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魔国の日常  作者: 盗賊
51/130

騎C、実家に帰ろう……

今回なんか、すごく長くなってしまいました……すみません。

盗「ごめんなさーい」

魔「おま、反省してるか!?」

盗「反省はしてます。後悔はしてません!!」

魔「おいぃ!?」

 ……こんな人たちですが、これからもよろしくお願いしますー……

『明々後日です……。盗賊が騎Cと約束してしまった日です』


『前日です。電話にて』

「いやぁ、僕だってね? いろいろ用事があるわけよ?」

「えぇー、でもさぁ、遊ぶなら朝早くから、夜遅くまででしょぉ!?」

「今日、夜遅いんだよね?」

「約束したじゃぁん!!」

「いやいやいや!! 朝早くからなんて言ってねぇし!?」

「えぇー? 朝早くから、は、常識だから、言わなくてもわかるかなぁって?」

「分かるかよ!! わかんねぇよ!! 常識じゃねぇモノ!!」

「えぇー?」

「できるだけ朝急ぐけど、朝日とともに、なんてのはぜってぇむりだかんな!?」

「あ、まってよぉー」


『てな感じで、約束の日にかえってきます……思考が』

 魔王城前。

「ふあぁ~」

「あ、魔王。早いねぇ」

「んあ? 盗賊? お前こそどうしたんだ? まだ六時前だぞ?」

『朝ですよ? ちなみに冬っぽくなっております。そろそろ季節感出したいです……』

「僕は騎Cが、ちょっと、ネ……」

 盗賊、黒のローブ、ゆるふわウェーブヘア。つまり、初期バージョン。

「ああ、お前も大変だなぁ」

「魔王、上司だろ? 何とかしてよ……」

「無理だっての」

「ちぇっ」

「盗賊ー、魔王ー!!」

「勇者? どうしたんだ?」

「ユシャちゃぁーん!!」

「どわっ!?」

 思い切り勇者に飛びつく盗賊。

「どーしたのー?」

「ああ、走り込みだ」

「……」

『体力だけ、どんどん上がっていきますね?』

「そんなことないぞ! バド力も地道にあげている!!」

『……勇者、バド力、五十三』

「ほらぁ!!」

「本筋上げろやレベル三ー!!」

「久しぶりにバドレベル出てきたけど、それいらなーい!!」

「いらないとはなんだいらないとは!!」

「「必要ないだろ(でしょ)!!」」

「バドをバカにするなー!!」

『……こんなところで油売ってると、騎Cになんか言われかねませんよ?』

「チッ!」

「あー、今日中に遊びが終わったら、おやつ一緒に食おうな?」

「終わると思うのかよー(泣」

「……」

「も、モーブにも言っといてやっから! お菓子だけは確保してやるから!!」

「うー……」

「と、盗賊、ガンバ……」

「勇者ー!! 他人事だと思ってぇー!!」

「あー、よしよし……」

「うぅー……」ぎゅっ

 話し込んでいる三人の前に、一台の車が止まる。

「え、アレ、ベ○ツ? ベ○ツ?」

「魔王、二回も言うな。そして、ここファンタジーだろ? なんで車?」

「そういうのは作者に言えよ」

「いや、僕も知らない。ほんとになんで車? まだ開発されてないよね? それと魔王、伏字やめようね?」

「じゃあ、思いっきり。ベン……」

「そういう意味じゃねぇよ!!」

 こそこそ話している間に、ドアが開いて、老齢の紳士が下りてくる。

「申し訳ございません。少しの間でいいですので、こちらに停めさせていただけますでしょうか?」

「あ、ああ、いいぞ」

「……魔王様、でしょうか?」

「あ、ああ、そうだが?」

「ああ、あなたが!! お会いできて光栄でございます!!」

「え、あ、ああ、そう?」

「魔王、大丈夫か……?」

「えぇ?」

「……」

「もしや、こちらは勇者様?」

「ああ、そうです……」

「まさか、魔王様と勇者様に一度にお会いできるなんて!!」

「「……」」

「……知り合い?」

「いや……」

「ああ!! これは失礼いたしました!! 私、セレスト侯爵家の執事でございます」

「セレスト? 初めて出てきたな、名前っぽいの……」

「そこじゃないでしょ!」

「どういう人なんだ?」

「北の、湖の都? まあ、その辺の領主か?」

『魔界は魔国だけではないのですが……その辺の設定は細かく決めてないのです。とりあえず、魔王城があるのは魔界にある魔国の王都ですよー。侯爵領がある北には湖や高原が広がってますー。まあ、田舎ですねー』

