第一話
7/16 下記内容更新
・レベル方式と修行方式の変更ができるように説明を変更
・アーツの覚え方についての説明を一部変更
爺ちゃんからヒュピノシスと重世界を貰ってから丁度一週間。
竜二は自分の布団に横たわり、ヒュピノシスを頭に装着していた。
ヒュピノシスの形状は、鼻から上を覆うヘルメットのような感じだ。仕組みは正直良くわからないが、このヘルメットで脳波などを読み取って仮想現実世界へ旅立つことができるらしい。
現在の時刻は、二十三時半。運用開始時からゲームを始められるように、開始三十分前からログインはできると説明書に書いてあったので、それに従って先にゲーム世界の自分であるアバターを作ってしまう予定だ。ちなみにアバターのデータは、現実と同じものを基礎として使用する予定なので、本当に短時間で作成は済んでしまうだろう。きっちり三十分前に入るのは念のためだ。
ちなみにどうやって身体データを取り込むのかといえば、この一週間の間に病院に行ってデータを取ってもらったからだ。実は、仮想現実世界へのログインには適性試験を受ける必要がある。とは言えその適性そのものはほとんどの人間にあるもので、逆に言えば稀に存在する不適合な人が仮想現実世界に入ることで重篤な障害を起こさないように、必ず事前検査が必要になるのだ。
学校でも仮想現実を使った授業はあるため、基本的なデータはある。あるのだが、今回はなにせ世界初のVRMMORPGゲームに参加するわけで、念のため最新のデータを取ってもらった。
その結果が入ったメモリーチップはすでにヒュピノシスへ挿入済みで、電源を入れて仮想現実へログインした段階でそのデータを元にアバターが自動作成される仕組みとなっている。
そこから自分の好きに外見を弄るわけだが、基本的に姿を帰るつもりはない。なにせ身長やら体型やらをいじってしまうと、現実世界との動きで差異がでるからだ。主にリーチなどが違うと絶対に戸惑う自信がある。
余談だが、ヒュピノシスを用いるゲームに関しては性別を偽ることが不可能だ。そもそも個人を認識するデータを入れないと機能しない仕組みになっているため、その元データをいじらない限りは変更ができない仕組みであり、さらに言えばそのデータは国が許可した医療機関でしか発行、及び変更できないため、必然的に性別に関して嘘は付けない。
勿論その医療機関でデータをいじれる人間が弄ってしまえば可能なんだろうけれども、そんなことをしてバレてしまえばかなり重い刑罰に処される為、基本的に行う人は少ない。
それはさておいて。早速、アバター作成に移ることにした。
ヒュピノシスの電源を入れると、耳元から睡眠誘導を行う音が聞こえてくる。目を閉じて少なくなっていくカウントを聞いているうちに――意識は暗転。気がつけば、竜二は真っ暗闇の空間にいた。
「これが、仮想空間」
『その中でも、事前のアバター設定をするための、言わば更衣室のような場所になります』
足が床についている感覚があることから、変な空間に浮いているわけではなさそうだと思っていると、自分の言葉に反応したかのように竜二では誰かの、あるいは何かの声が響く。
前後左右から反響するように聞こえてくる声のせいで、その出処はわからない。反射的に警戒して体勢を整え――自分の体が見えないが感覚的には整えているはず――周囲を伺う。
『そう、警戒しないでください。今、姿を見せます。――ライト・オープン――』
どこか苦笑いを含んでいるような声音が響くと、いきなり周囲が明るくなる。
竜二がいたのは、どうやら一辺が十メートル程度の正方形になっている部屋らしい。その中央に立っていることを確認しつつ、目の前に現れたキーボードとモニタがついた端末を確認。さらにその横、水色のワンピースを来た、僕と同年代くらいの少女がいた。
黒髪黒眼で、腰まで伸びている髪がワンピースの色に映えている。顔立ちは非常に整っており、少なくとも竜二の主観からすればとても可愛い女の子だ。
