そろそろ……
そろそろですよ、そろそろ……重い腰を……上げなくては……
とか言って、これで心が折れたら最悪ですね。今回は頑張りますよー!!
魔王城、訓練棟裏。
「……」
『あたりは真っ暗、日がとうに暮れたころ。城にたくさんついた明かりも、裏の陰にまでは届かず……』
「っ……はぁ……」
魔王城、渡り廊下。
「? ……血の匂い?」
「モーブ様? どうかなさいましたか?」
「血の匂いがする」
「まぁ、侵入者でしょうか?」
「違う、これは……。っ!!」
「モーブ様!?」
「ディーナ、悪いけど、この後の仕事まかせてもいいか!?」
「え、ええ。それは構いませんけれど……」
「ありがと! じゃぁ、またな!!」
「モーブ様!! ちゃんと説明を……!!」
「悪い! また後で!!」
「あっ……もうっ」
がささっ
「っ?」
「騎C!! お前どうしたんだよその怪我!!」
「……なぁ~んだ、モーブか。おどかさないでよ」
騎C、見るも無残な姿?
「え、疑問形?」
白い上着は真っ赤に染まり、服のいたるところが裂けている。髪も服も、血と汗でべったり張り付き、体中に傷。血が流れている。
モーブ、それを見て少し泣きが入る?
「は、入ってねぇし!!」
「あははっ、モーブカワイ~」
「かわいくなんかねぇよ!!」
「いや、かわいぃ~よ?」
「かわいくなんか……」「げほっ」
「!! お前もう喋んなよ!! えと、えと、ば、絆創膏あるぞ!!」
「う~ん、全然足りないと思うよぉ?」
「あ、そ、そうだよな!! え、じゃ、じゃぁ、どうしよう!?」
モーブパニック状態。
「お、落ち着いてよ」
「落着けねぇよ!! 同僚がこんな時に!!」
「こういうのって、当事者よりもまわりのがパニックになるよねぇ」
「お前なんでそんなに落ち着いてんだよ!!」
「う~ん、慣れてるから? ほら、俺一応騎士だし?」
「でも!!」
「誰? モーブ、と、誰?」
「!?」
「え、盗賊さん?」
「あ、騎C?」
がさがさっ
「……」さぁ……っ
「ちょっと、盗賊さんまでパニックにならないでよ?」
「……なりはしないけど、これは……」
「盗賊、どうしよう!?」
「モーブ、急いでぬるま湯と清潔な布」
「わ、分かった! どんだけいる!?」
「そこそこ?」
「もっと詳しく!」
「冗談。とりあえず、盥二杯くらいあればいいと思う」
「分かった!!」
「そこのパシリ使っていいから」
「誰がパシリか!!」
勇者登場。ついでに魔王も。
「ついで? 俺ついでなの!? 俺これでもまお……」
「魔王、炎系の魔法でさっさと湯沸かしてくるといい」
「マジでそんな扱い!?」
「……モーブ以外は、すっごいいつも通り……」
駄弁ってる間にモーブは勇者連れて厨房の方へ。
「やっぱ魔王はこっちのこってこいつ運ぶの手伝って。僕一人はやだ」
「えー、いいじゃん盗賊さぁ~ん」
「重い」
「えぇ?」
「はいはい。わかったから、そこ、じゃれんな」
「じゃれてない」「じゃれてませーん」
「「……」」
「なんなんだお前ら!」
「てか、一人で歩けるよ盗賊さん?」
「足に穴あいてるやつが何を言う」
「穴!?」
「あれ、ばれてた?」
「……魔王右ヨロ」
「おけ」
「……すみません、へーか」
「……でかい……」
「だったら僕のがよっぽど」
『だいじょぶですか? 頑張れですよぉ二人ともぉ♪』
「ナレーさん、うざい」
「ナレーさん、あとで覚悟しといてね~」
「ナレー、腹立つ」
『きゃっ、応援してたのに散々な言われようです!』
「「「応援してたの?」」」
『……すみませんでしたぁ……』
訓練棟医務室。
「モーブが来るまで、とりあえず、止血しとくから」
「なんかごめんねぇ、盗賊さん?」
「……」
盗賊、騎Cに手をかざして、目を瞑る。手に薄いオレンジのような光が宿る。
「……とりあえず、だから。止血だから。治してるわけじゃないから、おけ?」
「よくわかんないけど、治癒とは違うの?」
「そそ」
「盗賊、大丈夫なのか?」
「キズ、多い。血、止めても、問題多し」
「そうか」
「足ぐっさりいかれちゃったんだけど、騎士やめなくても済みそう?」
「……騎士やりたい?」
「そりゃもちろん」
「……」
盗賊、目を合わせる。
「真剣」
「うん」
「……保障してあげる。大丈夫」
「よかったぁ」
「よかったな」
「はい」
「盗賊! お湯と布!!」
「はぁはぁ……」勇者疲れ気味
バンッ!!