「おい……」

「いえ、その通りでございますよ。……ところで、騎C坊ちゃまはいらっしゃいますでしょうか?」

「き、騎C坊ちゃまぁ!?」

「ぼっちゃ……」

「え、もう一回いってもらえるか? 誰だって?」

「騎C様でございます」

「き、ききき、騎Cが、ぼ、ぼぼぼ、坊ちゃまぁ!?」

「盗賊……」

「だって、あの、あの! 騎Cだよ!?」

「え、ナニー? 呼んだぁー?」

「「「!?」」」

「盗賊さぁん! 遅いから迎えに来ちゃったぁ♪」

「騎C!!」

「坊ちゃま!!」

「!? ……」

 老執事を見た途端、表情が一瞬驚いたものになり、その後すべて消える。

「……」

「坊ちゃま?」

「何しに来た?」

「……奥様がお倒れになりました」

「それで?」

「坊ちゃま……」

「俺には関係ない」

 いつもとは違う、暗い、無表情に、低い声。軽い調子はどこへやら。

「……騎C?」

「! ……なぁに、盗賊さん?」にっこぉ

「大丈夫?」

「心配してくれんのぉ? 俺のことが気になるんだねぇ?」

「……」

「……そこで黙られると困るんだけど……?」

「騎C」

「へーかぁ、どうしましたぁ?」

「命令だ。今すぐ、いってやれ」

「えぇー? 今からお楽しみなんですけどぉ?」

「い・け」

「……御意」

 不服そうに、離れていく。

「んじゃ、へーかにも言われましたし、さくっと行ってきますぅ! 盗賊さん、俺から言ったのに、約束守れなくてごめんねぇ―? それじゃあねぇー!!」

 いつもより元気のいい軽さで手を振って車に乗り込む。

『な、何が……』

「……」てとてと

「待て待て盗賊」

「……いてき」

「どこ行く気だ」

「……魔王、関係なし」

「関係あるだろ? とりあえず、来い」

「……」

「こ・い」

「……了承」

 二人、画面上から退場。

『……勇者、騎Cが出て来てから空気でしたね……』

「ほっとけ」たったったっ

『走り込み続行ですね。頑張ってくださーい』


 セレスト侯爵邸。

『ついたのは昼過ぎくらいでしょうか? まあ、遠い感じ? あれ、結構速い魔導車らしいっすよ? 魔導車については……作者に聞いてください。侯爵邸周辺はど田舎です。緑と湖に囲まれた、自然豊かなお邸と広い領地です』