「初めまして、峯岸竜二様。私はDUAL WORLD ONLINEの導入サポートをさせていただきますAIで、スズランと申します。先程は驚かせてしまい申し訳ございませんでした」
プレイヤーではなく、人が言うところではAIのスズランは、そのアバターを丁寧に操ってお辞儀をしてきた。とりあえず警戒を表面上は解いて、スズランと向き合う。
「それは別に構わないんだけれど……。ここで、僕のアバターを調整するんだよな?」
「ええ、そうなります。こちらの端末に触れてください。表示されているのが、現在峯岸様が動かしているアバターです。現状ですと、現実世界での姿そのままですね。勿論体型などを変動させる必要はありませんが、NEW WORLDの規約上、必ず体のどこか一部分は現実世界と変化を付ける必要があります。理由は仮想世界での匿名性を高めるためですね」
「素のままだと仮想世界で何か会った際に現実世界に影響する可能性が高いってことか。姿っていう個人情報を垂れ流す事になるものなぁ」
「そういうことになります。ですので、必ずどこか一部分――オススメは顔ですが、変更されるようにお願いします。操作はそちらのパネルで出来ます。操作方法でわからないことがあれば私にお聞きください」
言われて示されたパネルに触り、スズランに操作方法を教わりながらアバターの変更を行う。
最初に変えたのは髪の色。本来竜二の髪は黒だが、それを赤色へと変える。次いで髪型をこれまでしていた短髪からやや長めの物に変更。眼の色を髪と同じ赤色へと変えて終了。人間髪型と髪色、眼の色なんかでずいぶん印象が変わるものだということがよく分かる。今は画面を通して変化している自分を見ているが、実行ボタンを押してしまえばこれが自分の姿になる。
ともあれ、入れ替えるのはこれで終了。肉体部分については一切弄らず、現実そのままにしてある。実行ボタンを押してアバターを変更。なにが変わったという実感はあんまりないが、頭に手をやると髪が伸びているのを確認できる。うん、しっかり反映されているようで何よりだ、と竜二は満足そうに頷いた。
「こんなものかな……。スズラン、重世界の運用開始まで、後どれくらい時間は残ってる?」
「そうですね、現実世界ではまだ一分もたっていませんが、こちらの世界では二十三時間半くらいですね」
「二十三時間半!? ほぼ一日じゃないか、なんでそんなに――ってそうか。現実世界ので三十分が重世界の一日になるからか」
どういう技術を使っているのかはよくわからないが、重世界は現実世界と時間の流れがだいぶ異なっている。重世界での一日は現実世界の三十分。つまり現実世界での一日が、こちらの世界では四十ニ日間、つまり約ニヶ月に相当する事になるわけだ。
「ええ、その通りです。なので後ほぼ一日残っていますが、どうなされますか? このままチュートリアルへ進む事もできますが」
「チュートリアルか……その言い方だと、受けないことも出来るんだよな?」
「はい、勿論受けないこともできます。そうですね――今確認しましたが、現在ログインしている方々の中で、アバター作成後チュートリアルを受けていない方々が全体の九割ほどいらっしゃいます。残りの一割は受けてらっしゃいますし、そもそもまだアバター作成を行っている方々も大部分いらっしゃいますよ」
おそらく、チュートリアルを受けていないのはオープンベータテストに参加していたプレイヤーだろう。事前にネットで調べた情報だと、今回重世界の正式開始に伴う第一次参加プレイヤーの数は一万人。その中で五割ほどはベータテスターと呼ばれる人たちだ。残りの五割は竜二のように初めて重世界に触れる人間だ。
ベータテスターはテスト時代のアバターデータがそのまま使えるという話を聞いたことがあるから、こうやって30分前の事前ログインを試している人はそのデータを使いたくない人か、竜二のように初めて重世界に参加するプレイヤーなのだろう。
「じゃ、とりあえず受ける事にする。VRゲーム自体は初めてじゃないが、ゲームごとにシステム違うしなぁ」
