしい。ゴクリッと唾を飲み覚悟を決める。俺も大概アホだな、面倒だが仕方ない。
「....多少手荒に扱っても連れもどせっと命令をもらっています。いいですか?今ならまだ許しますよ?」
「嫌よ!絶対!」
「仕方ない。我慢して下さい。」
男が歩き出す。神咲に手を伸ばした。
「女の子を手荒に扱うなよ。紳士さん。きちんとエスコートしてやるのが礼儀だぜ。」
そう言い扉から入る。やっぱり神咲だ。怪我してるみたいだな。男は俺の方を向き苦い顔をしてる。
「....あなたには関係ない。消えて下さい。」
「ああ、関係ない。」目線を男に合わせ神咲にゆっくりと歩み寄る。神咲は「え?!なんで..!」っと驚いてる。
俺は少しキメ台詞言おうと考えながら、
「神咲が気になってな、あと連絡先教えろ。」俺にしては上々だな。神咲は顔を赤くして「え....?気になる?それって....」下を向いてしまった。なんかまずったか?もっと気の利いた台詞言えないとダメだな。これだから友達が龍二だけなんだよな〜。神咲の前までいき男と向かい合う。
「その子を渡して頂ければこの事は水に流してあげます。」
「どのみち俺を始末するつもりだろ?なら取れる選択肢はただ一つじゃねぇか!」
俺は駆け出しその男の顔面に右ストレートを入れるが、左手で押さえられる。左で顔を狙ったがかわされ、腹を殴られ、右膝を腹に入れられる。うっ...!しまった!その男は握ってた俺の右手を離し蹴り飛ばす。1mぐらい吹っ飛ばされ作業台らしき場所にぶつかり派手な音がなる。
「大丈夫?!」
神咲が駆け寄ってくる。大丈夫?ハハ...、笑わせないでくれよ。大丈夫なわけないだろ?
「ああ、大丈夫だ。神咲は離れてろ。」
「やっぱり無理よ!如月君は逃げてここは私が!」
「おまえにどうしろって言うんだ!」
立ち上がり一歩前に出る。
「神咲様の言う通りですよ。神咲様の方がまだ勝ち目があります。」
「そうかよ」
神咲に小声で「まぁ、見てな」っと言い、男に向かい合う。
「まったく、手間を取らせますね」
俺とその男は走り出す。相手から仕掛けてくる。右で殴ってくる。一歩引いて避ける。?!いつの間にか距離を詰められる。左手で胸ぐらを掴まれた。なんて馬鹿力だ!持ち上げられてる!そのまま俺を殴ろうとする。
「おい、オールバック野郎。その手離すなよ」
俺は右蹴りで男の脇腹を蹴る。効いたのか胸ぐらを掴む手を緩める。
「離すなって言ったろ?」
俺は緩む手を握り離さないようにする。男は俺の腹を殴ろうとしてる、だがまだ腹のダメージが残ってるようだな。遅いぜ!渾身の一撃をその男の顔面に叩き込む。さらに、お返しに蹴っ飛ばす。俺と同じぐらい吹っ飛び倒れる。気を失ったか?顔面殴った時脳震盪でも起こしたか。近づいて確認に向かう。バン!一発の銃声がなる。こいつ!間一髪で頭を逸らして避けたが右耳をかすった!もう一発くる?!仕方ねぇ〜、久々に使うか。右手に力を込める。肉体強化。引き金を引くその瞬間。バゴッ!コンクリートがへこみひびが入る。.....やっちゃた?男は完全にノビていた。呼吸があるがしばらくは起きてこないだろう。
「あんた...、何者?」
「何者って同級生だろ?頭でも打ったか?」
「気づいてないの?あなた人間じゃないわね。」
は?いきなり人間否定されてるんですけど。なに?喧嘩売ってんの?イラつきながら携帯を取り出す。
「どこに連絡するつもり?」
「どこって...、警察だよ」
「無駄よ、警察じゃ手に負えないわ。」
どういうことだ?国家権力に逆らうことが出来るってことか?
「そいつは、悪魔だから」
「.....そっか。悪魔的なやつだったか」
「違うわよ!比喩とかそういうのじゃなくて!」
神咲は怒鳴りながらそこれへんのあらゆる物を投げてくる。あぶね!必死で避けながら「やめろ!」と連呼していたら自然と止みうずくまる。
「おい!大丈夫か!」
駆け寄り確認する。あちこち制服が汚れている。、骨折?いやさっきまで物をぶん投げられるぐらいだそれはないか。打撲が数カ所ある。右足が出血してる。撃たれたのか。さっきまでは追い詰められて気づかなかったのだろう、今緊張がとけ痛みに気づいたのか。.....仕方がない。俺は神咲の前で背中を向け屈む。
「おぶってやるから乗れよ」
「え....?」
「早くしろ」急かす俺に「う、うん...」っと言いつつもい戸惑っているので半ば強制的におんぶする。
「ひゃ..!な、ないすんのよ!」
「イテッ!やめろ!殴るな!イテって!」
「あんたが変なとこ触るからでしょ!」
「触ってないだろ!おい!暴れるな落ちるだろうが!」
「きゃー!危ないじゃない!」お前が暴れるからだろ!クッソなんでこんなやつ助けちゃったんだろう。なんとか落ち着かせられた。なんかすっごく真っ赤なんだが、真っ青よりはマシか。早く家に戻ろう、なんかすっごくいい匂いがして落ち着かない。女の子ってこんなにいい匂いなのか?なんの匂いだろう甘い匂いだ。そんなことを考えながら。家へ向かう。