『知らせを受けて、邸に到着。奥様、つまり、騎Cにとってはお母様、が、お迎えに出てきました』

「倒れられたと聞いたのですが、元気そうですね」

「ええ、皆が大騒ぎするんですもの。話が広がってしまってすみません」

 優しそうな、セレスト侯爵夫人。小柄で、柔和な笑顔。髪は柔らかな白。上品なドレスに身を包んでいる。

「でも、せっかく来られたんですもの。ゆっくりしていって? そうだ久しぶりのおうちでしょう? あなた、なかなか帰ってきて下さらないんですもの……」

「申し訳ございません。責任ある立場を任されていますので、そうそう暇がないんですよ」

 いつもとは違った種類の笑顔を張り付けて、言葉だけを飾り付けて伝える。中身はない。

「そうなんですか? それは、頑張らないといけませんねぇ」

「ええ」

 沈黙。

「ねぇ、ちょうどお昼ですし、お腹もすいたでしょう? 久しぶりに一緒に食事でも……」

「いりません。空腹を感じないので」

「でも、食べないと体によくありませんわよ?」

「それでも、いらないんです」

「でも、」

「いりません」無表情

「……」

「……」

「……ごめんなさいねぇ、久しぶりに会えたものだから、嬉しくて……嫌な思いさせたかしら?」

「いえ、お気になさらず」笑顔

「そう……。ああ、あなたの部屋はそのままにしてあるから」

「もう捨ててしまってよかったのに」

「そんなわけにはいかないわ! あなたは私の大事な家族ですもの。いつでも帰ってきていいのよ?」

「……失礼します」


『わぁ! なんですか今のひんやり会話!! ビィさんもびっくりの冷たさですよ!?』

「うるさいよ、ナレーさん?」

『おや殺気です! でも、なぜか慣れ始めております! あまり恐怖を感じません! そのことに恐怖です!!』

「うるさいってば。聞こえなかった?」

『素敵なお母様なのに、なんて嫌な息子!!』

「……俺のじゃない」

『え?』

「本当の親なんて、顔も見たことないし。もうとっくにくたばってんじゃない?」

『え、それは……』

「俺スラム育ちだよ? 知らなかった?」

『しりませんよ!! なんであんたそんなにキャラ濃いいんですか!?』

「知らないよ!!」

『と、いうことは、お義母様?』

「まあ、そうなるね。騎士になるためには、多少は後ろ盾が必要でさ。そのために嫌な役をかってくれたいい人だよ」

『なのにあの態度……』

「だって、形式だけ、息子になったって、ホントの家族じゃないじゃん? だから、無理して距離縮めようとしなくてもいいのに……」

『それ、本気で思ってます?』

「わっ! 何? 珍しく怖い声!」

『……私だって、怒るときくらいあります』

「……うるさいよ。人のプライベートまで首つっこんでこないで」

『はいはい。私はナレーターですから? 話の進行上必要なだけのキャラですよっと』

「何が言いたいの?」

『別に?』

「……」


 夜。

『少し前』

「坊ちゃま、お食事のお時間が……」

「いらない」

「坊ちゃま……」

「いらないって。執事も、俺なんか気にしなくてもいいよ?」

「そうはいきません」

「俺は気にしない」

「私は気にします」

「……」

「朝から何も食べていないのでしょう?」

「……いらない」

「坊ちゃま」

「いらないよ」

「……はぁ、わかりました。あとでお夜食か何かお持ちいたしましょうね」

「……ありがとう」

『お夜食を持ってきた後くらいの時間……』

『なんで食事拒否したんですか? そんなおなかペコペコのくせに!』

「ふぇ?」

 口いっぱいに詰め込んだ栗鼠状態。

『そんな可愛いもんじゃありませんが』

「ん、何?」

『いえ? 別に?』

「ふーん?」

『おいしいですか?』

「おいしいよ。……でもさ、あの人たちと食事してると、味わかんないんだよね……」

『まったく……』

『騎Cはいったん部屋に引きこもって、それからは一歩も外に出ませんでした。誰が来ても何が来ても無視か拒否です。最悪ですね』

「うりゅふぁいよ」

『せめて口のモノのみ込んでから話してくださいねー』

「んぐっ!」

『水水!!』


 深夜。

 騎C、机の横のランプをつけて、読書中。

「……」

『なんかインテリに見えますが……くっ! 外見詐欺だぁ!!』

「うるさいって。今日だけで何回言わせんのぉ?」

『あんたが勝手に言ってんでしょうがぁ!! 外見だけは爽やかでかっこいいなんてぇ!!』

「もう無視でいいよねぇ?」

 ……

「……?」

 気配を探る。

『なんですか?』

「黙ってて」

 ランプを消して、一度ベッドに近づき、わざときしませる。その後、剣を取って、ドアに気配を殺しながらゆっくり近づく。

『あ、部屋説明! 二間続きのへやです。廊下から入ると、リビング的な役割のへや。横の扉から、ベッドのある部屋に出ます。その部屋には本棚と、机と、ベッドのみです。今はこっちのへやですね。リビング的な部屋とつながるドアの横に今騎Cはいます。ドアは閉まってます』

「……」

 そっとドアノブに手をかける。

 一瞬静止。

 バンッ!!

