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魔国の日常  作者: 盗賊
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覚悟

『戦争を決めたのは昨日。今日は勇者と盗賊が魔王城に遊びに来ました』


 魔王城執務室。

「ハァ!? 戦争!? 何があったんだ!?」

「ま、まぁ、落ち着け」

「これが落ち着いていられるか!! 戦争だぞ、せ・ん・そ・う!!」

「いや、分かってるよ」

「なんでそんなに」「いいから落着け!!」「お……」

「ユシャちゃん、とりあえず座ろう? んで、お茶飲んで、落ち着いてね?」

「あ、ああ……」

『モーブの淹れてくれた紅茶を飲んで、落ち着いて話をすることになりました』

「で、なんだって!?」

「いや、全然落ち着いてねぇ!?」

「てやっ」ちょっぷ

「あいたっ!! なにすっ」

「バカユシャちゃんに正義の鉄槌?」

「正義ではないだろ」

「そだねぇ~」

「なんでお前らそんなまったりしてるんだよ!!」

「たとえば、今すぐ急いでどうなんの?」

「うっ」

「今焦ってても仕方ねぇしなぁ。大将はドンと構えてないとなっ」

「……」

「ちょ、ツッコミ……」

「さて、勇者。ここからが本題です」

「スルー!?」

「魔王に喧嘩しかけたのは魔族嫌いの妖精さんです。そしてその相手は勇者と仲良し魔王様。……あなたはどうする?」

「どうするって、そりゃ……」

「勇者、別にこっちに味方する必要はねぇ」

「なっ!?」

「トアル王は俺ら魔族のことが大っ嫌い。今回のことも全面的ではねぇかもしれねえが、妖精の方に味方する。ゼッタイな」

「そんなこと……」

「ありえないじゃないよ。ありえるどころかそっちじゃない方がおかしいくらいだ」

「だな」

「だからなんでお前らはそんなに落ち着いてんだ!!」

「「知ってるから」」

「何を!?」

「仕方ないってことをさ」「しょうがねぇってこと」

「はぁ!?」

「それにお前がどういう選択しようと友達だかんな。別に責めたりしないし、こっち来いとか言うつもりもない」

「……」

「お前はお前のしたいことを決めて、やれ。ただ、少なくともこっちに味方するようなことしただけで、トアル王になんか言われる可能性は大きい。だから、もう会うのはこれっきりにした方がいいかもしれねぇとは言っておく」

「そ、そこまでか……」

「そこまでだね。そうとう、あのバカ殿は根性ひん曲がってるしね」

「おいおい、そんなこと言っても大丈夫なのか、お前」

「大丈夫。僕の覚悟はとっくだよ!」

「おー、やっとあのブタから放れられんのか?」

「それは無理かもね。でも、ちょぉっといろいろ考えてる」

「そうか」

「盗賊は、どうするんだ?」

「僕? 僕は決めてるよ?」

「それはさっき言ってたからわかる。何を決めたんだ?」

「勇者、そういうのは自分で決めなきゃよ?」

「分かってる。けど……」

「俺は勇者の決めたとおりにするよ」

「え、私!?」

「……それ決めてるっていえんのか……?」

「言えるよ! 俺は命懸けて、勇者のことを肯定する。世界が全否定しても、俺は勇者の傍にいるよ。勇者を守る。勇者がやめろって言っても、俺は勇者が正しいって言い続ける。俺は、俺の命より、勇者のことを優先する。勇者が幸せになれるなら、どんな罪も被るよ。痛みも苦しみも、全部引き受ける。それが俺の覚悟」