「も少し……よし、んじゃ、モーブ、体拭いといてあげて。血べとべと、気持ち悪そう」
「それだけか?」
「うんうん。そんで、薬これと、包帯きつめにまいといて。全体的に? あと、かえの服もってきたほがよい? シャツとズボンくらいなら、少し小さくてもいいならあるけど?」
「うーん、んじゃ、お願いしようかなぁ。盗賊さんに部屋はいられると漁られるし……」
「漁んないし!! はい、じゃあこれね!!」
「……脱ぐのも一苦労しそうだなぁ……」
「もう、切っちゃえばいいんじゃない?」
「隊服……」
「どうせしばらく出れない」
「そうだねぇ……」
「隊服なら注文しといてやるから」
「ありがとうございますぅ!」
「てことでよろ。んで、ユシャちゃんとマオちゃん、ちょいちょい」
「ん? なんだ?」
「どうした?」
ぱたん
「……」
「なんだよ」
「ユシャちゃんは女の子だから外に呼んだだけw」
「おい」
「というのは半分冗談で」
「半分だけ!?」
「マオちゃん、騎C強い、負傷、とても不可思議」
「……片言やめろ」
「強い騎Cが、怪我を負わせられる。それはとても大変」
「まぁ、そうだろうな?」
「……だが、それ以上に強いやつが現れたのかもしれないだろ? もしくは多勢に無勢的な?」
「どちらにしても大変。敵がたくさんも、敵が大勢魔国に入り込んでいるのも」
「た、確かにな……」
「いや、よっぽど大勢入り込んでる方がまずい。そんな報告受けてない。一人二人ならまだ見逃してる可能性もあるが、」
「強者がやられるほどとなると、異常」
「……」
「……えんじぇる様とやらか?」
「うむ」
「誰だ? えんじぇる様って?」
「……そういえば、勇者いるときにそんな会話した覚えがない」
「確かに!」
「私だけのけものか!?」
「ごめん……」
「否定してくれ!!」
「……w」
「……www」
「「wwwww」」
「お前らいい加減にしろぉ!!」
「すまんね勇者。ともかく、敵の名前だよ。キノコの里をうんぬんかんぬんだったかな?」
「あー、そう言えばそんなことも……」
「えんじぇる様とやらなんだけどね、空間系の魔法得意そうだよ」
「空間系ってぇと、転移魔法とかそうか」
「そそ」
「??」
「魔力ゼロのユシャちゃんにはわかりにくいかもしれないけど……」
「ぶはっwww」
「こらぁ!!」
「瞬間移動とかもそういう系。でも、気づかれないようにするのは普通ありえない」
「だが、この前はそうされた、と」
「そそ。だから今回も、そんな感じで送り込まれた可能性大」
「だが瞬間移動は高位なものだと聞いたぞ? ぱっとできるものではないと」
「魔方陣使えば大量かつ、安定にできる。その上相手は相当手練れ?」
「なるほどな……とりあえず、警戒できるだけしとくわ」
「それが賢明。……勇者、気を抜くなとは言わないけどさ、絶対に油断はしないでね」
「勇者が一番弱いんだかんな」
「……心配してくれるのはうれしいんだが、とても複雑な気分になるぞ……」
「だって」
「なぁ?」
「「勇者が弱いからいけない」」
「お、おまえら……」
「「ぶふっwwwwwwwwww」」
「今日こそゆるさーん!!」
「……何騒いでんだ勇者?」
「も、モーブ?」
「おわったぞ?」
「了解」
「あ、でも、足の、どうしていいかわかんなくて……」
「うーん、まあ、いいよ。薬とか、どうした?」
「自分でやってた」
「そかそか。だいじょぶだいじょぶ。んじゃぁ、モブモブ、もいいよ。マオマオとゆぅゆぅとごはん?」
『なんかめちゃくちゃ繰り返し多いですね……』
「……モーブがめっちゃモブになってもーた……w」
「お前たち、緊張感を持て……」
「なんか手伝うぞ? 俺らも」
「そうだぜ!!」
「いいよ。だいじょぶ。てかやることもないし」
「そっか。んじゃ、俺ら行くな」
「うんうん。行ってら?」
「……ちょっと待った」
「ナニナニ? ユシャちゃん♪」
「盗賊、お前が治癒系魔法できることは知ってるが、普通に残る感じなのか?」
「ちがう、違うの?」
「あんなに騎C嫌ってたのにか?」
「嫌ってるわけじゃないよ? 苦手なだけさ」
「違いがわからないんだが!」
「ちがう、違うよ?」
「え、だって……」
「ほら勇者行くぞー。モーブも」
「え、ちょ」
「今日のデザートはなんだー?」
「え、えっと、チーズケーキです」
「楽しみだなー」
「僕のも残しといてー!!」