「うわっと!?」

 ドアと一緒に何者かが転がり込んできた。倒れこむ。

 騎Cは、問答無用で剣を振り下ろす。

「ちょ、待て! 俺だよ俺!!」きぃんっ!!

「? ……ああ、なんだ、新手のオレオレ詐欺かぁ。これで遠慮なくヤれるねぇ♪」ぶんっ!

「ちげえっての! わかっててやってるだろ!? ってか、ヤるって何、ヤるって!?」バキッ

 何者、ランプを最大光量でつける。

「やぁ、盗賊さん?」

「人切り殺そうとしておいて、何がヤァ、だよ!!」

 ストレートロングの銀髪に、黒のストール、黒のチューブトップ、ズボン、編み上げブーツ。女ver

「いやぁ、つい……」

「つい、で殺されたらたまったもんじゃないよ!?」

「ごめんごめん。でさ、ちょっと声量下げてくれる?」

「あ? ああ、大丈夫。消音の魔法壁はっといたから」

「……準備がよろしいことで」

「もうともさ!」

「……」

「……」

「……で?」

「で?」

「なんで、この邸に盗賊さんがいるの?」

「んー? 盗賊さんだから?」

「は?」

「え?」

「……」

「……」

「あー、もぉー、いーよ……」

「それがいい」

「てか、顔色悪いよ? 大丈夫?」

盗賊、顔が青を通り越して真っ白。

「寒いの! こんなに寒いなんて聞いてない‼︎」がたがた

「ここ、北だよ? しかも標高高め。そんな肩だしてちゃ風邪ひくよ?」

「そ、そのうち慣れるし……!!」

「あーもー、なんか着る? なんかあったかなぁ……」ごそごそ

「騎Cが優しい!?」

「盗賊さん、それはないんじゃない?」ぽいっ

「あ、ありがと……」

「どーいたしまして」

盗賊にはぶかぶかのカーディガン。

「くっ! これが埋められない男女の差!!」

「なんの話?」

「お前でか過ぎ!! 身長よこせやこらぁ!!」

「えー? 何その理不尽な怒り……小さい盗賊さんが悪いんじゃなぁい?」

「だとぉ!? ……ま、ピンクよりはましだもん!!」

「え? ピンク? 誰それ?」

「スナイパー」

「ああ、小さいから視界入んなくて、あんまり覚えてないんだよねぇ~」

ほのぼの……

ドンドンドン‼︎(荒々しいノック)

