あなたへ、できるかぎりの贈り物
「ビィさん、勇者です」
「お待ちしておりましたよ。どうぞ」
「失礼します」
ばさばさ
「散らかっていてすみません。そこらへんにかけてください」
「あ、どうも」
「では、さっそくお話を」
「あ、はい……」
「……やはりその前に。大丈夫ですか?」
「……はい」
「そうですか。それならよいのですが、あまり無理はなさらぬように」
「ありがとうございます」
「では、話をしましょうか。あなたが盗賊にもらった玉を見せてもらえますか?」
「これですか?」
渡し。
「……これは魔法石ですね」
「魔法石?」
「まぁ、要するに魔力の石ですよ。同じ音で二種類の文字がありますが、それはこの際どうでもいいとして」
「はぁ……」
「そうですね、簡単に言いますと、これを持っていればあなたでも魔法が使えますよ」
「……え」
「まぁ、想像力があれば、の話ですが」
「??」
「……あなたは、魔力がないから魔法が使えません。それはいいですね?」
「はい」
「そしてそれは魔力の塊です。純粋な魔力、かなりの濃度ですし、強力、長持ちするでしょう」
「??」
「普通、魔力を持っていれば、自分の魔力を引きだし、それを加工して魔法を使います。これはその代りとなるのです。魔力ですから」
「あー、はい?」
「……どう説明すればお分かりいただけるので?」
「そんなこと言われても……」
「それは外付けの魔力も同然です。はい、理解してください」
「え!?」
「詳しい原理などどうでもいいんです。それを持ってればあなたもめでたく魔力持ち同然ですよ。よかったですね」
「えぇ、そんな、適当ですよ!?」
「しかも、その魔力は強いですから、使用限界があるにしても、ある程度大きな魔法も連発できます。かなり珍しいのですが、まぁ、そういうことだったと納得ですね」
「……どういうことですか?」
「さぁ?」
「……ビィさん」
「盗賊の、あなたへの贈り物ということでしょう」
「え?」
「最後の力をすべてここに注ぎ込んだ、というところでしょうか」
「盗賊……」
「あなたのために作ったのですから、その努力に応えようとしなさい」
「はい」
「では、魔法の特訓しましょうか?」
「……え、今からですか!?」
「もちろん。時間が惜しいです」
「!?」
「さぁ、行きますよ? 少し遠くの森がいいでしょうか?」
「び、ビィさん、ちょっと、え!?」
「何か?」氷の微笑
「……い、いえ、なんでも……」
「補助系魔法の特訓をしましょうね。攻撃魔法は向いてないでしょうし」
「ばーん、とか、どーん、とかやるんじゃないんですか?」
「……頭の悪そうな効果音ですね」
「……」がーん
「攻撃強化と防御力強化、それから素早さ強化、そのあたりでしょうか。よかったですね、これで下っ端騎士くらいには追いつくでしょう」
「し、下っ端……」
「レベル三が何を言っているんです? これがよくある魔法石だったら下っ端騎士にもかないませんからね?」
「下っ端にもかなわない……」
「これが使えたら下っ端に追いつけますよ? まぁ、少し頑張らないといけませんがね。筋わるそうでしたから」
「筋わるそう……」
「あなたはオウムですか、さっきから……」
「……」ぽかー
「……あなたが私の予想以上に頑張って、意外とのみこみがよく、想像以上に要領がよかったら、勝てるかもしれませんよ?」
「い、いけるでしょうか?」
「あなたの努力次第ですね」
「が、頑張ります!!」
「よろしい。では、行きましょう?」
「はいっ!!」
――――あなたが少しでも強くなれますように。今の私にできる、最大の贈り物。役に立てると嬉しいな……




