【1】 石田彌恩の対生物兵器への認識と戦争への意識
「外敵との戦争用に作られた対生物兵器に人権はないものとされています。」
外敵。
授業で習うソレは一般市民である石田彌恩には関係のないことだった。国が戦っているらしいが、今の科学力は技術力をもってした守備能力は高いし徴兵もないため実感も危機感もない。
それでも、学校の授業では習う外敵との争い、戦っている人たちのこと。生物兵器のことももちろん習っていた。一般市民と同じ用に暮らしているらしい、学校にも通っているらしい。専用学校があるらしいが、普通の学校に通っている兵器もいるなどと、細かく教えてくれていた。この学校にも、もしかしたらいるかもしれないと。
それもこれも普通の人間から相性の良い相手を探して兵器を扱うとするルールにある。相性で選んだほうが威力が別段あがるかららしい。どのような基準で相性がいいとするのか、明確な基準はないらしい。
周りに使用者がいるなどの話を聞いたことのない彌恩からすれば小説の中の話のようだった。
戦争も対生物兵器も夢物語。
現段階で彌恩はその程度でしか感じていなかった。
-*-*-
「やっぱ、外敵とかいないんじゃないって気分」
学校から帰宅し、遠距離恋愛中の彼氏に2日に1回電話をすることとしている彌恩は自室で交際中の相手、東出充巳に電話をかけていた。
内容はいつも学校での出来事やTVで面白かった話だ。この日は授業で習った外敵について勝手な持論を話していた。
「そうかな、俺はいると思うよ」
静かな声色を聞いて彌恩はしまったと思った。充巳は外敵などの話をあまり好まない。ムッとしたりテンションが急に下がったりするのだ。
「あ、ごめん。充巳この話嫌いだったよね」
「・・・」
慌てて誤ったが充巳は黙ったまんまだった。
「ねぇ?充…
「彌恩はさ、俺のこと好き?」
言葉をさえぎるように言われた先ほどとは関係ない内容の愛の確認に彌恩はあっけにとられた。
「え?え、好きだよ?」
「愛してくれてる?結婚できる?」
こんなに不安がる人間だったろうか。そんな疑問が浮かんだが正直このまま結婚とかできたらなんて思ったこともあったため、うん、と返事を返した。
「俺もだよ」
「なにそれ、プロポーズ?」
笑い飛ばしてみたが、先ほどから変わらない静かな声色に彌恩は内心不安でいっぱいだった。
「いいね、プロポーズか。プロポーズじゃないけど聴いてくれるか彌恩。」
「俺は、俺が、彌恩の信じてない対生物兵器だ」