盗賊、消音解除。

「誰?」

「俺だ」

「あー……」

「誰?」

「俺の義兄殿」

「おにーさん……」

「誰かいるのか?」

「いや……盗賊さん、ちょっと隠れててよ」

「ん」

姿消し

扉開け

真面目そうな、次期侯爵、騎Cの義兄。

「これはこれは、俺のことを毛嫌いしてる義兄殿ではありませんか。珍しく俺に近づいて、どういう風の吹き回しですか?」

「お前っ‼︎ どうしてお前はヘラヘラしているんだ‼︎」

「ヘラヘラもなにも、これが素ですから」

「母上があんな状態なのに、お前は……‼︎」

「あんな状態?」

「母上が心配なさってるぞ! お前は、母上にこんなときでもまだ心配をかけ続けるのか!?」

「ちょっと待ってください‼︎ あんな状態ってなんです?」

「!? なにをとぼけて……‼︎」

「とぼけてなんかないよ、オニーサン」

盗賊乱入。

「誰だ‼︎」

「通りすがりの盗賊さん」

「ちょっ!? なんで出てきたの!?」

「騎士ともあろう者が、何処の馬の骨とも知らない怪しい女を勝手にうちにあげるとは、どういうことだ‼︎」

「他人ばかり責めるのが、次期侯爵殿の方針?」

「なんだと!?」

「ちょ、盗賊さん‼︎」

「騎C、言い返さないと、いけないこともあるんだからね?」

「え?」

「こいつは何も知らないよ、オニーサン。だって夫人がそういう風にお願いしてたもの」

「そんな馬鹿な!!」

「バカじゃないよ。ほんとのこと。心配かけたくなかったとか、考え込まれても困るとか、いろいろ理由は考えられるけど、あなたはそんな夫人の気持ちを踏みにじったんだ!」

「な、なんだと? 言わせておけば……」

「事実でしょう? 次期侯爵殿? そんな浅慮で愚かな行動、侯爵に相応しいのかな?」

「お前には関係ないだろう! 人間の、それもここの土地の者でもないお前に、とやかく言われる覚えはない!!」

「私は、魔王様に頼まれたんだよ。次期侯爵の人柄を見て来いって」

「魔王様から!? ……そうか。お前が盗賊か」

「ええ、知っていただけているとは光栄ですわ。以後お見知りおきを」

 膝を折って一礼。

「……」

「領地の方々に聞いてみると、いい人だと聞いたのですが……兄弟仲は最悪のようですね?」

「盗賊さん!!」

「……はぁ、これはプライベートな問題だ。首を突っ込まないでほしい」

 魔王と聞いて多少は態度を軟化させた義兄。

「ええ。そうですね。僕には関係もないし。でもね、夫人のことしゃべった代償はでかいですよ?」

「……あなたは何を知っている?」

「それは俺も聞きたい。盗賊さんは何知ってんの?」

「……それは、お前も夫人の気持ちを踏みにじるんだよ? わかってて言ってる?」

「それでも、聞きたいなぁ。盗賊さんから聞いたなんて言わないからさぁ」

「……騎C。真面目?」

「……お願い」

「はぁ、分かった。いいよ。僕教えなかったら、どうせ夫人とこ行くだろ? それは悲しいことだからね。カーディガンのお礼とでもしとこうかな」

「ありがと」

「夫人、あともって半年ってとこ?」

「え?」

「嘘だ! そこまで短いはずは……」

「そうだね、これは放っておいたときの数字。優秀な医者とヒーラーが付くのなら、あと一年は伸びるね」

「それでも、一年半……だと……?」

「あら? オニーサンはなんて聞いてたのかな?」

「あまり長くはないと……」

「詳しいことは聞いてなさそうだね」

「病気なの? 盗賊さんは、なんでそんなこと……」

「依頼されたから♪ 詳しいことは聞いちゃダメ。守秘義務ね。ちなみに、病気、原因わかってないらしいよ。一部では呪いかもってう・わ・さ」

「誰が……。……何の依頼? 教えて」

「ダメだって」

「じゃあ、それは、殺しの依頼?」

「なぁ!?」

「……さぁ、ね」

 盗賊、暗い笑み。

「……こっちきて」

「え、ちょっと!?」

「あ、待て!!」

 騎C、自室盗賊を連れて戻る。鍵を閉めて、義兄を締め出す。

 どんどんどん!

