魔王城裏話・其の五 モーブと絆創膏
『これは昔のお話です。ビィさんの家に預けられたミニモーブのお話』
「オジサマ!!」
「どうしました?」
「あそびましょう!!」
「……いえ、あの」
「あ、あそびましょう!!」
「今は、ちょっと……」
「あそんでくれないのですか……?」うりゅ
「も、もう少ししたら一段落しますから、それまで待ってもらえませんか?」
「はいっ!!」ぱぁ
「……」
『数分後』
「ふぅ……」とんとん
「おわりましたか!?」
ずっとお座り姿勢でおとなしく待機していたモーブ。
「ええ。今回はちゃんと待っていたのですね」
「えらいですか!?」
「偉いです」
「!!」ぱぁぁあああ!!
『は、花が舞ってる幻影が!!』
「オジサマ! あそびましょう!!」
「ええ。いいですけど、何をして?」
「えっと、えっと、かけっこしましょう!!」
「かけっこ?」
「あ、えっと、えっと……」
「……」
「……えと、あの……」あわあわ
「……とりあえず、庭にでも行きますか?」
「はいっ!!」
『庭ですぅ~』
「ボール! オジサマ、ボールです!!」
「私がボールなわけではありませんよ?」
「わかってます! なげてくださーい!!」
「はい。いきますよ?」
「わんっ!!」
「……」
『なごみますねぇ』
「……」
『れ、冷気が! な、なぜ!?』
「なんとなく、ですか?」
『やだぁ、みんなでそんなあやふやで攻撃しないでぇ!!』
「うきゃっ!?」べしゃっ!!
「モーブ!?」
『あらま、顔から豪快にダイブしてましたよ? だいじょぶです?』
「オジサマぁ……」ふえ……
『あらあら、ドロドロですねぇ』
「大丈夫ですか? ……鼻の頭すりむいてますね……」
「いたいですぅ……」ぐずっ
「こっち来なさい。手当しましょう」
「はい……」
『医務室的な?』
「……」
大きめの盥に水を張ったものを運ぶビィ。
「オジサマだいじょうぶですか?」
「大丈夫です」
ふきふき。
「傷はここだけですか? ……膝小僧も擦り剥けてますね」
「うぅ……」
「絆創膏はっておきますから」
「ばんそうこう?」
「そう、絆創膏。これです」
「ぅ?」
ぺりっ、ぺたっ
「う!?」
「大丈夫ですよ」
「……これは、ちいさくて、かってにはりつくほうたいなんですね!!」
「……まあ、そう、言えなくとも……ないですか……?」
「すごいです!! ぼくにもはらせてください!!」
「いいですけど、傷からはみ出さないよう」「いたっ」「に……と、言ってるそばから……」
「キズにもはりついてしまいました! いたいです!!」ぐずっ!!
「これからは気をつけなさい」
「はい」しゅん
「はりなおしますから、こっち向いて」
「はい」
ぺたっ
「これでよし。……いいですか? 毎日できるだけ取り換えて、蒸れないようにしてください。それから、お風呂上りには傷はちゃんと乾かして。それから、かさぶたができたらとっておくのですよ?」
「わぁ~!!」きらきらきらきら
「……聞いてましたか?」
「あ、す、すみませんっ!!」
「そんなに珍しいですか?」
「はじめてみました!!」
「そうですか」
「はいっ!!」
「……そんなにですか」
「はいっっっ!!」
『とまあ、このようなことがありまして……』
『現代へ……』
「いったーい。指切ったぁ!!」
「何してんだよスナイパー!!」
「この紙がいけないんだわ!!」
「……いや、お前の不注意!!」
「えぇ~」
「えぇ~、じゃ、ない!!」
「もう! 大体あたしは暗殺者で、デスクワークなんて知らないっての!!」ばさばさばさっ
「八つ当たりすんな!!」
「いたーい!! また切ったぁ!!」
「まったく。ほら、手ぇ出せよ」
「?」
ぺりっ、ぺた。
「あ、ありがと。ってか、ばんそこ携帯してんの?」
「そりゃな」えっへん
「女子力高ーい」
「女子じゃねぇし!!」
「ありがとー」
「べ、別に、そんな大したことじゃねぇし!?」
「んじゃ、もう少し頑張るわ」
「お、おうっ! 頑張れよ!!」
「……はぁ、やっぱ帰りたい……」
「頑張るって言ったそばからかよ!?」
「めんどくさ」
「おいぃ!!」
「ウソウソ。頑張るって。女子力高いモーブのために?」
「女子力なんて持ってねぇから!!」
『……なんか、絆創膏よりも、モーブの女子力の方が目立ったような? ともかくこれにて終幕お疲れ様です』