「……」

「……」

「「……ヤンデレ?」」

「なんでそこでそうなんの!? 結構カッコつけたと思ったのに!!」

「カッコつけてたのかよ……」

「自分でいうのか……」

「はっ!!」

「「……はぁ……」」

「二人して溜息つくなぁ!!」

「てか重い……」

「つらいな勇者、こんなパーティーメンバーで」

「そうだな……」

「あらぁ、結構本気だったのに、すべっちゃったわぁ。悲しいわぁ」

「でも、まぁ、少し考えさせてくれ」

「あら、スルー?」

「おう、よく考えろ。大事なことだかんな」

「……」しょぼーん←

「うむ……」


『結局そのまま、いつものようには話が盛り上がらずに終わったお茶会』

「んじゃ、またな」

「ああ……」

「あんま考え込むなよ?」

「ああ……」

「勇者?」

「ああ……」

「……」

「……ほら、かえるよ勇者?」

「ああ……」

「「……」」

「……魔王」

「ん? どうした?」

「どうしても戦わないといけないのか?」

「そうだな、そうかもな」

「仲良し、は無理なのか? 私と魔王は仲いいぞ?」

「そうだな、難しいかもしれないな」

「なんでだ?」

「それは、昔色々あったからじゃないか?」

「色々あっても、今の私と魔王は仲いいじゃないか。昔の知らない人たちなんて関係ない」

「そうだな、それでも難しいものは難しいんだよ」

「どうしてもか?」

「ああ、でも、頑張れば今、は無理でもそのうち仲良くなれるかもしれないな」

「そうか」

「……勇者は戦うの嫌いか?」

「嫌いだ」

「そうか」

「でも」

「?」

「友達が傷つくのはもっと嫌いだ」

「……」

「魔王、私は決めたぞ。私は、お前の味方する!」

「……いいのか? トアル王がなんか言ったら、お前、人間の敵になるかもしれないぞ?」

「それでも! それでも、魔王はいいやつだ。人間の敵じゃない。だから、そんな奴に味方する私も、人間の敵じゃない! いつかきっとわかる!! そのうち仲良くなれるんだろう?」

「……そうか。ホントにいいんだな?」

「私は、“勇者”として、魔王に味方する。この剣に誓おう」

「感謝する。勇者。“魔王”として、魔族を代表して礼を言う」

「……逆にいいのか? 勇者だぞ?」

「少なくともこの城……俺の周りには人間だからって差別するやつはいねぇよ」

「……二回目で少なくなったな……?」

「……」

「……おい」

「……えへっ☆」

「おいぃ!!」

「……君たち~? そろそろ日が暮れるよぉ? てか暮れたよ?」

「え」「あ」

「てかさ、レベル三程度が仲間になっても戦力としては大して変わんないんだけどねwww」

「それを言うなぁ!!」

「た、確かにwwwww」

「笑うな!!」

「もうお決まりの展開じゃん。諦めなってwww」

「wwwww」

「これだけは諦めてたまるかぁ!!」

「でもま、ありがとよ。勇者。少し余裕出た」

 笑いすぎて出た涙をぬぐいながら、にやにや言う。

「ハ? 落ち着いてただろ、お前?」

「いや、あれでも結構頑張ってたんだぜ?」

「そうか、そうか。それならよかった!」

「んじゃ、そろそろ帰んなさい。女が暗い道歩くのは怖いからな」

「だいじょぶ。俺がちゃぁんと送ってくから」

「うん、お前も女だよな? 今、ってか、今回の話ずっと女バージョンだったよな? 俺、とか言ってるから読者きっとわかんなくなってるぞ?」

「てへっ」

「と、いうか、盗賊なら転移魔法で一発なんじゃないのか?」

「ん~? あれ結構疲れんだよね。補助道具ないとさ」

「そうだったのか? バンバン使ってなかったっけか?」

「えっとねぇ、そういう魔道具いっつも持ってたんだよね。でもさ、取り上げられちゃったから」

「取り上げられた? ……もしかしてあのブタに?」

「そんなとこ。ま、そういうわけだからさっさと帰るよ? ダッシュ、競争! よーいどんっ」

「あ、こら待て盗賊!!」

「ひゃっは~。ばいばい、魔王!!」

「おー」

「またな魔王!!」

「またなー」

 ……

「さ、仕事するか……」

 ……

「……これからが大変だよ、魔王?」




 “勇者”が“魔王”に味方した。

 魔王は“魔王”にはならない。ならせない。

 “ボス”である“魔王”はいない。ならば“魔王(ボス)”は誰?