「わかりました。それではまず最初に、DUAL WORLD ONLINEで使用する名前を決めてください。決められたら、パネルに入力をお願いします」
名前。それならもう決めてあるので、さっさと入力を済ませる。
「はい、入力を確認しました。……ドランツ様、ですね」
「ああ、改めてよろしく頼むよ、スズラン」
ちなみに由来は本名から。竜二を英語に直訳してドラゴンツー、それを略してドランツという感じだ。我ながら捻りもなんにもない名前だが、単純なのはいいことだろう。
「はい、こちらこそよろしくお願いします。それでは、チュートリアルを開始します! DUAL WORLD ONLINEの世界をお楽しみください!」
スズランの声が響いた瞬間、周囲の景色が一変する。今までいたパネル以外何もなかった部屋から、机やベッドなどが置いてある一室に。
ふんわりと香る、馴染みがない部屋の匂い。外で風が吹いているのか、窓が軋む音が聞こえる。足を動かしてみれば現実と同じようにしっかりとした手応えを感じ、近くの机に触れれば気の触感を得ることが出来る。まさしく、現実にほぼ等しいと言って過言ではない。学校の授業などでVR世界に入ったことはあったが、ソレにしたってここまでリアルな感覚は得られなかった記憶がある。
「ここは……」
「始まりの町、アインザムにある冒険者用の宿屋です。プレイヤーの一人一人に一部屋が与えられています。宿屋の部屋数は見かけ上限られているように見えますが、実際はプレイヤー毎の部屋に移動する事になります。部屋自体がプレイヤーに紐付いている為、どのドアを開けてもそれぞれの部屋に繋がるようになってます」
やけに下の方から説明の声がした。そちらへ視線を向けてみると、両手を天に向けていっぱい突き出した――ようするに万歳のポーズをしたミニマムサイズのスズランがいた。なんだろう、これ。
「チュートリアルの間はこのようにマスコットモードでお付き合いさせていただきますね!」
元気いっぱい、満面の笑みで宣言するミニスズラン。なんというか、マスコットモードというその名前も頷ける可愛さだ。
「さて、では早速フィールドに! と行きたいところですが、その前にスキルの習得を行いましょう! まずは、システムウインドウを出してください。出し方は、どこでもいいのでダブルクリックです」
「ん、了解……。ほほう、こんな感じなのか」
言われたとおり指をダブルクリックしてシステムウインドウを呼び出す。ドランツのアバターが中央に表示され、その脇に各種ステータスが。さらに右端の列にはログ、スキルなどのメニューが表示されている。
ちなみに、ドランツの初期ステータスはこんな感じだ。
名前:ドランツ
性別:男
流派:無し
職業:無し
所在地:アインザム
スキルポイント:一〇
装備スキル:無し
未装備スキル:無し
称号:無し
「まずは基本的なステータスなどの見方を説明しますね。DUAL WORLD ONLINEでは、スキルポイント、スキルレベル、職業レベルの三つが数値として扱われます。今のところスキルや職業は取っていませんので、ステータスには出てきてませんね。あと体力や魔力といったデータはマスク値となって表示されていませんが、体力の数値がゼロになった場合は死亡となり、教会で自動的に復活することになります」
「その辺りは普通のRPGと変わらないか。しかし数値が見えないとはなぁ……。まぁその辺りも現実世界と似させているってことになるのか。魔力は魔法とか技を使うのに必要なんだろう?」
「はい、その通りです。では魔力については特に説明はいりませんか?」
「ああ、うん、そうだな……回復手段は? アイテムや宿で休憩っていうのがRPGの鉄板みたいな回復手段だけど、それ以外には何かあるのか?」
「魔力や体力は、それぞれ時間経過でも回復します。現実でも、休憩すれば体力回復しますからね。それと同じだと思っていただければ。ただ、アイテムや宿で休憩したほうが回復量は多いですね。特に宿の場合、ぐっすりしっかりと寝れば全快できますよ」
