表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔国の日常  作者: 盗賊
7/130

え……? モブAのショートターン?

「どもっ、俺は魔王様の側近をさせて頂いてるモブAだ! 以後よろしく頼むぜぇ!!」

『って、ハイ!? なんで、モブまでターン作ってんですか? モブのくせに!』

「黙れナレーター! 俺は魔王様からこのターンを頂いてるんだ! お前にどうこうする権利はない!!」

『なっ!? またあの人は……勝手なことをされると困ります!!』

「ま、いいじゃねぇか。減るもんじゃねぇし」

『減ります! なんか精神ポイント的なのが減っていきます!』

「それじゃ、回復可能だろ? ま、そういうことで、頼んだわ。今回は一人称小説タイプでいくから、ナレーターも休みっつーことで」

『私の仕事まで減ったぁぁあああ!?』

「んじゃ、今回は俺が主役! モブAのターンはじまりだぜぇ!!」

『ちょ、私の立場ぁ!?』


『ナレーターに代わって、これからナレーターまでするからなっ』

 夕日が一番輝くオレンジ色に、瞳は炎の橙色。元気印のモブA。

「何ニヤニヤしてるんです? 気色の悪い……」

「うるせぇな! 大役を申し付けられて喜ばずにいられるかっての!!」

『この嫌味な感じの嫌な奴はモブBだ。俺よりも、五年ほども先輩で、悔しいが仕事もできる。完全にすごいやつ、なのだが、そんなことは言ってやらないぜ! 調子に乗るに決まってるからな!』

 モブA とは正反対な冷たい夜明け前の群青色の少し長めの髪に、瞳は暗い氷の青。冷静な印象のモブB。

「何一人で百面相してるんだ? 気持ち悪いぞ」

「う、うるせぇ!!」

 ちりんちりん……

『これは魔王様が使ってる呼び鈴だ。盗賊作、らしい……』

「魔王様がお呼びだ。さっさと行け」

「いちいちうるせぇ! 今から行こうと思ってたんだよ!」

「だったらいちいち口答えなぞしてないで、少しでも素早く動いたらどうだ? きゃんきゃん吠える時間があったらな」

「きゃ、きゃんきゃんだとぅ!?」

「いつまでここにいるつもりだ? 魔王様をお待たせしてまで私情を優先するつもりか?」

「ぐっ……う、うるせぇ!!」

「それしか言えないのかこの駄犬」

「後で覚えていやがれ!」

「陳腐で安い言葉だな。品位のほどが知れる」

「お前こそ、嫌味なしに言えないのかよぉぉぉ!!」

 モブA、廊下を走りつつ捨て台詞。

「廊下を走るな、大声を出すな。……と、言っても聞いてないか。はぁ、あれを教育しろとは、魔王様も無理難題を仰います……」柔らか微笑。


「魔王様、お呼びでございましょうか?」

 ちゃんと扉の前で息を整え、身だしなみも整えてから扉をノックする。

「おお。客だ。茶を淹れてくれないか?」

「かしこまりました。……って」

「ハロハロ? お邪魔してマース」

「邪魔してるわね」

「なんでお前たちが!?」

「仕事の報告」

「それ以外に何があるっての?」

「スナイパーはともかく、盗賊も?」

「ま、いろいろあったの。あぁ、私はもう帰るから。んじゃ、魔王、後よろしくね」

「ああ、助かった。また何かあったらたの……」

「報酬次第では考えてもいいわよ?」

「……」

「ともかく帰るわ」

「もうくんな!」

「いやぁ、今回は悪かったって。多少は反省してるよん」

 盗賊、窓から飛び降り。

「……って、ここ三階!!」

「ああ、大丈夫じゃない? あいつ殺しても死ななそうだから」

「そういう問題じゃないだろう!?」

『ああ、やべっ! うっかり取り乱しちまった!!』

「あ、そうだ、モーブ? 盗賊帰ったなら茶はいいや。わざわざ呼んだのに悪かったな」

『あぁ!! 魔王様に名前呼ばれちまった!! 感激だぜぇぇ!! あ、ちなみにこのモーブってのは魔王様が提案してくださったのだ!! 名前ないと悲しいよな、と、とても素敵なお心で提案してくださったのだぁぁあ!! まあ、名付けたのが盗賊ってのが気に入らねぇが、それでも、楽しそうに、いいなっ、て言ってくださって、呼んでくださって、俺はもう幸せすぎるぜぇぇぇぇぇぇ!!』

 モブAの頭に犬耳、腰のあたりにしっぽ。……ぶんぶん嬉しそうに振っているが、本人に自覚なし。気持ちが昂ると出てくる。もともとは獣人系の家系らしい。

「ちょ、あたしはー!? あたしにもお茶……」

「い、いいえ! 魔王様に会えただけでも……って、何言ってんだ俺!?」

「だ、大丈夫か?」

「あぁぁぁああ!! 魔王様に心配されちまった!! 嬉しいぜぇ!!」

「モーブ?」

「し、失礼しました!! 魔王様に心配をおかけするなど、あってはならない失態! 誠に申し訳ございません!!」

 犬耳ショボン……

「き、気にするな……」

「あ、あたし戻るねー? 報告終わったしねー?」

「帰れ帰れ」

「俺も、お邪魔しないように退室いたしますが、何か御入用なものはありますでしょうか?」

「うーん、んじゃ、コーヒー。それから、ちょっと書類整理手伝ってくれるか?」

「は、はいっ、喜んで!!」


『仕事奪いかえしました、ナレーターです。このようにモブAは魔王様に心底ほれ込み、犬のように従順に、崇拝しております……』

『と、いうことで、もういいですよね!? これ以上モブにかまってられませんよ!? いいですねっ!?』

「俺まだ、魔王様の素晴らしさを語り切れてねぇ!!」

『そんなのどうでもいいでしょう!?』

「どうでもいい!? どうでもいいだと!? お前、魔王様に向かってなんてことを!!」

『あ、ああーもう!! うるさい上にめんどくさいやつですね!!』

「あんだとっ!?」

『なんですか、モブのくせに! ターンまで作ったんですからこれで満足してくださいよ! 元から予定しなかったのをわざわざ作ってやったんですからね!!』

「っ!!」

『も、もう終わりです!! あ、モブAのターンとは言いましたけど、もうBのターンは作りませんからねっ!!』

「……ほぅ?」

『あ……こ、前回のターンの盗賊ほどではありませんが、迫力が……!! あ、ちょ、こんなところで魔法使わないでくださーい!!』

「ご愁傷っ」

『キャーーー!!』

 ブツっ……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