 “魔王”は呪い。世界に必ず現れるもの。何時の世でも、何処の世でも必ず“魔王(さいしゅうもくてき)”はいるもの。それを倒してハッピーエンド。それが世界が平和に保たれる条件。

 だったら、今のこの世は?

 魔王は世界の呪いにかかっていない。“魔王(あく)”はいない。

 勇者は魔王と仲良し。“魔王”がいないから、“勇者(せいぎ)”らしく条件を満たすことができない。

 今のこの世で一番異常なのは魔王。“魔王”じゃない、魔王。

 何故? どうして? 条件が満たされない。世界が平和に保たれない。世界が崩れる。

 なんでそうなった? 誰が悪い? 常識を、世界を、壊そうとするのは、誰? 

 ――――私が……




 パスタ屋

「弟君! 大変だよ?」

「なんだよ姉貴……」

「とりあえずお帰りとか入ってくれないのかい?」

「おけーり」

「だいぶ雑だねぇ。お姉さんは悲しいよ?」

「で、何が大変なんだ?」

「あ、そうそう。赤茶荒野? マップがだいぶ変わってたよ」

「ハ?」

「赤茶荒野は広大。そのところどころに小さな森が点々としていたんだ」

「ハ?」

「いいかい? 砂漠に突如森が出現していたりするんだよ。しかも、その森にはねぇ、いや、森以外にも、川が流れてたりするんだ」

「ハ?」

「……さっきからそれしか言ってないようだけど、ちゃんと聞いてるのかい?」

「……聞いてる。聞いてるが、わけわかんねぇんだよ。大体川なんてどこから……」

「それがわからないんだよ。いきなり始まって、ブツッと途切れているんだ」

「?」

「子供がおもちゃをばらまいたようにマップが変化している」

「ってぇと、森の隣が砂漠で、砂漠に川が流れてたりすんのか? しかも、その川は流れてきた場所も、これから流れていく場所もねぇと」

「そういうことだねぇ」

「……いや、いみわかんねぇよ!!」

「だいぶ、空間魔法に愛されてる人だねぇ。これ全部魔法でどうにかしてる」

「なんだそれ」

「空間魔法は好き嫌いが激しいのに、こんなに愛されるのは、すごいことだよ」

「そうなんかー」

「適当だねぇ……」

「それしかいえねぇよ。姉貴の、魔法に愛されてるぅ、とかいうの、姉貴しかわかんねぇからな?」

「そうかなぁ? まぁ、とりあえず、これは言っといたほうがいいんじゃないかい? 地形を把握してるのはあちらさんだ。早めに、並ぶまではいかなくても、追いつけるように努力はするべきじゃないかい?」

「そうだな。しっかたねぇ。今から行ってくるから店番頼むぜ?」

「えー、もうしめちゃえばいいだろう?」

「バカやろう、もう少ししたらかきいれどきなんだよ。しめたらあれだ。事情説明はしとけ」

「お姉さん、帰ってきたばっかで疲れたよぉ」

「もう少し頑張れ。頑張ったらご褒美に、お前の好きな料理作ってやる」

「えぇー」

「ま、あと頼んだぞ」

「あ、ちょっとぉー……あーあ、行っちゃった……」

『カミスキさんは、あれですね。電波発してますね? 魔法に愛され、とか』

「うるさいよ、ナレちゃん?」

『な、ナレちゃん?』

「早く終わらせておくれ。弟君にばれないように少し休憩するんだからねぇ」

『言っちゃったら終わりだと思いますけど?』

「そこは編集で何とかしてくれよぉ」

『いや、編集とかないですから、これ』

「困ったねぇ。てことでまたねー」

『え、ちょ、いきなりやめてくださいよ!! 私の仕事なんですからぁぁぁあああああ!!』フェードアウト

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