「なるほど。まぁ、そりゃそうか。んじゃ、次行こう。このスキルポイントってのは、どういうものなんだ? なんかすでに一0もあるけど」
「スキルを覚えるのに必要なポイントの事ですね。スキルごとに設定されているポイントを消費してスキルを覚えることが出来ます」
「ふむふむ……スキルポイントを得る方法は?」
「覚えたスキルのレベルを上げてください。レベルが一定値に達する度に、スキルポイントをゲットすることができちゃいます。スキルの取り方については、ステータス欄の項目をひと通り説明した後に教えますね」
新しいスキルを覚えるには装備しているスキルのレベルを上げるしか無い。無闇矢鱈にスキルを大量に取る事も難しそうである。
「了解。それじゃ、さくさく行こう。名前や性別、所在地なんかはいいとして……流派ってのは? あと職業」
これまでの部分はベータテストにもあったことは確認している。だが、今ドランツが上げたニつは存在してなかったはずだ、たぶん。ベータテストの時に、それが取れる場所まで攻略が進まなかっただけかもしれないが。
「そうですね、じゃあ、まずは職業から行きましょう。職業は、特定のスキルをレベル一〇〇まで上げた時に取れるようになるものです。例えば、ドランツ様は物理攻撃系のスキルとして、最初にどの武器を選ぶ予定ですか?」
「刀と徒手格闘術だな」
両方共峯岸流の主軸となる攻撃手段だ。それを外す理由がない。
「それでしたら刀の場合はレベル一〇〇になった所で剣術家見習いという職業が、徒手格闘術の場合はレベル一〇〇で格闘家見習いという職業につけるようになります」
「もしかして最初はどの職業も共通で見習いなのか?」
「はい、その通りです。職業にもレベルがあり、レベル一〇になった所でその職業は成長限界を向かえます。そしたらその上位職業に進化できるわけですね。剣術家見習いの場合は剣術家、という感じで」
その後もおおまかに説明を受けたので、要約する。
職業は同時に何個でも取ることができるが、合計レベルの上限が存在するらしい。それがいくつなのかは情報制限がかかっているということで教えてはもらえなかったが、実地で確かめろということなのだろう。ただ、上位職業に転職した段階で下位職業のレベルは合計レベルに含まれなくなる。なので一度取った職業を極める分には特に不都合がなさそうだ。
職業の効果としては攻撃力や防御力など見えないステータスに関する恩恵が挙げられる他、生産系になると使える施設のレベルが関わってくるらしい。未熟な職業だと、そもそも使えない施設とかあるという話だ。攻撃系の職業はその他にも流派に入るための条件としても挙げられるらしい。
流派の説明が出たので合わせて確認したのだが、これについては現実世界の流派と何ら変わりないようだ。この世界にも道場などがあり、生産職についてもいろいろな流派が存在する。日本で言うなら村正とか、兼定、孫六なんかがこれにあたるのだろう。ドランツとしては両方共峯岸の流派を収めているため、新しくこの世界で流派に属するつもりはない。この世界は現実世界と同等の動きが出来ると謳っている。現実で使える峯岸流の技を、どこまで使えるのか後で確認はしてみるつもりだが、まぁ、出来なかったとしても新しく流派に属するつもりは無い。
「そうだ、技についてはどうなっているんだ? ええと、なんだったか……アーツ、だったか?」
「はい、アーツですね。アーツは『レベル方式』と『修行方式』が基本的な会得方式です。また、それとは別に『スクロール方式』という人に教えてもらって覚えることも出来ます。ただ、スクロール方式は別として、レベル方式と修行方式は決めた後に変更することも出来ますが、特殊な施設でなければ変更できませんし、また其れまで覚えたアーツが使えなくなることもあるのでよく考えてから決めてください」
「用語的に大体どんな差があるのかは想像がつくけど、説明を頼む」