「開けろ!!」

 もちろん無視。

 奥の部屋に引っ張り込んで、ベッドに投げ出す。

「きゃんっ!?」

「イヌかよぉ……」

 片手で、両手を一まとめにされて、頭の上で固定される。もう片手は首にかかる。

「ねぇ、何してるか、教えてよ? さもないと……」

 少し力を込める。

 暴れようとしたら、足で足を押さえられた。

「重い」

「言って」

「言わない」

「殺すよ?」

「殺せない」

「なめてんの?」

「なめてるのはそっち」

「ハぁ? 何言ってんの?」

「私が何回死んだと思ってるの? 何回死のうとしたと思ってるの? 何回生きてると思ってんの?」

「意味わかんない!」

「僕だってわかんないわよ!! でも私はまだ生きてんの! あんたに殺せるもんなら殺してみなさいよ! 人生飽き飽きしてんのよ!!」

 盗賊の迫力に、多少たじろぐ騎C。

「何回も繰り返す人生、生きても死んでも結果は同じ。そんな悪夢、終わらせられるのなら終わらせてみなさいよ!!」

「と、盗賊さん……」

「好きで呪われて、生きて死んで、生かされて殺されてるわけじゃないの! あんたに殺されたって、俺は生きて、また殺されるんだ!!」

「ご、ごめん! だから落ち着いて?」

「これが落ち着けるかボケェ!! てか、そんなこと言うのなら、首から手を放しなさいよー!!」

「ご、ごめん!!」

 とりあえず、体勢はそのままで、首からは手を放す。

「馬乗りはそのままかよ!?」

「馬乗りって程じゃないと思うけど!?」

「ばかー!!」

「なんでいきなり暴言!?」

「……あんただけがいろいろ抱えてんじゃないのよ。このとんま……」

「うん、ごめん……」

 沈黙。

「まったく、なんなのぉ? いきなり叫びだすから驚くじゃぁん?」

「誰が悪いんだ誰が? あぁ?」

「キャッ! 盗賊さんガラわるぅい」

「それは魔王に言いやがれ、ボケなす」

「えぇー? へーかに言っても変わんないと思うなぁー」

「それ、なにげ暴言……」

「えぇー?」

「……」

「……」

「……」

「……なんか」

「何?」

「なんか、このまま襲っちゃっていい?」

「いいわけねぇだろ、頭腐ってんの?」

「なんて暴言……」

「お前が言うか?」

「でもさ、なんか、もう食べるだけって感じじゃなぁい?」

「んなわけあるか。目ぇ沸いちゃってんの?」

「……もう暴言は無視でいいかぁ」

「人の話を聞け?」

「はぁ……」

「顔を近づけてんじゃねえ」がつんっ

「ぶっ!! ず、頭突きという手段があったとは……」

「ムリヤリヨクナイダメゼッタイ」

「流れるように言わないでよ、って、目になんか入ったあ!!」

「アホなの?」

「目がぁ目がぁ!!」

「それ違うし!! てか、俺どっちかってぇと、襲われるより、襲う方なんだけど!?」

「でも、ほら、今女バージョンじゃん? だったら襲われる方であってるでしょぉ?」

「ある意味あってねぇから! だからもういい加減放せー!!」

「分かったよ……」

 手を放して、体を横にずらす。

「ああ、おもか……っ!?」

 ぎゅぅ

「放せー!」

「何もしないよ。こうやるくらいいいでしょぉ?」抱きしめ

「ぐえっ」

「そこまで締めてないだろぉ? 盗賊さんってば、大げさなんだからぁ」

「やめろ―!!」

「何もしないって。……盗賊さんって、いい匂いするねぇ」

 目を閉じて、顔をうずめる。

「嗅ぐな変態!!」

「それに抱き心地いいし……柔らかくって、ふわふわで、フカフカで……フカフカ?」

 目を開けると黒猫。

「……」

「……」

「……え、なんで?」

「これなら問題ない」

「えぇー」

「何か問題でも?」

 肉球でぺしぺし。

「むっ。問題というか、もったいないというか……」

「じゃあ、大丈夫だね」

「……はいはい」

「……今日はもう寝なさいな。それで、ちゃんと夫人のことを考えてなさい」

「なんで眠れないような問題残すかなぁ」

「現実逃避、ダメゼッタイ」

「ちぇっ」


『私、何処で入っていいかわかりませんでしたよ……。取り残されたナレーさんです。寂しいです』


『翌日』

「このまま帰るの?」

「盗賊さん、瞬間移動で送ってくれるよね?」

「えぇー?」

「送ってよぉ。一晩宿貸したじゃん」

「お前が引きずり込んだんだろぉ!?」

 朝遅く。騎C、邸の玄関あたりで、肩の上に載った黒猫盗賊と会話中。

「ほら、夫人きたよ」

「……」

「もう、いってしまうのね……」

「あ……」

「いえ、何でもないわ。お仕事しっかりね。風邪とかひかないようにね。頑張るのよ」

 にっこりと笑う夫人、その顔には影が……。

「……」

「言わないの? 言わないと後悔するよ? 失くしてから気がついても遅いんだよ? でも、君はもう気が付いてるでしょう?」

「分かってるよ盗賊さん」

 黒猫盗賊を、床におろす。

義母上(ははうえ)