『……なんとほのぼの?』
「騎C、だいじょぶ?」
「まぁね。鍛えてるし」
「……貧血」
「そりゃまぁね?」
「……治癒魔法、かけるよ?」
「ありがとぉ~」
「……私の治癒魔法、自然治癒力を高めるもの。だから、傷、治す、少し違う?」
「なんでそんな片言な感じなの?」
「……気にする、負け」
「……」
薄い黄緑色の光、先ほどと同じような体勢。
「足の傷、重点」
「うん」
「さっきの魔法は、これと違う」
「え?」
「さっきのは、疑似的に、一瞬で治す」
「あー、どういうこと?」
「傷、血管とか? の、裂け目や、穴を、魔法で、疑似的に元通り」
「?」
「……赤いパズルがあったとして、そのうち一つのピースがなくなって、そこに、素材がだいたい同じの青いピースを当ててみた感じ?」
「うーん、なんとなく?」
「赤いパズルは治っていくから、そしたら青いピースは縮んでいく。周りから治るとしてね? 最後には赤いパズルに元通り」
「へー」
「でも、それは結構疲れる。それにもろい。似せても偽物だから。だから、治り遅いけど、こっちの魔法にします。普通のけがと同じで、治そうとしないと治りませんのでご注意を」
「はいはーい」
「はいは一回で」
「はい」
「……」
「……」
「……」
「……ねぇ、盗賊さん?」
「?」
「俺襲ったの、たぶんえんじぇる様とやらなんじゃないかなぁ?」
「どうしてそう思う? てか、外の会話はちゃんと聞こえてた認識でオケ?」
「うん。はっきり聞こえてた。ほとんど」
「まぁ、いいんだけど」
「それで、理由? キノコ軍団に襲われたから、じゃだめ?」
「……ほぼビンゴ?」
「盗賊さん、そこで一つお願いがあります♪」
「……やだな。騎Cが敬語なんて、絶対なんかあるに決まってる」
「もちろん♪」
「……」
「……」
「……気が向いたら」
「よかったよかった。絶対気が向くでしょ?」
「知らないけどさ」
「あのさ、俺だって結構ギリギリだったの。やっぱりさ、物理攻撃じゃ、いろいろ無理があるんだよねぇ」
「そうかな?」
「相手が普通の人間とかならいいけどさ、魔法が使えたり、防御力が高かったり、攻撃したらなんかスキル発動! なんてことになったら確実にアウトじゃん?」
「まぁ、そうだね。しかも近距離だもんね、騎Cは」
「そういうこと。だからさ、魔王様に、そんなことがないようにしてほしいんだ」
「どういうこと? 魔王は強いし、守ってくれる人だっていっぱいジャン」
「そうだけどさ、なんか、俺、わりと最強じゃん?」
「自分でいうの?」
「えへっ。じゃなくて、えっと、でさ、でもさ、俺死んだらー、なんて思うとさ、なんかさ、悲しくなるって言うか……」
「騎Cもそんな感情あったんだ?」
「ひっどーい! これでも血も涙もあるんだよぉ!」
「え?」
「ひどいなーもー」
「で?」
「まぁ、そういうわけでさ、ちゃんとへーか守ってねぇ?」
「なんで俺に言うの……」
「盗賊さん強いし~、何でもアリだしぃ~」
「……マオマオは俺がなんかしなくても大丈夫だよ。周りにたくさん人がいる」
「……それは盗賊さんもだからね?」
「……」
「へーかも、勇者も、モーブもいるでしょ? それからこぉんな近くに、俺が……」「それいらない」「えー」
「……もしかして、約束気にしてる?」
「……」
「気にしなくてもいいのにね。そんなキャラだったんだ?」
「へーかが気にするよ。俺、勇者にも恨まれたくもないからね」
「……俺だって、見せたくないし、見られたくないよ。だからちゃんと後始末までしっかりしてよ。誰も気にしないようにね?」
「……取り消す気ない?」
「ない」
「でもさ……」
「はい、終了。今日はもう無理。とりあえず、ゆっくり休んで栄養とってくださいな」
「まだ話は……」
「おわった。約束は約束。違えることは許さない」
「……」
「大体あなたが先に賭けようて言ってきた。あとからそれはずるいよ」
「でもさぁ~」
「とにかくおしまい。ナレーさん、締めて」
『……え、おしまいって、そっちですか!?』
「あっちもこっちも。そっちもどっちも?」
『え、エェ~? まあ、いいです。締めろと言われたので締めますよぉ~。お疲れ様でした~』
『……なんかすっきりしませんねぇ……』
「強制終了という名の荒業」きりっ
「荒業って自覚があんならやめようよ」
「止めない」
「エェ~?」
「ちゃんちゃん♪」