「頼まれました! まずレベル方式から。名前のごとく、スキルレベルに応じてアーツを覚える事ができます。現実世界で戦闘訓練などを行ったことがない方はこちらをお勧めしてますね。戦闘中の動きなどにもシステム側からのサポートがつくので、初心者でもスムーズに戦闘などを行うことが出来ます。また、魔法などのアーツを使用する場合は詠唱を行うだけで魔法を使うことが出来ます」
「逆説的に言えば、修行方式の場合は詠唱だけだと魔法が使えないのか?」
「そうですねー、使えないこともないですが、しっかりと魔法の勉强をしないと使えるようになりません。修行方式は、現実世界と同じように修行し、学び、努力をすることでアーツを身に付けることが出来ます。スキルによってアーツを覚えることは出来ませんが、逆にレベル方式で覚えるのに必要なレベルがなくともアーツを覚える事ができます。玄人思考向けというか、なんて言えばいいんでしょう……。車の運転で例えると、レベル方式がオートマチックで努力方式がマニュアルという感じでしょうか?」
つまり、やろうと思えばレベル方式の人が使っている技を真似することで覚えたりも出来るということだ。そうであるならば、ドランツとしては努力方式以外を取るつもりはない。体を使い血肉を持って覚えたものじゃないと、戦いにはあまり通用しないと思っているからだ。
というか、システムの補助がどれだけ動きに干渉してくるかわからないし、現実世界と同じように動けるらしい努力方式じゃないと正直怖い。自分の動きとシステム補助が競合起こして体が硬直したりする可能性を考えると、どうしたってシステム補助は外しておきたい。
「実際にどちらの方式にするかは、戦闘に関する所でお聞きしますね。では、次はスキルにいきましょう。システムウインドウのスキルという項目をクリックしてください」
指示されるままにクリックを行うと、様々なスキル名が並んだスキルリストが展開された。
「スキルには、攻撃系スキル、生産系スキル、行動補助スキル、防御系スキルの4つが存在しています。攻撃系スキルを装備していないと武器を持てませんし、攻撃を行うことができなくなるので注意してください」
次いで、他の三種類についても話を聞いておく。
生産系スキルは文字通りアイテムなどを生産するためのスキル。行動補助は普段の行動に何らかの効果をもたらすスキルが多いらしい。跳躍スキルを取るとジャンプ力が上がるとか、掴みのスキルで握力が上がるとか、そんな感じらしい。ちなみに一番種類が多いスキルらしい。防御系スキルはこれも文字通り、防御に関するスキルだ。属性攻撃の耐性や物理攻撃、環境に対する耐性も得れるのだとか。ただ、効果的なスキルが多いためにかなり習得条件が難しいらしい。
「スキルをクリックするとそのスキルに関する説明が出てきます。それ見た上で習得する場合は、『覚える』というボタンをクリックしてくださいね。では、まずはさっそくスキルを選んでみてください! 今のところ習得できるスキルは全てスキルポイントを1しか消費しないものばかりですので、最大で一〇個のスキルを覚えることが出来ます。勿論、全部とらないで後にとっておくことも出来ますよ」
必ず攻撃系スキルを取ることを忘れないで下さいね、と念を押してくるスズランに頷き返してスキルリストをひと通り眺める。事前に情報サイトである程度取るスキルは選んできているが、それでもその情報はあくまでベータテスト時代のものだ。正式運営になって変わっている部分も多々あると思われるので、慎重に確認しつつ選んでいく。結局、体感で二十分ほどかけてスキルを選び、ステータスが以下の通りになった。
名前:ドランツ
性別:男
流派:無し
職業:無し
所在地:アインザム
スキルポイント:〇
装備スキル:刀術 レベル一(NEW!) 徒手格闘術 レベル一(NEW!) 歩法 レベル一(NEW!) 身体能力向上 レベル一(NEW!) 動体視力向上 レベル一(NEW!)
料理 レベル一(NEW!) 鍛冶 レベル一(NEW!) 木工 レベル一(NEW!) 鑑定 レベル一(NEW!) 採取 レベル一(NEW!)