「あら? どうしたの? そんな改まって……」

「病気だと、聞きました」

「まぁ、誰から聞いたの?」

「……」

「やぁね。ただの噂よ。ほらっ! 私はこんなに元気よ」

「……」

「……元気なのよ。最期まで」

「……俺、帰ります」

「……そう、げんきで……」

「それで、休暇貰ってきます」

「え……?」

「それで、できるだけ、義母上の傍にいさせてください。今まで何もできなかったから……」

「そんな、そんなこと……」

「すこしでも、恩返し、させてくださいませんか……?」

「……っ」

 泣きだす夫人。

「泣くほど、俺のことは嫌いですか?」

「そんなっ! そんなわけ、ないじゃない!! 私っ、こそ……嫌われてると思って……!!」

「……」

「でも、大丈夫よ……。あなたに迷惑は……」

「迷惑じゃないです! 俺、今まで、どこまで近づいていいかわからなかっただけで、ほんとは……」

「?」

「ホントは、本当の、家族になれたらいいなって……」

「……それだけで、私はもう幸せだわ……」

「義母上……」

「私は、いいの。もう十分だわ」

「そんなこと言いなさんな、夫人?」

 黒猫から、黒のシンプルワンピース盗賊。

「あなたは……?」

「と、盗賊さん? ナニ?」

「ご機嫌麗しゅう? 夫人」

「え?」

「盗賊さん! いま大事な話……」

「だからだよ。……失礼」

 夫人の左手を取って口づける。

「あなたの病をいただきに参りました。“盗賊”ですよ」

 口づけたところに一瞬魔法陣が浮かび上がり、盗賊の元へ戻る。

「え……」

「これで、病は盗まれました。ということで、私の役目は終了」

 そういって出ていこうとする盗賊。

「え、ちょ、ちょっと待ってよ!! どういう意味!?」

「ん? どういう意味って何が? そのまんまの意味だけど?」

「意味わかんないから! もっとわかりやすく!!」

「えー? 最初になんでここにいるのって言ったじゃん? 盗賊らしく盗みに入ったんだよ?」

「ハぁ!?」

「んー、もう依頼完了したし、言ってもいいでしょ。依頼主はセレスト侯爵」

「ち、義父上(ちちうえ)!?」

「そーそー。なんか病で落ち込んでる夫人を元気づけてやってくれ。ってのが依頼」

「まあ、あの人が?」

「ええ。僕の最初の思考は、だったら病無くせばいいじゃん♪」

「そんな簡単に……」

「でも、できたしね?」

「できてんの? 本当に?」「本当なんですの?」

「ええ。それについては保証します。……でもですね。侯爵が言ってた意味って、そういうのじゃないな、と思いまして」

「と、いいますと?」

「たぶん、侯爵は、騎Cと夫人が仲良くなってほしかったんだと思いました。まあ、勝手な推測ですが」

「「……」」

「というわけですので。私の役目は終了。意味わかったかい?」

「え、ああ、うん……」

「じゃあ、そういうことで、じゃあね」

「あ、ちょっと待ってよ! 行くなら俺も……」

「ああ! 言い忘れてた! お前は今日と明日、休み追加してもらったから。魔王命令でね♪」

「え!?」

「てことで、しっかり親孝行なさいな! 僕もう帰るから!!」ぽんっ

「あ、待って!!」

 ……

「ったく! せっかちなんだから!」

「うふふっ楽しそうなお友達ね」

「友達……」

「あら、違うの?」

「いえ、盗賊さんはどう思っているのか……」

「あなたは友達だと思っているのね?」

「……誘導尋問ですか? 引っかかりました……」

「うふふふっ騎士様に一泡吹かせてやったわ」

「義母上……」

「あらぁ、こわーい」

「からかわないでください!!」


『三日後に、検診に来た医者により、本当に病がなくなったことが判明。……ホントに何でもありだなこの人は……』


『あとがきじみた雑談』

ナ『今回シリアスでしたねー……』

魔「いやぁ、ホント、シリアルだったなぁ」

勇「そうだなぁ」

ナ『し、シリアスですよ。シリアルではなく』

魔「そうだなぁ、シリアル美味しいよなぁ」

勇「そうだなぁ」

ナ『え、えっと……』

盗「とりあえず、勇者、モブみたいな相槌うたないの」

勇「しょうがないじゃないか! 出番ないんだから!!」

魔「そうだぞお前ら!! ふざけやがって!!」

勇「てか、お前らフラグ立ってんじゃないか!?」

魔「確かにな! 一緒に寝ちゃったりしてるしな!?」

盗「ちょっと! 君たちじゃないんだからフラグとかないよ!」

魔「でもなー、二人で一夜明かしてんだろぉ?」

盗「人聞きの悪いこと言うなよぉ!! その前に殺されかかってんだぞ!?」

勇「だがなー、お前らラブラブじゃないか―」

盗「誰がラブラブか!! お前らのこといじったの根に持つな!!」

ナ『……いやぁ、今回ほんとシリアスでしたねー』

盗「無理やり話を元に戻そうとするなよ!!」

ナ『え、あのままフラグ話つづけたほうがよかったです?』

盗「シリアル美味しいよねー!!」やけ

魔「そうだよな! シリアル美味しいよな!」

ナ『だ、だからシリアス……』

盗「盗賊さんあんまシリアルたべたことないけどね!」

魔「でもやっぱりシリアスよりシリアルだろぉ!」

勇「そうだなぁ!」

騎「えぇー、シリアスより、シリアルより、シガアルの方が俺は好きかなぁ~」

「「「『!?』」」」

盗「これ連想ゲームだったっけ!?」

勇「違うだろ!?」

魔「てか、シガアルってなんだし!?」

騎「え? シガアルのシって言うのはdeathの死だよぉ? つまり死があるってことでアソボ―?」

ナ『騎C、めっちゃ英語の発音いいですね……』

盗「えー? デス? なにそれー?」

勇「え? 知らないのか盗賊?」

魔「俺だって知ってんぞ?」

盗「空気読んでよ!! これ絶対わかったら遊びに強制参加なパターンジャン!!」

魔「どうせ参加するのお前だけだし」

勇「むしろ、そっちの方がいいだろう? イチャコラできて?」

盗「勇子ちゃんの裏切り者ー!! なんか根に持ちすぎて壊れてないかい!?」

勇「誰だ勇子って!?」

盗「僕もう知らないバカキノコ!!」

勇「キノコ!?」

魔「どっちが正解だ!?」

勇「どっちも違う!!」

騎「あ、盗賊さん、逃げようなんてしないでよぉ? じゃないとキノコ狩るからねぇ?」

勇「キノコ違う!! ってか、狩るなぁ!!」

盗「卑怯だぞ!!」

勇「スルーか、オイ!!」

騎「でも、一回遊ぶって約束したし。逃げようとする盗賊さんが悪いんだろぉ?」

盗「う、うぅー!!」

ナ『犬ですか? 盗賊さん?』

盗「う、うざけんなぁぁああああああああああああ!!」

ナ『盗賊さんの叫びは、空に響き渡っていくのでした……。てな感じで、今回すごく長かったですねぇ。お疲れ様でしたぁー』

魔「っかれしたー」

勇「お疲れ」

騎「お疲れぇ~」

盗「僕が一番疲れたわこんにゃろぉぉぉぉぉおおおおおおおお!!」フェードアウト

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