未装備スキル:無し
称号:無し
刀術と徒手格闘術は単純に峯岸流のメイン武器というか、闘法だから選んでいる。鍛冶もまた同様の理由。料理はもはや染み付いた趣味だし、この世界でもできれば続けておきたいという考えから取っている。ファンタジーの食材とか、自分でいろいろ料理してみたいのだ。
木工については木刀とか木の皿とかも作れそうだし、料理に関する食器なんかを全て自分で賄うのも面白そうという判断で取ってみた。錬金術とか心惹かれるスキルもあったけど、生産系スキルは多くても二つくらいにしておかないと、成長的に考えて大変らしいとスズランからアドバイスがあったので泣く泣く諦めた。しかし機会があれば取ろうと決意しておく。
歩法、身体能力向上、動体視力向上の行動補助スキルについては、戦闘者としてぜひ取っておこうと思っていたものだ。ベータテスト時の評判はどれもあまり良くなかったが、そんなのは関係ない。実践である程度試してみる必要はあるが、僅かな上昇が自分の命を救う場面だってあるはずなんだ、きっと。
最後に鑑定と採取。この二つについてはスズランのお勧めとして取ったわけだが、鑑定はアイテムの情報を確認したり、敵のステータスを見ることが出来たりもするらしい。成長していけば色々と便利なんだとか。採取はモンスターを倒した時のドロップ率向上とか、フィールドにあるアイテムを採取する際に品質なんかの補正がかかるらしい。
「では、スキルの習得まで終了したので、システム面でのチュートリアルは終了です。次に、戦闘システムの説明をしますね。まずは宿屋を出て、北門へ行きましょう。北門へは宿から左手にまっすぐです」
言われるままに宿を出て北門へと向かう。まだ時間的に夜中だからか、空は暗く、町は街灯によって照らしだされている。やや暗めの道を歩きながら、スズランからこの街について説明を受けていく。
『始まりの街』アインザム。全てのプレイヤーが最初に訪れる街にして、全ての基礎を学べる街。街の形は円状で、中央に噴水広場があり、北方に各種ギルド、南方に初心者宿、西方に生産街、東方に商業施設が集まっている。僕が最初に居たのは南にある初心者宿で、ここはずっと無料で宿を提供してくれる、という設定で自分のホームハウスが与えられているのだとか。
「ここが中央広場です! 正式スタートの後はここで会得した武器スキルに応じた武器を貰うことが出来ます。武器スキル毎に最初の一回は無料で、その後はお金を払うことになります。通称『武器クジ』ですね。二回目からはギルドで出来ますが、最初の一回はここでしか出来ません。街案内を兼ねた初期クエストで訪れる事になりますね。ギャンブル性が非常に高いものとなっていて、非常に性能がいい当たり武器から非常に性能が悪い外れ武器まで幅広く出るみたいですよ」
「それ、いわゆるガチャ商法なんじゃ……」
「リアルマネーが絡まないから大丈夫です! きっと! でもまぁ、実際は出てくるほぼ全ての装備を生産スキルで作り出すことが出来ますので、コンプリートに必須、というわけではないんですよ? まぁ、勿論ここでしか手に入らないアイテムも有りますけど、それ全部外れ武器ですし」
「集めようと思えば、外れ引いた人と交渉すればいいって事か」
「そうですね。ドランツ様は木工と鍛冶スキルを持っているので、材料さえあれば大概の武器は作れますし、自分で作った武器と物々交換なんてのもありですよ」
まぁ、そこまでして外れ武器を集める理由があるとは思えないが、とりあえず置いておこう。何かの機会で外れ武器を集めることがあるかもしれないしな。
そうやって会話をしながら歩いているうちに、北門付近へとたどり着く。大きめの、学校のような建物が幾つか並んでいるが、あれは北にある各種ギルドの建物だ。その中でも北門の直ぐそばにあるのが冒険者ギルド。プレイヤーが1番世話になるギルドのアインザム支店。
「冒険者ギルドでは各種武器の取り扱い何かを説明してくれます! とは言え、今回はチュートリアルなので簡単に飛ばしますね! 最低限武器を振り回せれば問題ないので」
いいのか、それで。スキル決めの時にリアルで武道を修めていると伝えているのでドランツとしては問題ないが、チュートリアル的に考えるとアウトな気もする。
「では、北門を出て一番最初のフィールド、『北の街道』へ出ましょう」
お読みくださってありがとうございます。今回から本格的に物語スタートです。とは言えまだ第一章の第一部の第一話、という事で暫くはチュートリアルが続きます。
投稿前に推敲などはしていますが、誤字脱字などありましたらご指摘いただけると幸いです。